第五章【Destiny of the Evil】 -悪の運命-
①【不覚】
「セイラ姉さん大丈夫ですか?」
「ええ、悪いわね。えっと、ディーンだっけ?」
「そうっすよ、ギャラクシー・プリンス改めプリティ・プリンス。通称プリプリのディーンっす!」
「……ネーミングセンスが壊滅的にアレなのは置いといて、その略称は色々まずいからやめた方がいいわね」
「何気に全否定っすか!」
それにしても不覚だった。あの男、まさか子供にまで手をかけようとするとはね。もしくは私が子供を庇うと見越しての事なのか……いずれにしても自分自身のミス以外の何ものでもない。
一番の不覚は、背中の魔法陣を斬られてしまった事だ。
今は、と言えば元ギャラプリの四人に助け出され、小さな村の宿屋に身を潜めている。彼らは見た目に反して紳士的で、部屋も別々にとっているし、夜間は見張りもしてくれているんだけど……なんか不思議な縁だね。
「姉さん、背中に薬塗りますよ」
「ありがとう。ちょっとまって。攻撃命令止めるから」
「怖いっすねー。でもそのおかげで奴らは姉さんに直接手出し出来なかったんですよね。俺もそういうの欲しいっすよ」
「オススメはしないけど。死ぬほど痛いよ? 召喚している間ずっと」
背中に彫ってある魔法陣。これは通常の物にアレンジを加えてあって、六方星の線が交わる点それぞれに“更に小さい魔法陣”をデザインしておいた。その小さい魔法陣で十二体の小精霊を同時に使役することで、ナイフを飛ばしてもらったり、同時に身を守ってもらったりもしている。
しかし魔法陣というものは、図式が少しでもズレると本来の力を発揮出来なくなってしまう。沖田総司に背中から斬りつけられ、タトゥーとして彫りこんだ魔法陣が崩れてしまった事で、召喚魔法陣としての機能は失ってしまっていた。
それでも、いくつかの小さい魔法陣は無事だったようだ。召喚されてた精霊達が自動的に私を守ってくれていた為、餓えた男どもの慰み者にならなくて済んでいたのは確かだ。実際、手錠を付けられ動けなくなった私に手を出そうとした男がいたけど、下半身を露出した瞬間に小精霊達が一斉に”ソレ”を切り落としていた。
「まあ、自分の周りに”常に絶対に裏切らない味方”がいるのだから、悪くはないけどね。死ぬほど痛いけど」
「やめときます……。痛いのはかんべんっす!」
この手錠は魔力を封じるというよりも”魔法詠唱を阻害する効果がある”といった類なのかもしれない。精霊達が自由に動いていられるのだから。ただ、身体に力が入らず、動くこともほぼ出来ない。そもそもこんな厄介な代物、誰が作ったのかしらね……
「ところで姉さん、キョウジさんに伝言したアレはなんなんすか?」
「さあ、なんだろう?」
「え~……」
「護送されている時に、奴らが話しているのが聞こえて来てね。何のことやらわからなかったから、とりあえずキョウちゃんに伝言しとけば”何か”してくれるんじゃないかな~と」
「え~……」
呆れた顔で、なおかつ笑うディーン。複雑な心境がそのまま顔に現れた様だ。
「まあ、真面目な話、今回の陰謀に関わっている場所らしいから、キョウちゃんに直接見てもらったほうがいいと思ってね。運が良ければ
「なるほど……。と、薬塗り終わりました!」
「ありがとう。ところでさ……」
これは聞いておかなきゃならない。今は少しだけど申し訳なさもあるから……
「なんでしょ?」
「あと二人、その……私が丸坊主にしたニ人はどうしたの?」
「ああ、あいつ等なら……」
「あいつ等なら?」
「出家しましたよ!」
……キョウちゃんじゃないけど、勘弁してくれって感じね。
第五章MAP
https://kakuyomu.jp/users/BulletCats/news/16817139555335404537
次回! 第五章【Destiny of the Evil】 -悪の運命- ②悪いクセ
お兄さま、またですの?(パトリシア談)
是非ご覧ください!
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