【180万PV感謝】機械仕掛けの乙女戦線 〜乙女ロボゲーのやたら強いモブパイロットなんだが、人の心がないラスボス呼ばわりされることになった〜
第124話 花束を、或いはコンラッド・アルジャーノン・マウスとマーガレット・ワイズマン
第124話 花束を、或いはコンラッド・アルジャーノン・マウスとマーガレット・ワイズマン
青き星が見える。
暗黒の宇宙に――浮かぶように。燃えるように。そこに、青白き宝石のような星が見える。
それをアメジストのような紫色の瞳で眺めつつ、血に濡れた銀髪の少女は吐息を漏らした。
少なくとも、機体は完全に限界だった。
文字通りの二十四時間を戦い続けたことによって、その連続稼働によって内部の出力系及び駆動系に異常を来たした。集中力も途切れ、高速戦闘中に撃破した敵機の破片に接触して損壊した。そんな中でマスドライバーによる加速を行った。
更には――白銀の機体の全身を、銀色の流体が包んでいる。
ナスカの鳥の地上絵を立体的にしたような敵アーク・フォートレス――――【
邂逅は一瞬であり、決着は一撃だった。
一撃を以って敵の中枢を貫き、そして、その返り血たる流体ガンジリウムを浴びせられて白銀の機体は失速した。
大気圏再突入速度。
そこまで落ちてしまった機体を立て直すことは、もうできない。どこを触っても推進力が生まれず――もう力場の鎧を纏うことさえ不可能だろう。つまりは大気圏の空力熱を遠ざけることはできないという訳だ。
「……全く。一応は、生還のつもりもあったのですけど。これではままなりませんわね。困りましたわ」
マーガレット・ワイズマンは、別に何も死にに行った訳ではない。自分なら勝算があると思ったから戦いに向かったのだ。
それが、予想外の悪足掻きを喰らってしまった。
思わず肩を竦める。……どちらにしてもこの傷では助からなかったかもしれない、なんて思いながら。
きっとあのときに、動けた人間は少ない。
ロビンは弾切れとともに機体を友軍の盾にして装甲の大半が半壊。ヘイゼルも集中の限度を迎えて被弾し、右腕銃部以外を損壊。アシュレイは機体の熱限界にて背面武装が崩壊し、リーゼは推進剤が尽きた上に頭部センサーが破損した。
この四人は論外。
メイジーは弾切れを起こしていたし、そうなれば動けたのは自分ともう一人であったが――
「誰も彼も、命をどう使うかばかりで。まったく……」
やれやれ、と吐息を漏らした。
結局のところ、多分、マーガレット以外にその役目はできなかったと思う。
だって誰しもがその片道切符で、己の命と引き換えにしようとしていたから。それが最大の利益だと思って行動しようとしていたから。
多分、あの場でその後も自分が生き残るつもりで居たのはマーガレットだけだろう。
だからこそだ――と、銀髪の少女は紫の瞳を細める。
……なんていうのも、半分は嘘だ。
正直、続く戦いの中で諦めそうになった。ここで死ぬかもしれないと何回も思ったし、本当のところは絶対に勝てるとか突破できるとか生きて帰れるなんて見込みはなかった。
だけれども――。
それでも立つ者が居たのだ。立つ者たちが居たのだ。戦おうとしていたのだ。あの日のように。
それがどんな地獄だろうとも歩き続けていけるように、ただ剣だけを携えて立つ騎士のように――
「……もう。世話が焼けるのですから、ヘンゼル」
口には出さなかったけれども、本当は、尊敬している男の名を一言。
あの炎の日、マーガレットは光を見た。
全てが焼け落ちようとしている都市で、ただ一人悪竜と戦う男を見た。
武装を失い、鎧をなくし、全てを奪われてなおも人々の明日のために戦おうとした男を見た。
ああ――――何と高貴なる義務感か。
それは、明確に善なのだ。
それは、明らかに善なのだ。
全てが滅びに向かおうとしていると思えた大地の中で、それでも明日のため林檎の木を植えようとしたその在り方は善なのだ。貴なる光であったのだ。
多分、きっと。
貴族という肩書の中でも忘れられようとしていた尊きその意志を、在り方を、その理念を掲げた姿だった。
貴族だから、マーガレットにも、それが絵空事だと良く知っている。そんなものは御伽話でしかないのだと。
だけど、それを現実にしようと――どこまでも進む殉教者がいたならば?
