⑮【探し人】


「一体どこに行ってしまわれたのでしょうか?」


 エクエスさんの疑問は、ここにいる全員の疑問でもあった。あれから約ひと月経っているが、今だにセイラの行方がわかっていない。


 もうひと月なのか、まだひと月なのか。護送隊は日本領に向かったと予測したのは外れではなかった。それに関しては外交官の人が『日本に向かっている』と証言していた。だからすぐに発見出来ると思っていたんだけど……。


 ――しかし日本には到着していなかった。文字通り忽然と消えたのだ。


 その為パティもレオンも空振りに終わり、レオンだけがまた病室に戻ってきている。連絡と、今後の方針の確認の為だ。パティは日本の外交官の家族とともに、アメリカ領の庇護下に入っている。アメリカは、エクエスさんに交渉を丸投げしておいた。

 日英同盟の企み及び、魔道具アーティファクトの不正保持・不正利用の暴露。この話だけで、アメリカは日英監視の大義名分と、ローカルズ王家の支持を得られる。結果として、今後の政局に大きな影響を及ぼす事になる。証言は、庇護している”元”日本政府外交官が行う。言ってしまえば”日本の裏切者”ではあるが、家族を守る為に選択した行動は、誰にも批判は出来ない。

 情報提供の見返りとして、こちらは試作の起動装置を積んだバイクを二台提供してもらう。アメリカの転生者にもエンジニアは多数いるだろう。そういった技術者の手にかかれば、魔力を動力に変えるシステムの解明は造作もない。


 パティは不満だらけみたいだが、今は我慢してもらおう。狙われ続けている事には変わりがないのだから。”参考程度”ではあるが、パティの証言も重要視されている為、日本人家族同様最大限の警戒態勢で守られている。……もちろん、タクマの事は絶対秘密だ。それについて一切触れない様、外交官にも脅しをかけてある。


 更にアメリカには『元イギリス諜報部員で、内部情報を持っている』という触れ込みでセイラの捜索・保護を依頼してある。


 ……にもかかわらず、まったく情報がない。 



 俺はと言えば、心臓の再生はほぼ終わっており、身体にしっかりと血液が循環しているという実感がある。セイラは半年くらいは動けないだろうと言っていたが、再生能力は”存外”高かった。まだ全力を出せる程までは回復していないが、軽い運動程度なら負担は全くない。


 エクエスさんも、普通に動けるまでに回復している。脚を貫かれたとはいえ、大腿骨に影響なかったのが幸いしたようだ。


 ――とりあえず全員動ける様になった今、やることはただ一つ。


「今からセイラを探しに行く。ついでにカドミも探してやる」

「なんや、カドミの扱い酷くなっとるな」

「色々考えていたらカドミにムカついてきてな……。もうついででいいよ、あいつは」


「という訳で、エクエス兄さん。バイクの運転を三分で覚えるっス!」

「うむ、難しい事はあらへん。バランス取るだけや!」



「……なんか、大変な事をサラッと言う人が増えていますが?」




次回! 第四章【true this Way】 -人の在り方- On your Side:味方 ⑯……君誰?

キョウジ兄さん、落ち着くっス!(レオン談) 是非ご覧ください!






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