⑤【転生の真実-1】


 ベッドの上で目が覚めた。面白みのないベージュ一色の天井。半開きの目だけを動かして周りをぼんやりと認識する。


 ここは、病院らしい。俺、生きているのか。あの状況でよくも……


「涼子は?」


 咄嗟に出た言葉がそれだった。



「キョウジ兄さん!? 目が覚めた!」

 この子は……レオン、だっけ? なんでここに……


「パトリシアさん、お兄さんが”生き帰り”ましたよ!」


 壁にもたれ掛かって寝ていたパティが目を開ける。慌てて椅子から転げ落ちそうになっていた。


「お兄さま! 大丈夫ですの?」

「……大丈夫、じゃねぇ」


 なんか状況が良く解らないが、真っ先に確認しなければならない事が。


「涼子は、無事なのか?」

「涼子? それは誰ですの?」

「誰ってなんだよ、涼子は涼子だ」

「お兄さま、混乱しているのですね。仕方ないですわ、あんなことがあったのですから」

「パトリシアさん、僕はセイラさんに伝えてきまス!」

 言うが早いか、病室から出ていくレオン。


「――っつ」

 心臓の辺りが痛む。手をあててみると、包帯が巻いてある。しかしその下、心臓は凹んでいる様な感触だった。肋骨はあるがふにゃふにゃしている感じだ。これはGに刺された傷ではない。

 

 思い出してきた……これはデーモンにやられた時の傷か。 


「パティ、俺は、死んでいたのか?」

「……はい」

「そうか。俺をここに連れてくるように指示したのはセイラだな?」

「そうですが、それがどうかしましたの?」

「いや、何でもない」


 死んだ人間を弔いもせずに、わざわざベッドに乗せて治療がしてある……これは”生き返る”と知っていなければ取れない行動だ。死ぬ直前に見たあの冷めた目は、こうなる事がわかっていたからなのだろう。

 とすれば今の状況に一応の考察は立つのだが、何一つ確証がない以上セイラに問い正すしかない。



「お?? キョウジ~~~~~! 良かったで~~~~!!」

「お?? キョウジ~~~~~! 良かったで~~~~!!」


 軽く手を上げて答えつつ声の方を見ると、割れたタクマを持ったレオンと、入口の扉に寄りかかっているセイラがいた。腕を組んでいてこちらを見ようともしないが、そんな事はどうでもいい。かまわない。


「ワイに手がないのが残念や! 顔にイタズラ書き出来るチャンスやったのになあ~。肉とか中とか書きたかったわ」

「ワイに手がないのが残念や! 顔にイタズラ書き出来るチャンスやったのになあ~。肉とか中とか書きたかったわ」


 ……タクマすまん、今は流しとく。


「セイラ、知っている事全部話せ。お前に、お前達にとって不都合だろうと、こうなった以上隠し事は無しだ」


 視線がセイラに集まる。数秒の沈黙の後、うつむいたまま溜息をひとつつくと、静かに話し始めた。


「パティ、レオン君、ごめんね。ちょっと、席外してくれるかな?」

「いいえ、お姉さま。私も聞かせていただきたいですわ」


 これは当然の反応だろう。解らない事が多すぎるもんな。でも……


「パティすまん、タクマも外してくれ」

「でもお兄さま!」

「タクマを頼むよ。君の師匠だろ?」

「……わかりましたわ」

 聡明な娘だ。俺の目をじっと見て察してくれたのだろう。この先は“タクマに聞かせたくない”という事を。俺がずっと話せずにいるUnique Skillについても触れるだろうから。


「なんや、ワイか? ワイの話題なんか?」

「なんや、ワイか? ワイの話題なんか?」


「師匠、行きますわよ」

 『めちゃくちゃ不本意です!』という顔で病室を後にするパティとレオン。すまない。多分この先の話は理不尽過ぎて、とても君達には聞かせられないものになると思う。



「さて……」


 入口を入ってすぐ脇の壁にもたれ、セイラが問う。


「何から聞きたい? 悪いけど今は話せない事もあるから」




 今は、か。まあいい……とりあえず一番最初に聞かなければならない事がある。





第4章MAP(※第三章と変わらず)

https://kakuyomu.jp/users/BulletCats/news/16817139555335380588



次回! 第四章【true this Way】 -人の在り方- Down Side:不都合 ⑥転生の真実-2

わけわかんねぇよ!(キョウジ談) 是非ご覧ください!


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