㉔【作戦開始】
「かなりシビアですわね、お兄さま」
わかっている……我ながらかなり無茶な作戦だ。
「一人の失敗も許されないとか、緊張しますね」
と、言いつつも余裕を見せるエクエス。
「いいんじゃない? キョウちゃんらしいよ、これ」
セイラは相変わらず、褒めているのかどうかわからんよな~。
「ええ? いつもこんな無茶やっているのでスか!?」
レオンがそう言うのも無理はない。……なんかごめんなさい。
「緊張しますぜ!」
その割には嬉しそうな表情なんだよな、シルベスタって。バトルマニアだったりするのかな?
――まずは作戦の準備段階だ。
「君達はそのままパティを護ってもらいたい。頼めるか?」
パトリシアオタクの二人にも指示を出す。ポイントは『頼めるか?』の一言だ。
これは『おまえらならやれるだろ?』という意味のオタク心をくすぐる殺し文句。
「御意!」
「わかり申したんだな!」
パティはサベッジ・ペガサスに魔力供給していて動けない。ここで魔力も何もない人にガードを頼むのは心苦しいが仕方がない。どちらにしろ、俺達が失敗したら皆死ぬのだから。
そして……
「ギャラクシープリンス! 君達だけのオンステージを用意してある!!」
「よっしゃ!」
「任せてくれ!」
「行くぞ、みんな!」
やばい、乗せるためとは言え、なんて恥ずかしい事を言っているんだ俺は。穴掘って入りたいわ。これ、絶対後でセイラにからかわれるパターンだよな。なんかもう自分で黒歴史作っている気がする。
「お兄さま、集中!!」
……はい、ごめんなさい。しっかりと、頭切り替えないとだ。
「セイラ、頼む」
タクマを腰のホルダーから外しセイラに投げ渡す。
「OK、預かるよ。……みんなの命を」
「ん? なんや? なにするんや? なんか何も聞こえへんかったが?」
そりゃそうだ。作戦伝達中はタクマの耳を押さえていたからな。
「その前にさ、キョウちゃん」
「ん?」
「君、『周りの人を巻き込んだ』とか考えているでしょ」
ドキッ……
「いい加減にしなよ。君がいようといまいと、これは仕組まれていた事なのだから。全員でやらなきゃならないんだよ!」
「……ありがとう」
相変わらずセイラには見透かされてるな。……なんか引っかかる言葉があったが、あとで落ち着いたら聞いてみよう。
エクエスがシルベスタの剣に魔法を付与している。二重、三重、四重、と重ねられる限界まで重ねる。ここからは全てタイミング次第だ。
「シルヴィ、自分のタイミングでいいから、しっかり狙って!」
「わかりましたぜ……」
深呼吸をし、目いっぱい息を吸い込んだところで止め、剣を構え魔法陣に突っ込む。丁度俺達と、
デーモンは当然ともいえる反応をして来る。シルベスタに向けて弧を描くように鉤爪が繰り出されて来た!
しかしその鉤爪にはレオンが飛び蹴りの一撃を見舞う。レオンは彼の軌道をトレースし、同時に走り込んでいた。動体視力と反射神経に裏付けされた身体能力の高さは先ほどから見ている。だからこその役目だった。
魔法付与の効果もあり、剣は壁の狙った位置に突き刺さる。流石の体躯から繰り出されるパワー。先程よりもさらに深く剣が刺さり、ひびが広がる。
直後、剣の柄に
ドームの壁に穴が開いた。『カランッ……』と音を立て、ドームの内側に落ちる剣。しかし、その穴もすぐに修復されようとしている。開いた穴の部分がすぐさま赤黒く色づき始めた。
――だが、すでにピッチャーは振りかぶっている!
左肩の痛みは相当なものだろう。それでもセイラは”あの時”と同じように、体重を乗せた右足の踵を軸に左足を振り上げ、一気に体重を前方に移して腕を振り切る。
「you…can…Fly!!!」
全ての力が乗ったタクマというボールがその腕から解き放たれた!
セイラは風魔法を使い、ドームに開いた穴まで真空状態のトンネルを作っていた。空気抵抗のない球は一切減速せず、弾丸の如く一直線に飛んでいく……
「いやな、流石に三回目ともなれば皆『投げられ慣れてんちゃうかな~?』とか思うやろ? いや、きっと思うハズや。だがな……こんなん慣れる訳ないやろ~~~。『ゆーきゃんふらい!』じゃないっちゅ~ねん。飛んでへんわ! 投げられとるんじゃボケ~~~~」
赤黒いドームの中、魔法具を持っているデーモンに向かってタクマがボヤき、叫びながら飛ぶ。デーモンの右腕に命中し、魔道具と共にその場に落ちるタクマ。
――響く轟音
――真っ赤な爆炎
今までにない、地響きをともなう大爆発がドームの中で起こった!
タクマが
そして、大爆発から皆を守る方法。それに関してもヒントはあった。セイラと初めて会った街。外からの盗賊の侵入を防ぐための厳重な警備。それは同時に“中からも出られない”という結果を招いていた。
つまり、外から破壊し難いドームなら、中で爆発が起こっても外に影響は出にくい、と推測できた。
とはいえ、爆発に対してどれだけの強度があるのか? そもそも爆発の規模がどの程度になるのか? それらまったく未知の為、セイラがタクマを投げる瞬間に俺とパティはサベッジ・ペガサスに最大限の魔力を送り、腕から溶岩をドームの上からまき散らしていた。
そしてそこにギャラクシープリンス全員で水系・風系魔法による冷気を“派手に”発生させ、ドームを外側から溶岩石で覆い、強化しておいた。
マダラ状に固まった溶岩石の間からドームの中が垣間見える。そこは、爆炎と黒煙が渦巻いていた。
次回! 第三章【Existence Vessel】-魂の器- ㉕Unique Skill―固有能力―
急転直下! え? そんな…… なんでこうなる? 是非ご覧ください!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます