⑥【凶女と強女-その1】
「パティ、やるわよ!」
「仕方ありませんわね。総司、交代ですわ」
「まてパティ、危ないって」
「キョウジ殿、大丈夫でござる。 お嬢はしっかりと強いでござるよ」
「オッキー、キョウちゃんをなだめといて!」
「御意!」
オッキーって、沖田さんの事か……返事してるし。いや、そんな事よりもパティ大丈夫なんか? 相手は武器持ってるのに素手って……お父ちゃんめちゃくちゃ心配だぞ。セイラのやつも何を考えてんだよ、まったく。
「パティ、赤はあげる」
「わかっておりますわ。あの赤いのは私も許しませんの」
「なになに? 昨日のお嬢ちゃんが俺達と闘ってくれるの? ラッキー」
赤はすでに勝ったつもりなのだろう。完全に甘く見ている。
「俺が勝ったらデートしてくれるのかな?」
何言ってんだコイツは。するわけな……
「あら、よろしいですわ」
ってパティ、何をいうんだ~~~~~~~!
「勝てるのなら。ですけど」
♢
セイラは正面にとらえている橙・空を見据える。それにしても……あいつら怖いもの知らずだな。
「なんだよ、こっちは年増かよ~」
「俺もピンクの娘がいい~」
「短い……人生だったわねぇ……」
その、口から洩れた一言とともに、セイラの手からナイフが乱れ飛ぶ! 放たれたナイフはそれぞれが好き勝手に飛び、橙・空それぞれの足を切り裂いた。まずは動きを封じてからジワジワと追い詰めるつもりだろう。
……というか、俺はいつまでこうしていれば?
ナイフは橙・空二人の周りで弧を描き、その輪が段々と縮まっていく。
「ほらほら、しっかりくっ付かないと刺さるぞ~」
「てめ、この年増。こんなことしてタダで済むと……」
お決まりのセリフが終わるよりも速く、ナイフは空の衣服を全て切り裂いていた。身に着けているのは靴のみ。
Σ(゚∀゚ノ)ノキャーΣ(゚∀゚ノ)ノキャーΣ(゚∀゚ノ)ノキャー
Σ(゚∀゚ノ)ノキャーΣ(゚∀゚ノ)ノキャーΣ(゚∀゚ノ)ノキャー
「あら、いいわね。ファンが喜んでいるじゃない。それじゃ、もう一つオレンジの皮むきしましょうか!」
流石にここまでやると少しだけ同情するわ……ここからじゃ“見えない”けど、セイラの生き生きとした表情が“よく見える”。それにしても身体には傷一つつけずに衣服だけを切り裂くとか、流石、精霊を宿したナイフだけの事はあるな。
「しっかし、なんやな~。あいつら、よくこんな程度でトーナメントなんて出てきたな」
「記念参加でござりますかな。まったくもって、
小昼、か。日本の東北~中部辺りで使われる表現だと記憶しているが……ござるの人はその辺りの出身なのかもしれないな。なんて考えていたら、ひときわ大きな黄色い声援が!
Σ(゚∀゚ノ)ノキャーΣ(゚∀゚ノ)ノキャーΣ(゚∀゚ノ)ノキャー
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橙・空が素っ裸で抱き合っている。物凄い速さで回るセイラのナイフの輪が、ギリギリの大きさになっている為だ。
「おい、当たってる。はなれろ」
「お前こそはなれろよ。大してでかくもないくせに!」
裸で抱き合いながら下ネタ喧嘩するアイドル。
「なあ、キョウジ。こういうのを『尊い』言うんか?」
……知るか。
腕組みしながら指の間に挟んだナイフを
「アンタ達、ちょっと聞きたいんだけどさ」
橙・空は戦々恐々としてセイラを見る。戦意はすでに喪失しているようだ。だからと言って許す性格ではない事を、あいつらもたった今理解しただろう。
「年増っていったい誰の事なのかな?」
「あ…いや、それは……あ、あの……」
とりあえずその場を取り繕おうと必死の橙・空。目の前を、体の周りを、縦横無尽に飛びまわるナイフ。
――刺されそうで刺されない。
――斬られそうで斬られない。
次の一瞬、ナイフの動きが静止した。
一呼吸おいて、一斉にナイフが襲い掛かる! 耳を、肩を、股間を、ナイフがかすめていく。そして、あと数センチで目に刺さるという所でナイフが止まる。
……余りの恐怖に失禁し、気絶してしまう二人。
「情けないなあ。でも、これで許されると思わないことね」
言うが早いか、セイラのナイフは彼ら二人の髪の毛を刈り取っていた。……裸で抱き合って下ネタ喧嘩しながら失禁気絶する丸坊主アイドル。
「こういうのを『尊い』というのでござるか?」
……知らん。 知らんが違うと思う。
次回! 第三章【Existence Vessel】-魂の器- ⑦凶女と強女-その2
俺の周りには何でこういうのが集まるの?(キョウジ談) 是非ご覧ください!
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