この先の世界のためにも――死なせてはならないと思ったのだ。だから私財を投じたし、自分自身も投じた。
彼は、賭けるに値する男だったのだ。
きっと
故に。
ハンス・グリム・グッドフェローを、勝利のための神話にしようとした――――。
「……それがまさかあんな人だとは。色々とプロデュースを考えていたのに台無しですわ。せっかく衣装や小道具まで用意したし、PVまで手配していたというのに……」
きっとさぞや各地で奮戦を続け、あのときのように人々を勇気づける演説と共に反抗の旗を掲げていたのかと思えば……なんてことか、死んだ目で生きてた。
プランが粉々になった。台無しになった。
当然だが、人は英雄ではなかった。当たり前だし判ってはいたが。
細かく付き合ってみると、また困った。
鈍感で、ぼーっとしてて、ぽわぽわしていて、人は良くてなんだかどこか放っておけない感じで、多分そういう性格の人間だった。
自分の全部を閉じて戦いに向けてるタイプだったから、最初がそういう打算で近付いたのがちょっと申し訳なくなるレベルだった。ちょっとは打算があったんだけど、なんかもうそういうことを言ってられない感じだったから本当に困ってしまった。
善良な人を利用するちょっと悪役のつもりだったんだが、なんかもうそれどころではない。
そうしているうちにこんなである。
コックピットに貼ったある青年の写真を眺め、マーガレットは深く溜め息を漏らした。呼吸に血が混じった。
「……コンラッド。貴方が見たら、慣れないことをやるからそれ見たことか――と笑いますか? それとも、また貴方は意味深に笑うだけでしょうか?」
自分の婚約者を――二十歳近くも年上の彼を思いながら、口を尖らせる。
マーガレットが生まれてちょっとしたぐらいから軍人をしている婚約者。コンラッド・アルジャーノン・マウス。優秀なようで、全ての昇進を最速で行っている軍人。
あまり顔を合わせる機会はなかったものの、多分、関係は悪くはなかった。勿論、そんな歳上に嫁がされることに思うところがなかった訳でもないが――……実際に会ってみたら、そんな印象もなくなった。
ああ、だから本当にそれは不本意な婚約なんかじゃなくて――……。
マーガレット・ワイズマンは、恋をすることもできたのだ。
確かに。
この胸の暖かさに、偽りはないのだ。
「わたくしが、まさかここまでしてしまうとは……これでも少しは打算的な方と思ってましたのに。……ふふ、それとも彼が、貴方に似ていたからでしょうか。コンラッド」
そう、笑う。
ハンス・グリム・グッドフェローが全てを軍人の実利に向けた男というなら、コンラッド・アルジャーノン・マウスという男とはその全てを貴族としての体面に向けた男だろう。
優雅な振る舞い。
穏やかな笑顔。
有能で、抜け目がなく、しかし争うとは思わせない。
彼もまた――その全てを以って、己を一つのものにしようとしているとさえ思えてしまう青年。
だからだろうな、と思う。
会えない婚約者にどことなく似たことをしている青年にまで、あんなにも世話を焼いてしまったのは。
「……まったく。清らかなる乙女の初恋を奪ったのだから、せめてその程度の責任はとって欲しいものですわ。これを浮気と言うなら結構。婚約するだけしたくせに、貴方があまり会おうとしないせいですのよ?」
そう、ここにはいない男へ――あの優雅な婚約者へと口を尖らせる。
家と家のしきたりと言うには彼は熱心で。
その割に、壊れ物を扱うかのようにマーガレットに触れて来ようとはしない。年齢が故に当たり前とも言えたが、それでも彼には何かの遠慮があった。
それでも遠ざけようとするとか、疎んでいるというような悪意の感じはなくて――――だから。
「……なんて、生きていれば文句の一つも言えたでしょうに。まったく……ままなりませんわ」
振動が激しい。
機体が、熱に包まれる。
大半が壊れてしまったモニターが赤く塗り潰される。
