⑩【ーレオンー】

 今朝の事っス。キョウジさんに呼ばれて病室に行ったのでスが……。


「レオン、ちょっと聞きたい事があるんだけど?」

「なんスか? キョウジさん」


 パトリシアさんには、いきなり反省しろって叱られたし……

 おまけに最悪って言われたし……

 その後すぐに泥棒騒ぎ……。

 パトリシアさんが犯罪者なんて、とてもじゃないけど耐えられないっス。もう終わりっすよぉ~。



「お前さ……」

「はい」

「パトリシアが好きか?」



「ななななな……なんでそんなことを……」


 何をいきなりこの人はあぁぁぁ。ヤバイっスよ。熱いっすよ。顔が真っ赤なのが自分でもわかるっス。


「好きかと聞いている! ハッキリ答えなければパティはやらんぞ!」


 え? なんスか、やるとか。お父さんでスか、キョウジさんは。というかエクエス兄さん、なんで笑って見ているのでスかー?


「え……えと……。…………っス」

「聞こえねえ! 男ならハッキリしろ!」

「……好きっス!!」

「だがパティは泥棒だ。それでもか?」

「もちろんス!」

「犯罪者に情をもったらレオン、お前も犯罪者になるかもしれないんだぞ?」

「そ、それでも……信じまス!」

「その言葉に、嘘偽りはないか!?」

「ありません!!!!」


 必至だったっス。何というか、何の脈絡もなく何故こんな事を聞かれているかまったくわからないまま、とにかく感情だけ高ぶっていたっス。


「レオン、人はそれを……”愛”と呼ぶんだ!」


 ――その一言を聞いた時、目の前が一気に開けた気がしましたっス。福音の鐘が響いて、まばゆい光の中を真っ白な鳥が飛び立っていった様な気がしました! モヤモヤが一気に晴れ、もう自分を繋ぎとめる鎖は粉々に砕け切れたっス!


「今なら空も飛べそうっス!」

「うん、それは勘違いだからやめとけ」


「レオン、パトリシアさんは今ピンチに陥っている可能性が高い」

「エクエス兄さん、それはどういう……?」


 ピンチ? ピンチっすか。パトリシアさんに一体何が……


「いいか、レオン。パティは今、お前が来るのを待っている。助けを求めているんだ! 世界を敵に回しても守るといった事を、今その手で証明してみせろ!」

「ういっス! 言ってないけど了解っス!!」

「多分パティは、アメリカ街だ。いいか、神経を尖らせろ! パティの魔力をとらえるんだ、出来るな?」

「出来まス! いえ、やりまス!」

「よし! ならば行け、レオン。パトリシアが助けを求めてオマエを待ってる!」

「行きます!!」


 その後はあまりよく覚えていません。病院の窓から飛び出したような気もしますが。街道を一気に駆け抜け、半日ほどでアメリカ街に入りました。……さすがに疲れたっス。


 パトリシアさんを探すといっても、この街は転生者だらけで魔力が混ざりまくってて良く解りません。だけど、キョウジさんに言われました。


『神経を尖らせろ! パティの魔力をとらえるんだ!』


 集中っス、集中!!


 ……


 ……


 ……


 わからないっス……。エクエス兄さん……俺、愛が足りないんスか?


 やみくもに走り回ったら腹が減ったっス。考えてみれば、病院出てから何も食べてない事に気が付きました。そんなとき、飲食店の看板が目の前に。


【ワイゼリア この先240M】


 とりあえず何か食べておかないとでスね。それにしても、ワイゼリアとか、パトリシアさんと来たかったっス。

 デデデ、デートってヤツっスね……『パティ』とか呼んじゃったりなんかしちゃったりして……


 と、その時、約二四〇メートル先のワイゼリアから物凄い勢いで飛び出してきた子供がいました。薄茶色のシャツに短めのジーンズ。その辺りの子供が盗み食いでもしたのでしょうか? 嫌な世の中っス。


 ……って、えっ? あれはパトリシアさん???

 

「パト…………」

 ……リシアさん。声をかけようとしましたが、一瞬にして視界から消えました。

そもそも声が届く距離じゃないっス。遠目ですが間違いないっス!  


 断言出来まス! 

 それが愛っス!


 しかし、その直後何か目つきの悪い人が追いかけていきました。無銭飲食で逃げたパトリシアさんを店員さんが追いかけているのでしょうか?


 ……って、そんなわけないっスよ!!


 全力で追いかけるっス。あの男、確かキョウジさんのチームにいたような気がしまスが……何か危険なニオイがしまス。

 ワイゼリアの正面の角を曲がると、遥か前方に二人の人影が見えました。そこにはあの危険な男が、パトリシアさんの首を切ろうとしているじゃないでスか!


「ゆるさん……」


 その時、いつもと違う力が身体を駆け巡った感覚がありました。地面を蹴る足にもいつも以上に力が入り、スピードが上がりまス。


 おっさん!! 何してくれんだ!? 


 俺の……


 俺のパティに――!


 その時俺は、怒り狂う愛の弾丸でした! ……っス!

 


「喰らえっス! この〇×△□ДшΘ野郎!!」



 全力で走り、全身全霊の力と魔力を込めた蹴りを打ち込んだっス。顎を狙ったのでスが、インパクトの瞬間にズラされてしまいました。やはりこの男はかなり危険っスね。


「パトリシアさん、お師匠さん、大丈夫っスか?」

「レ……レオン? どうしてここにいるのです……?」

「どうして? っスか。それは……」



「愛の為っス!!!!!!!!!!!!!!」




 くう……決まった! これでパトリシアさんのハートは鷲掴みっスよ!




次回! 第四章【true this Way】 -人の在り方- On your Side:味方 ⑪石やけど……

それもまた人生や(タクマ談) 是非ご覧ください!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る