④【Divine Veil】
パティに追い打ちをかけられてから三日後、テンションだだ下がりままトーナメント当日を迎えた。
「やる気でねぇ……」
ダラダラと競技場まで歩く。エントリーシートはセイラが残りを記入して提出している。まあ、名前とか考えるのは面倒だから丸投げ出来ただけ良しとしよう。それにしても四人で戦うのは結構きついよな……。
ちなみにエントリーシートは試合ごとに再提出が可能だ。怪我とかでメンバーの入れ替えがあったり等、何か変更があったら、試合当日朝までに提出すれば受理される。
セイラの仕事手伝いという事でトーナメントに出るのだが、その目的はちょっと胡散臭い事件の調査だった。
『イギリスの冒険者が
「でもこれって、イギリス政府の尻ぬぐいって事だよな」
「それとトーナメント出場に何の関係があるんや?」
「転生者同士は、相手が魔力を持っているかどうかでローカルズか転生者か判断できるだろ?」
「うむ」
「もし犯人が転生者だったら。と仮定した場合、選手としてトーナメントに出ていた方が、その場にいる事が自然に見える訳だ」
犯人としても、当然追手がかかっている事はわかっているだろう。その為魔力を持った人間がいたらそれだけで警戒してしまう。ちょっとしたしぐさですら犯人には不自然に映るかもしれない。出場選手は基本的に全員魔力持ちなので、疑いの目も向きにくいだろうという考察から出た答えだ。
「まあ、確かに濃い連中やからな。観客席にいたら目立ってまうな」
……意味は違うがそれはそれで大当たりだ。もちろん
「疑いの目を向けられるリスクを軽減しつつ調査を進める為に、出来るだけ勝ち進む必要があるって事だ」
♢
「キョウ、遅い!!」
会場に着くなりセイラからクレームが飛んでくる。
「まだ集合時間になってねぇぞ」
「女性を待たせている時点で遅刻!!」
「ちょ、理不尽だろ~」
勘弁してくれ……というか、何か不機嫌だな。俺の名前呼び捨てだったし。
「お兄様、師匠、今日はよろしくお願いしますわ!」
「ああ、よろ……師匠?」
「おう! 頼むで、弟子一号」
……って、タクマお前いったい何をした!?
「よろしくお願い申す。お師匠殿!」
「期待しとるで、二号!」
「沖田さんまで……何このカオスな状況は」
……しかし、今最も危惧すべきはタクマの師弟関係ではない。
(パティ、セイラどうしたんだ?)
(実は昨日の事ですの――)
パティが語る事の起こり。なんともアホらしいとしか言いようがない内容だった。昨日天気が良かったのでセイラとパティでお茶をしていたら、四人組の男がナンパをしてきた。セイラが軽くあしらったら『あんたみたいな年増に用はない』『ひっこんでろ。そちらのお嬢さんに話しているから邪魔するな』と言われて……
その後は大体想像がつくのだが、どうやら逃げられたらしい。
(それにしてもよくセイラから逃げられたな)
(そうなんですの。まったく追いかけようともしなくて)
何か企んでいるな~。とりあえずこの件には触れないでおこう。……というか、こんな少女をナンパしようとか許せん奴らだ。
ちなみに「少女に見えて実は百歳なんです~」とかの
観客席入口から会場内を覗いてみると、すでに満席で熱気が凄い。これだけの人が、昨日までこの街のどこにいたのか? って位だ。しかし、よくよく考えてみればテレビもラジオもない世界だ、男女問わずこういった娯楽に飛びつく人が多いのも頷ける。
フィールドはサッカー場位の広さで、観客席との間には多分何らかの結界が張られている……はず。そうでなかったら危なくて観ていられないだろう。
俺達が会場に入ると丁度トーナメント表が張り出された。
チーム:Divine Veil
ディバイン・ベール。神秘の衣とでも訳しておこう。これが俺たちのチーム名なのか。セイラ、意外とネーミングセンスいいじゃないか。いきなり、一回戦の第一試合に名前があった。
対戦相手はチーム:ギャラクシープリンス
チームメンバーが出てきた直後から黄色い声援が飛びまくる、アイドル系のイケメン六人組だった。髪色もそれぞれ違い、赤・橙・青・空・紫・金とやたらと派手だ。声援をもらう事に馴れているのだろう。余裕をかまして観客席に手を振っている。
「なんか、チャラ男ばかりだな」
「黄色と緑がおらんのは、カレー好きとか立ち位置が微妙とか思われるのが嫌なんやろな」
タクマもそう思うか~。勝負とかどうでもよかったが、あれに負けるのは何か気分悪い。いや、モテているからとかじゃなくてな……
「キョウちゃん……」
「はい……」
なんかドス黒いオーラが見えます……
「あれ、つぶすよ」
次回! 第三章【Existence Vessel】-魂の器- ⑤荒ぶる……
マジか!? マジなのか!? 是非ご覧ください!
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