もう、あまり、時間はない。
最後に――全ての人に向けて。彼も含めた全ての人に向けてのメッセージを録画する。
自分はここで終わるけど。
世界は続いて欲しい。当たり前に続いて欲しい。
自分が死んでも何一つ揺らがない世界だからこそ、それでも置き去りに流れていってしまう薄情な世界だからこそ――――ああ、そんな何よりも揺るぎない大いなるものだからこそ、その一部であったこと――かつてそこで生きていたことが嬉しくなるのだ。
だから。
当たり前に、どうか、続きますように。
自分を忘れて、なんでもないことのように、この世界が続きますように。
そんな世界の中で、その大きなものの一部で、どうか他ならない愛しい貴方が生きていけますように――――。
いよいよ、録画の機能も損なわれた。
コックピットが、その電子系統が、大気圏突入の熱でやられてしまっている。
それよりも、出血による終わりが先だろうか。
そんなふうに霞み始めた目の中で、マーガレットは十字を切った。
「どうか、貴方にも健やかなる人生を。他でもなく、誰でもない貴方がたの人生を。……そしてコンラッド。わたくしは、貴方が生きる世界を守ります。貴方の今日を守ります。……ええ、どうか。健やかに――救われてくださいましね」
自分は彼の居場所になってはあげられなかったけど。
あまり彼は顔を合わせようとしなかったけど。駄目だったけど。
その魂が救われることを願っている。祈っている。
「……ヘンゼル。貴方がここに居たら、どこに落ちたかったのですか? この世界に、貴方の落ちたい先は見付かりましたか?」
ふと、笑う。
大切な戦友へ――――あの、一振りの剣となろうとしている戦友へ。
彼の行いを、理解している。
きっと彼も、マーガレットと同じ祈りを担って――そしてとうにマーガレットよりも先に、答えそのものに行き着いた人だから。
「どうか。……ああ、せめて、世界が平和でありますように」
そう――――流星が、墜ちた。
◇ ◆ ◇
そして。
その報告書を眺めた美丈夫は、デスクで一人紙束を前に頬を歪めた。
「ふ、ふ、ふ……く、く、く……ふふふ、ふはははははははは!」
それは彼の婚約者であり――そして、腹違いの妹の死を知らせるものだった。
貴族崩れ。
妾腹。
子を為さない本妻に代わって後継に取り上げようとされていた彼は、しかし本妻の息子が産まれたが故に再びその地位を奪われた。
だがその本妻の息子は事故で死に、やがてそこに娘が産まれたと聞いた。
その――――復讐。
全てを奪った者たちへの復讐。
己を磨き、貴族たらんとした。どう見ても貴族に見えるように。なんの疑いもないほどに。
ただ練り上げた。全ての人から求められるように。誰からもそう見られるように。その見たいがままの、願い通りの姿になるように。
そうして別の貴族の養子となり、かつての家と婚約を交わすことさえできた。実の妹との婚約――――ああ、なんと皮肉的か。ああ、なんとおぞましいか。血によってコンラッドを捨てた者は、なべて血によって裏切られるというのだ。
……だがその復讐も、こんな戦争のせいでなくなった。
コンラッド・アルジャーノン・マウスの人生を賭けた計画は、ただ、崩された。
何から何まで。
全てのことが。
それが、自分ではない大きなものによって決められていく――無関係に。歯車のように。回って、回って、ただ回って。
戦争。
貴族。
血縁。
ああ、歯車が――――歯車が回るままに、己の全ては奪われる。
復讐の道具も。その機会も。
全てが、大いなるものによって奪われていく。
そうだ。マーガレット・ワイズマンは、コンラッド・アルジャーノン・マウスにとって復讐の道具でしかない。この怒りも、そんな唯一の道具を奪われたからだ。
ただそれだけだ。それだけなのだ。
それだけでなくては、ならないのだ。
故に言えることは、一つでしかない。
「いいとも……私から奪うと言うならば……それを奪い返す……それだけだ」
