第7話ノットエピローグ

 それは、始まり。

 それは、終わり。

 滅びる運命を変えることは、今の私には出来ない。

 だから、私はセカイに小さなまじないをかけた。

 いつかきっと、私の次の少女がこのセカイを変えてくれる。

 そう信じて、私は目を閉じた。

 次に目を開くのはいつになるだろうか。

 目覚める時はあの子が傍にいてくれると嬉しいな。

 さようなら。


 …


 彼女は栞を本に挟んだ。

 今日は随分と長い時間、本に夢中になっていた。

 空は赤く染まり、日が静かに沈んでいく。

 彼女は本の表紙を撫でた。


 この本に出会ってから今日まで何度読み返しただろうか。

 同じ話のはずなのに、読み返す度に引き込まれてしまう。


 裏側のセカイの存在でありながら表の世界に住む彼女にとって、この本に綴られているセカイの物語はとても楽しいものだった。

 彼女は裏側の故郷に想いを馳せた。

 私が存在するはずだった『部屋』は、一体どうなっているのだろうか。

 誰もいない空室になっているのか、それとも新たな『少女』が住人となっているのか。

 出来れば空室であってほしいと彼女は思った。

 いつか裏側に帰る時にはその『部屋』に帰りたい。


時計を見ると、もう夕食の時間だ。

彼女は本を抱えると、屋敷の扉へと向かった。

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キミとセカイのツヅリゴト 十五 @kame-

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