第3話 銀河鉄道に捧ぐ夜の日に

夏祭りの夜の昨日、永く仲良くしていた幼なじみの佑季と喧嘩をしてしまった。赤子の頃からずっと一緒だった。この高校に入っても一緒だった。ここまで大喧嘩したのも初めてだった。今日も一緒に夏祭り行く予定だった。そのつもりでいつもの集合場所の丘の上で綺麗に夕陽が見えるベンチでいつもの好きな歌手の歌をイヤホンを片耳につけて聴いていた。

日が沈みかけ、祭りが行われる少し先の神社の提灯に火が灯り始めた。ポツポツと暗いところから火が灯る様子は夜空の星のようだった。

親友もおろか、友達、親ともまともに喧嘩なんてしたことなかったから、どう仲直りすればいいのか頭を抱えていた。

すると。ふと、風が止まり気を図ったように音楽が変わり、自分の知らない穏やかな音楽と共に声が聞こえてきた。

「薄明ラジオのお時間です。本日は慣れない喧嘩をしたあなた方に贈ろうと思います。」

と、歌どころかラジオ?的なものが流れてきてかつ、自分の今の状況を簡単に話し始めた。

「このラジオは悩みを抱えている人の元に流れ、あなたの悩みのためになればいいなと思いながら今日もお話をしていきたいと思います。」

自分の携帯にはラジオなど流れるはずもなくいつもならこの未曾有の状況に対し対応していたと思うが、今の自分は仲直りの事に考えを取られていた。

「さて、昨日慣れない喧嘩をしてしまったあなたは、今どうすればいいのかきっと頭を抱えて、悩んでいるでしょう。

とりあえずまずは、『銀河鉄道の夜』というお話の話をしましょう。銀河鉄道の夜は恐らく皆さんの多くが知っているであろう話ですね。

この話は簡潔にまとめると少年のジョバンニとその友達のカンパネルラの銀河を旅するお話ですね。この2人はこれらの多くの旅を経て、2人は「ほんとうのみんなのさいわい」のために共に歩もうという誓いを立てます。ただ結論から言うとカンパネルラは亡くなりますが、ジョバンニはみんなの本当の幸いのために尽くすこと、生きる意味を悟ったそうです。ちょっと壮大な話になってしまいましたが、どうでしょう?何故か掴めたでしょうか。この話の中でジョバンニにとってカンパネルラはかけがえのないものであり、また、かけがえのないものを与えてくれた人でもあると思います。

少しこの話から引用すると反感を買うかもしれませんが…………

もし、その喧嘩をしたままその人と会えなくなってしまったら、もし、自分がいなくなったら

相手はどう思うのでしょう。ジョバンニも同じようにカンパネルラが居なくなったことがわかり悲しみを覚えました。まぁ、これ以上は言わなくても皆さんはわかると思います。まずは大事なことは自分の心に素直になること、相手の幸を考えること、これだけでだいぶ変わってくると思います。さて、そろそろいい時間になってしまいましたね。それではあなた方に勇気が出ますように、この曲を流して終わろうと思います。それと是非この曲が終わったら上を見てください。もう二度とこのラジオを聞くことがないように祈っています。それでは『瞬き』です、どうぞ。」

聞きなれた男性のボーカルの優しい声が耳の中に響き始めた。

それが終わる頃後ろから聞き慣れた声聞こえてきた。

「幸成!」後から見慣れた奴が走ってきた。

顔を見た瞬間自分は口を開き「ごめん」と、言葉を発していた。

「こっちこそ、ごめん。そっちの気持ちを考えてなかった。」

と。のとこで歌が終わった。ふと、空を見上げると神社の階段の灯りから階段の上に続いてその光は天の川に繋がってそれは永遠に繋がっていた。

それに二人揃って見とれていることに気づいた。

そこで2人顔を合わせて笑って、その光の河に向かって手を繋いで歩き始めた。

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薄明ラジオ @hanamiya1229

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