いつだって――――いつだってそうしてきた。
そうしようとしてきた。
だから、これはただ、そんなコンラッドの在り方というものでしかない。そんな、他とは変わらない動きでしかない。そうでなければならない。
「それだけなのだよ……!」
深く深く握り締めた紙面の端に血が滲む。
男は――コンラッド・アルジャーノン・マウスもまた、ただの答えそのものとなる。
鮮血の飛び散った紙面は、どこか、花束を思わせるものであった。
◇ ◆ ◇
あの大戦の中の、ある日のことだ。
出撃前後に――だったか。
まともな部隊行動ではなく、それこそ中世や何かの傭兵じみて人が集められたりしている戦況の中でのことだ。
雑な拵えのテーブルにて、隣でプリンを食べている――正確にいうと封を切ったはいいが全く手を付けていない少女が、食い意地が張っているのにあまりにも珍しく天変地異の前触れかと思える様子で、何となく口を開いた。
「貴方に相談しても仕方ないことなのかもしれませんけど……正直貴方が力になれるとは思えないんですけど、相談してもいいですか?」
「なんだろうか。……殺し方か?」
「物騒ですわよ!? 貴方の冗談は笑えませんわ!?」
「……」
銀色の中に一房だけ混じった金髪が揺れる。
黙っていると、彼女は続けた。
「その……ヘイゼルさんとかはちょっと参考にならなさそうなので貴方に聞くだけであって、別に本当の本当に他意はありませんからね? 勘違いしないでくださいまし?」
「ああ。……というと、恋愛相談辺りだろうか。男性の視点を聞きたい――か?」
「……………………意外にも慣れてる反応で驚きですわ。えっ、何か悪いものでも食べましたの?」
「いや……単にそんな機会がよくあっただけだ」
「い、意外…………意外すぎる…………でも確かに口は固そうだから確かに……いえ……でも……」
その銀髪を俯けて、顎に手を当てながらぶつぶつと呟く彼女を前に胸を張る。
「案ずることはない。……俺は専門家だ。とても詳しい。よく聞かれるし……勘違いの心配もない」
「本当ですの?」
「ああ、弁えている。……幼馴染の少女からもよく言われた。別に勘違いするな――と。こんな相談事においては、それが心配なのだろう? その点において俺は抜かりはない。絶対に、それを俺への好意などとは間違えない。繰り返し言われたために肝に命じている。限りなく安全だ」
「な、なるほど……!」
「ふ。安心を得られたようで何よりだ。……その甲斐もあってか、俺は女性からの相談をかなり受け付けることが多い。実績がある。きっとそんな安心感からだろうな」
「た、頼もしいですわ……! 急に頼もしく見えてきましたわ……意外にも恋バナマスターなのですね……!」
「ああ、俺は恋バナマスターだ。そう呼んでくれても構わない」
深く頷けば、
「……ヘイゼルお兄様、あれなに?」
「触れてやるな。恋愛偏差値が低いんだ……クソっ、ツッコミ入れてえ……特にグリムのやつにツッコミ入れてえ」
「ヘイゼルお兄様、大変そう……」
後ろでなんか言われたが無視する。
ヘイゼルはオーバーである。
そして彼は恋愛経験豊富だ。そんな上級者の視点で殴りこまないで欲しい。ゲームのコマンドがどんなものかを話しているようなところに、突然無限コンボや起き攻めや択の話をしてくるようなものである。それは連コインよりマナー違反だ。物事にはレベルがあるのだ。
そして目の前の初級者レベルのような彼女は、やがて意を決したように口を開いた。
「その……男性は、好意を持つ対象には必ず触れたいものなのでしょうか? つまり逆にいうと、まったく接触を避けようとしたり……距離を詰めて来たりしない場合や僅かにでも触れるのを躊躇われていたりする場合は、それでもそこに何となく好意を感じていることは完全な気のせいや思い違いということですの?」
「……難しい質問だな」
ふむ、と少し考える。
