少年のための異世界
きと
少年のための異世界
どこにでもいる普通の少年、カケルが
いつものように寝て、起きたら異世界のとある町で目を覚ましたのだ。
はじめは、当然ながら
元の世界に戻ろうと
元の世界に戻りたいとは今でも思っている。
だが、カケルにはこの異世界で、かけがえのない仲間と出会えた。
この異世界はファンタジー世界のような魔法が存在する世界。
カケルには、その魔法の才能があった。
そのこともあり、カケルは魔法で
最初は、生活費を稼ぐ、くらいにしか思っていなかった。
でも、厄介ごとを解決した後に依頼主の喜ぶ顔を見ると、素直に嬉しいと思った。
それからというのもの。カケルは、パーティの仲間との仕事が生きがいになっていた。
今日も、仲間と共に町の外れの畑を荒らしまわる魔物の退治のために、森の
「カケル! 援護を頼む!」
「了解! クロード!」
最前線で剣をふるうパーティのリーダー、クロード。
「みんな、強化魔法よ!」
後方でパーティを援護する僧侶、レミリア。
「俺様の槍をとくと味わえ、魔物ども!」
血気盛んな槍使い、ステイル。
そんな仲間たちと共にカケルは、得意の火の魔法で魔物たちを攻撃する。
時間にして10分程度で、立っている魔物はいなくなった。
辺りを見渡しながら、ステイルは話し出す。
「なぁ、カケル。こいつら、下っ端だよな? あのオッサンの話だと、もっとデカいのがいるって話だったよな?」
「そうだね、洞窟の奥にいるのかな?」
「おそらくは、そうだろうな。レミリア、回復魔法を頼めるか?」
「オッケー、クロード」
レミリアが回復魔法をかけ終わると共に、洞窟の奥から重い足音が響いてきた。
「みんな!」
「分かっているさ、カケル」
現れたのは、毛むくじゃらで体長4メートルを優に超える魔物の姿だった。
「オレノナマエハ、オオムラ。オメェラ、ブットバシテヤル」
「こっちのセリフだ! みんな、いこう!」
カケルの言葉に答えるように、仲間たちは攻撃を開始する。
戦いは、カケルたちが優勢だった。
だが、オオムラはなかなか倒れない。
「まだ、倒れないか……」
「チッ、しぶといヤローだな!」
前衛のクロードとステイルに疲れが見える。
それを見てカケルは、拳を握りしめると、声を張り上げる。
「ふたりとも! もう少しだけ頑張って! 特大魔法行くよ!」
その言葉に、ふたりは武器を上げて答える。
レミリアも、そのふたりを魔法で支援する。
少しの間、オオムラとの一進一退の攻防が繰り広げられる。
そして。
「ナ、ナンダアレハ!」
「くらえ、オオムラ! メガフレア!」
カケルがそう言うと、巨大な火球がオオムラを襲う。
オオムラは、叫び声をあげながら倒れ、動かなくなった。
「よっしゃー! ナイスだ、カケル!」
「流石だな。助かったぞ、カケル」
「ふふ、お手柄ね。カケル」
仲間からの
恥ずかしいが、とても嬉しい瞬間だ。
「さて、そろそろ町へ戻るか」
カケルがクロードの提案に答えようと、したその瞬間。
ズキリと頭に
なんだろう、とカケルが眉をひそめたその瞬間。
視界に壊れたパソコンの画面のようなノイズが走り始める。
「な……!? みんな、なにこれ!?」
慌てて、仲間に問いかけるが反応はない。
そして、世界はどんどんとノイズに
最後は、真っ暗になった。
男がいるのは、とある家の一部屋。
目の前には、液晶画面の付いたかなり大きな機械とそれに
その中には、カケルの姿もあった。
そこに、女性が入ってくる。
「先輩、どうなりました?」
「お前の言っていたプログラムを止めたよ。あとは、この機械の電源を落とすだけだ」
了解でーす、とのんきな声で女性は眠りにつくカケルたちへと近づく。
「しっかし、あのカケル君の父親もすごいですね。こんなプログラムを作り上げるなんて」
「『World_For_Kakeru.exe』……。カケルのための世界か……」
「いじめが原因で自殺
「ああ。だが、いじめの
「その首謀者をボスキャラして、同時に
「……さぁな、俺にも分からんよ」
少年のための異世界 きと @kito72
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