第5話俺なんかよりよっぽどだよ

「よぉ〜すっ、燈真と黒部っ!相変わらずな夫婦めおとだなぁ、お二人さん。こんな別嬪さんに甲斐甲斐しくされてんのは羨ましい限りだぜ、ったくよぅ!」

教室に足を踏み入れた俺と黒部に挨拶をしてきた神室慎治かむろしんじ

相変わらずなからかいを受けた俺と黒部だった。

「からかうなって、慎治。おはよう……」

「おはよう、神室くん。いいかげん、そのからかいは飽きたって。てか、わざわざ古風に言わなくって良くない」

「まあまあ、いいじゃんよ〜!機嫌直せって、お二人さ〜ん。昼に購買でデザートを奢ってやるからぁ〜なぁーってばぁ〜」

クラスメイトの視線にさらされる。

黒部は、校内で注目の的である人物だ。

彼女が俺と仲睦まじくやってくれてるおかげで、イジメの標的ターゲットにされていない。

俺をイジメの標的にすれば、黒部梨生との関係を築けなくなる。

それを恐れて、といった感じだ。


「デザートのひとつやふたつで機嫌が直るチョロい女子やつなんて。神室くんってば……はぁ」

「続き言ってよ、ねぇ〜黒部ぇ。ため息止めてよ、これみよがしにため息はマジ傷付くって!」

席についた彼女が話題を変えることなく継続させる。

彼女と彼の和気藹々とした会話に入ることなく、ただ眺めるだけの俺。

俺なんかより、彼が黒部の相手に相応しい。


ただ、そんなことを脳内で繰り返すだけだ。


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いつものコンビニに行ったら、店員が久しぶりに逢う同級生だった 闇野ゆかい @kouyann

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