思った以上にレベルが高い話だった。これはアーケードで隠しキャラクターをどのコマンドで出すかぐらいの難易度だろう。多分。
「俺は……大切な人のことは、抱きしめたいと思っているが」
「まあ……お相手が!?」
「いや……」
婚約者であればメイジーがいるのだが、ここで婚約者と明かすと本来の攻略対象と彼女との接近への邪魔になってしまうだろう。それはやめるべきだ。
だが、急にマーガレットからの信頼の目線が消えた。
まさか生兵法や丘泳法と思われたのだろうか。困った。せっかく相談されたのに――久々の恋バナだというのに。
「一般論だ。ただ、男性の殆どはそうだ。恋をしたらそうだ。何もなくても相手と会話をしたいと思うし、相手が楽しそうに話している顔を見たいと思う。当然だが、抱き締めたいというのもそうだ。好意を伝えたい……共有したいと思う。伝わってほしいと願う。一般的に、好意を抱けば抱くほど同じものを相手と分かち合いたいと願うものだ」
「な、なるほど……! やはり経験が……!」
「…………………………まあ。大声で言えないが」
「まあ……!」
結局好意が全く共有できずにフラれたとか言ったら台無しになりそうなので黙った。かなしい。かなしい事件だった。なんでだろう。
咳払いを一つ。
このまま彼女からの信頼の瞳を保ったまま――
「ただ――……そうだな。基本的には、俺は好意を素直に表現するが――――」
「………………やっぱり急に信用なくなりましたわ」
「何故だ。……話を戻すが、あまり触れたくないという気持ちも判らなくはない気がする」
「どうしてですの?」
首を傾げた彼女へと、小さく指先を丸めながら答えた。
「……大切だからだ。自分の手で、壊してしまうことが恐ろしい。それぐらいに、大切なんだ。心の底から」
果たして、そういう感覚は共感されるのか。
僅かに目を見開いた彼女は、ほんの少し呆れたように肩を竦め、
「これはアドバイスですわ、ヘンゼル。壊れ物だなんだとそんなことをグダグダうじうじと言われるより――……女の子は、抱きしめてそれぐらいに大切だと言われる方が嬉しいんですのよ?」
「ああ、そうしよう。いや……細かく話すとそれだけではないんだが……」
「?」
「子供の君には聞かせられないことだ。……そういうのもある」
そも別に自分は、自分が大量殺人者だから誰かを抱き締められないとか――――破壊者だから相手を傷付けてしまうなどのナイーブな観念は特には持たない。
誰かの許しを得る必要も無ければ、誰に遠慮することでもない。物理的に汚れていないなら、それでいいだろう。血の汚れなど手を洗ってしまえばそれで終わりだ。第一、機体越しに殺したところで返り血などは着かない。
気にしているのはもっと別のことで……。
ただ、まあ……それを年頃の少女に告げるほどにハラスメント上等の男になる気はなかった。
「もうっ、人様を子供扱いして――いいですこと? わたくしも
「この国ではないだろう」
「ぐぅ……ヘンゼルの癖に生意気ですわ」
「恋愛相談に答えたのにそう言われてもな。……俺の方が上級者なのは間違いないのでは?」
「ぐぅ……そ、それとこれとは話が別ですわ!」
口を尖らせながら、彼女は指を突きつけてきた。
こうしていると本当に、年相応に見える。
自分よりも素早く敵機を撃墜する
「あ」
「何か?」
「そう、今みたいな笑い方をするんですのよ。その方――本当に話してて、こう、ふとしたときに」
そんな彼女の言葉に、頷く。
ならば答えは決まっていよう。
自分は特にマーガレットへと異性としての好意を抱いてはいないが、それでもだ。
もしも同じように笑っていたと言うなら、それは、
「ああ。ならば答えは単純だろう。その男性は、君に対して少なくとも――――」
いつであったか。
戦いの日の、何気ない、そんな話だ。
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