第2話 日が昇る直後に

最近は太陽が憎かった。学校に行きたくなかった。

最初は学校も好きだった。勉強することも友達と仲良くすることも楽しかった。あの日が来るまで。

ただ少し、はぶかれてる子と仲良くしただけだったのに。


こんなはずではなかった。学校に行けなくなり、昼夜が逆転し、今ではこんなダメな生活に慣れてしまっている。

夜通しやることも無く最近は祖父から貰ったラジオをずっと聞いている。


ある日のこと、5時半すぎ太陽が登り始め薄明るい時にそれは訪れた。

いつもの歌の選曲が好きな番組がなかなか始まらず砂嵐のような音が続いて怪しんでいると、突然それは始まった。

「1日2回薄明の時にあなたの元に訪れる薄明ラジオのお時間です。このお時間は私M.Sがお送りします。」

初めて聞く名前に驚いたがきっと選曲を間違えたのかと思いダイアルを回そうとした時。

「この番組は本日は姓坂町にお住まいのあなたにお送りします。」そこで手が止まった。自分が住んでる街だ……と。いつもなら迷わず変えるが、少し聞いてみることにした。

「本日はあなたの悩みを解決するために、ずっと見守ってくれている仲間からの便りが届いております。まずはタイヨウさんから、『最近は君はだいぶ生活が変わってしまい、私がいる時間帯にあなたを見守る事が少なくなってしまいました。ただまた君が頑張れるように応援しています。無理はせずに頑張ってください。また少しづつでも会えることを楽しみにしています。』」聞いているうちに、非現実的過ぎて馬鹿らしくなり消して寝ようと思っていたが続いての便りで、眠気が吹き飛んでしまった。

「2つ目の便りはあなたが1番よく知っている凌平さんからです。」

そう、実の知り合いの名前がでてきたことである。凌平は外されてた子と仲良くした時一緒にやって。自分と一緒に虐められていた友人だ。

「さて。凌平さんの心からの便りです。『まだ来ないのか?もう来ても大丈夫だぞ。次も何があっても一緒に戦ってやる。待っているぞ。』だそうです。良い友人に囲まれていますね。」

自分は先に1人逃げてしまっていた。1人取り残された凌平は1人で戦っていただろう。ただもう自分は凌平とは会う資格はない。先に逃げてしまったから……。自分はもうアイツと合わす顔がないのだ。

「では、ここで私から あなたはもう凌平さんに会う資格はないなどと思っているかもしれません。ですが、それは違います。苦しい時に共に残って戦ってくれる人、自分の正しいと思っていることを信じ支えてくれる友人などそうそういません。あなたは人に優しくできる心を持ちそれを実行できる勇気をも持ち合わせている。あなたは自分が思っているほど弱くありません。立ち上がってください。大丈夫です。何度でも太陽が昇るように、あなたは何度でも立ち上がる力を持っています。立ち上がってください。大洋、皆さんが待っていますよ。本来ならもっと便りを紹介するべきなのですが、太陽が昇って来てしまいました。ので、ここまでとしていただきます。もう一度繰り返します。あなたは強いです。何度でも立ち上がることが出来ます。太陽が、友が、家族があなたの事を応援しています。大丈夫。あなたなら出来ます。頑張ってください。もう、大丈夫でしょう。

最後にこのラジオを信じ最後まで聞いてくれたあなたへ。これからもいい日が続くように、そしてもうこのラジオを聞くことがないように祈っておきます。この祈りを最後の挨拶に代えさしていただきます。それでは、外をご覧下さい。さようなら」

と、そのラジオが終わった時言われた通りにカーテンを開け外を見ると窓から朝日が差してその日の始まりを告げていた。の、と同時にいつもの好きな番組の終わりの音楽が流れさっきのラジオが嘘のように平然といつもの番組が終わりのセリフを告げている。

不思議なことだったがなぜか今日はやる気に満ちている。自分はできるんだ、大丈夫だ。そう思い掛けてあるカバンを手に取り部屋のドアを開けて行った。

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