僕を見て、

かみの毛の無いお坊さんが、意味の分からない言葉をずっと呪文みたいに唱えている。

おじいちゃんとおばあちゃん、いとこのお姉ちゃんたちもいる。家が近くて、いつも一緒に学校に行ってたたける君もいる。あとは、知らない大人の人がたくさん。なぜかみんな黒い服を着ている。

泣いている人と泣いてない人がいる。お坊さんが何か悲しいお話でもしているのかもしれないけど、小学三年生の僕にはさっぱりわからない。でも、同じ三年生だけど、頭のいいたける君には意味が分かっているみたいだ。たける君のテストはいつも100点で、クラスで1番頭がいい。かけっこも速くて、この前の運動会ではリレーの選手だった。お母さんは、いつもたける君のことをほめる。たける君が子供だったらよかったのにという。だから僕もお母さんに褒められたくて、いつもいい子に頑張っている。お母さんはいつも遅く帰ってくるから、その前に「やらなきゃいけないこと」はしっかり終わらせる。あと、好き嫌いしないで食べるし、お母さんを困らせないようにするし、お母さんの言うことは絶対に守る。それでもお母さんは、泣いたりするけど、ちゃんとできるようになってからは、泣く量も少し少なくなった。お母さんはいつも大変そうで、辛そうだから、僕がお母さんを助けてあげる。だってお母さんは、僕にとっても優しいから。怒られることもあるけど、泣いたり、怒ったりした後は、僕を抱きしめてくれる。優しく笑ってくれる。あの日も、お母さんのいうとおりにしたら、お母さんは、笑ってくれた。久しぶりにお母さんは声を出して笑った。その顔を見れて僕はとてもうれしかった。僕を見て笑ってくれた。

でも今日は、泣いている。

お母さん、どうして泣いているの?どうして?僕は、お母さんの言うとおりにしたよ。泣かないで。僕を見て、泣かないで。

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残された者たち 朝食 @takitategohann

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