第4話彼女がいなければ、俺は生きていない

登校していると、弾んだ声が背後から近付いてきた。

「おぉ〜いぃ、燈真ぁーっ!おっはよーっ!」

「おぅ……はよう、梨生りお。朝からそんなフルスロットルで疲れないのか?」

「燈真が暗すぎんだよぅー。愛梨沙ちゃんとケンカしてまだ仲直りできてないの?」

「喧嘩っつぅーか……泣かせた、愛梨沙を」

「愛梨沙ちゃんが泣いたっ!?ま、まあ……愛梨沙ちゃんも乙女だし、なっ泣くくらい、あるよねー」

「なんで梨生が動揺してんの?それに棒読みになってる……」

「あぁーっと……久々に愛梨沙ちゃんが泣いたって聞いて。小学生の頃まで泣いてたけど、中学に上がった頃から滅多に泣かなくなったって……ケンカに発展することが増えたって聞いてるんだよ」

「まあ、梨生に話してるし……」

「放課後にさ、燈真んに寄って良い?愛梨沙ちゃん、心配だからさ……」

「そうしてもらえると助かる、梨生」

「私と燈真……私と入澤兄妹の仲なんだし、良いんだよ。私は入澤兄妹ふたりの味方だからね、どんなときだって。そういうことだから……肝に銘じときなよっ、燈真っ!」

「ありがとう、梨生。俺ぇ……梨生に助けられてばっかだな。情けないやつでごめん、梨生……」

「燈真……好きであんたらのそばにいるだけだよ。大層なことなんてなんもできちゃいないんだよ、私はさ」

「梨生はそういうけどさ——」

「あぁーッもぉお〜ッ!しみったれた感じにすんなすんなってぇ〜ッ!」

焦ったそうに声を張り上げ、髪を掻きむしる黒部梨生。

彼女のミディアムヘアの茶髪が乱れていく。


俺は、彼女の存在が在ったからこそ……現在いまの俺が存在できてる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る