その後

僕は時折り考えます。

僕の初恋は、10才のときか20歳のときか、どちらだろう?と。

初めて好きだと思ったのは10才のときだけど、あんなに心が浮き立ったのは20歳のときだけ。

…どちらだったとしても、初恋の相手は変わらないけれども。


僕は時折り考えます。

長野から引っ越したとき、裕子さんに手紙を出せていたら、こうはならなかっただろう、と。

同窓会で会った裕子さんは手紙のことを忘れてしまっていたけれど、

小学生のときに好きと書いてくれた裕子さんは、きっと返事を待っていたに違いない。裕子さんにとっても悪いことをした、と。


弟の葬式のとき、僕は「こんなとき、誰かにそばに居てほしい」と思いました。

その「誰か」に浮かぶ名前はひとつしか無かったけれど、何もしてあげられなかった自分がしてもらうことばかり考えるとは、なんて図々しいのでしょう。


仕事は上手くいっていても、弟は助けられず、大切な人も居ない。

僕は人生を失敗しました。

子供の頃お世話になった先生や友人たちや両親にも顔向けできません。


・・・


僕は今でも、裕子さんに気持ちを伝えたいという衝動に駆られることがあります。

でも手紙を出すことはありません。僕は今でも裕子さんの住所を知りませんから。

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裕子さんへ ~二度の初恋~ 真田 了 @sanada-ryou

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