第四章【true this Way】 -人の在り方-  On your Side:味方 

①【ータクマー】

 アメリカ領の街・通称ニューヨーク。


 しかし、名称から受ける“大都会・摩天楼”というイメージとは裏腹に、いざ入ってみると地方の田舎町といった感じである。とは言え近代化の様相はあり、木造家屋の合間を縫って鉄筋コンクリートの建物がちらほらと建ち始めている。

 その田舎町を、ベージュ色の簡素なシャツに、カプリ丈のジーンズという、どこにでもいる恰好の小柄な少女が走っている。ハンチング帽を深くかぶり、家の裏手を出来るだけ人目に付かないように、それでいて素早く移動していた。

 長い事走り続けているのだろう。息も絶え絶えで足元がおぼつかない様子だ。今、一軒の古い家の死角に座り込み外壁にもたれかかって、手元の石に話しかけている。





「師匠……大丈夫ですか?」


「大丈夫も何も、ワイまったく動いてへんからなぁ」

「大丈夫も何も、ワイまったく動いてへんからなぁ」


「申し訳ないですわ、こんな事になってしまって」


「かめへんかめへん! 嬢ちゃんのやりたい様にやればええ!」

「かめへんかめへん! 嬢ちゃんのやりたい様にやればええ!」



 ……なんやその、いきなり嬢ちゃんにさらわれたのだが、まあ、考えがあっての事なのやろな。それならワイは色々言わんと成り行きを見守るだけやで。


「とりあえず、や。一度しっかり体力回復させん事にはよう走れんで!」

「とりあえず、や。一度しっかり体力回復させん事にはよう走れんで!」


「ええ、流石に息が続きませんわ。それにしても、近くにアメリカ街があったのは幸運でした」


「そやな、ここなら魔力をたどって追跡される事もないやろ!」

「そやな、ここなら魔力をたどって追跡される事もないやろ!」


「そうは言っても、追手はわたくしの顔をわかっているのでしょうから、出来るだけ人前は避けないとですわ」


「そういう時は変装や! ヒゲか何か貼るといいで~」

「そういう時は変装や! ヒゲか何か貼るといいで~」


「あ、そうでしたわ。貼るといえば確かここに……ありました!」


「お、なんや? 何かおもろいもんでもあるんか?」

「お、なんや? 何かおもろいもんでもあるんか?」


「ええ、今この場において最高に役に立つアイテムですわ! 師匠、ちょっと目をつむってくださいな」

「目……何か前にもこんな事あったような気がするんやが」



 ……ぶちゅ~~~~~~~~~~



 あ~なんか冷たくねっとりした感触やで~。ひんやり~って!

「やはりか、やはりこうなるんか!! 誰や嬢ちゃんに瞬間接着剤渡したのは。 うわ、マジか~、何してくれまんのや。しばくでしかし!」


「師匠、言葉がお下品ですわよ。それに、わたくしのやりたいようにやれと仰ったのは師匠です。武士に二言はございませんわ」


「……なあ、お嬢ちゃん。微妙にズレてへんか? 視点が定まらんのやが。それにワイ、武士やないで~」

「小さい事を気にするなんて師匠らしくありません! それに大丈夫。男前ですわ!」

「そうか? まいったな~。これでまた女性ファンが増えてしまうやないか! なんやその、ワイを投げたりせえへん娘がええなあ~」

「お兄さまが『タクマもセイラも意外とチョロいぞ』と仰ってましたが、確かにその通りですわね……」


 なんやと。キョウジそんな事言うてたんか。今度アイツの前で爆発したるわ!


「師匠、もう少しお待ちを」

「かまわんで~。って、嬢ちゃん一体なにを?」

「このままではすぐに見つかってしまいます。だから……」



「――髪を切って変装します」



 決断が速いのは嬢ちゃんの良い所や。この判断力のおかげで、何度も命拾いさせてもろうたしな。キョウジの奴が。


「その為に男の子っぽい服を選んで拝借したのですから」

「拝借ゆうてもお代おいてきたんやろ?」

「ええ、銀貨一枚をポストに」


 銀貨一枚は、ひと家族が三日は食える金額。それでこの粗末な服一式なら文句ないやろうし、わざわざ警察に届ける事もないやろな。それにしても……あれだけのお嬢様ロングが今は完全にボクっ子やないか。


「こんなん……ワイ、キョウジに怒られるわ。嬢ちゃん、弁護頼むな」

「任せてください。ショートヘアには、いつかしてみたいと思っていたのですわ!」

「おう、似合うとるで! イイね無限に押したいくらいや!」


 オーバーサイズ気味のジーンズが女の子らしい線を上手く隠しとるな。これなら男の子にしか見えへんやろ。


「ありがとうございますですわ。イイねが何かわかりませんが……。では師匠、そろそろ移動しますね」

「このままニューヨークを真っすぐに駆け抜けて遠くへ! と、見せかけて大衆に紛れてやり過ごすのがベストやな」

「きっと今頃、病院では大騒ぎなのでしょうね」

「まあ、それも良し、や。キョウジもそろそろ独り立ちせぇへんとあかんやろ」


 キョウジはワイに引け目感じてるからな。石に転生させた原因は自分だ~とか思っているんやろな。そんなもん、なる様になっただけの話や。 




 ……ほんまアホやで、アイツわ。




第4章MAP(※第三章と変わらず)

https://kakuyomu.jp/users/BulletCats/news/16817139555335380588




次回! 第四章【true this Way】 -人の在り方- On your Side:味方 ②セイラ

あ~イライラするわぁ(セイラ談) 是非ご覧ください!



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