幼馴染にチャラ男のフリをさせられています。いい加減こんなキャラ辞めたいです
赤茄子橄
本文
「ははっ、あんたが俺の
もみもみもみもみ。
さて、この「もみもみ」ってのが何の擬音かと言いますと、俺が、右横にいる女性の肩に気安く腕を回して抱き寄せつつ、肩越しにおっぱいを鷲掴みにして揉みしだいている様子を表す擬音です。
柔らかい。もちろんまだ服の上から揉みしだいているだけなので、服と下着の感触もあるけど。
新品のブラではこう柔らかい感触はだせない。ある程度使い込んでいるやつを着けてるんでしょう。
ってことは今日の下着はあの真っ黒のやつかな。
......こんなことわかるようになりたくなかった............。
隣りにいるこの女性は、俺の1つ年上の幼馴染である
頬は僅かに赤らんでいて、俯いた顔は前髪で隠れていることも合わさって表情がうまく読み取れない。
ちらっと見えた目元は今にも泣きだしてしまいそうな、それでも気丈に振る舞おうとしているような、そんな印象を与える。
微かにのぞく口元はきゅっと引き結ばれていて、恥ずかしさと悔しさに耐えているかのように見える表情を形成している。
まぁ、普通、人前でおっぱい鷲掴みにされたら恥ずかしくなってこんな感じにもなりますよね。
そう、今ここは人前。場所は人通りのほとんどない校舎裏。この場にいる人数は俺をあわせて3人。
俺たちの目の前には、少しの怯えと多分な怒りが綯い交ぜになった表情で、ぶるぶると小さく震えながらこちらを睨みつける男子生徒。
おそらく先輩でしょう。
「くそっ、やっぱりお前がでてくるのか......っ!大丈夫だよ
ふむ、この人は諦めないタイプの人ですか。
はぁ......。ここまでで大人しく引いてくれたら余計に傷つかなくて済むんですけどねぇ。あなたも
もみもみ。
俺は肩に回しておっぱいを揉んでいた手を離して、今度は尻を揉みながら言葉を返す。
「ふっ。笑わせますね。紺がベッドの上でどんな姿を晒すのか、聞かされたいんですか?
うつ伏せに組み敷いて後ろから擦り上げてやったらねぇ、すっげぇ下品な声で鳴くんすよぉ〜。
聞いてみたいっすか?紺が嬉しそうに喘ぐ声。まぁ絶対聞かせねぇっすけどねっ。あはは!」
うーん、我ながら満点花丸の
こんなん、俺に好きな人がいて、同じようなこと言われたら心ぽっきり折れますよ絶対。
ただ、途中で、癖で「紺ちゃん」と呼んでしまった......。
まずいまずい。忘れてくれないかな。
俺が自分の放ったセリフと
「も、もぅ、そういうこと言うのやめてよ。恥ずかしいんだから......」
照れて赤くなっているかのようにも見えるけど、心底イヤなわけではなさそうな表情で、もじもじとしながら俺に悪態をつく。
同時に手をグーに握って、軽く俺の脇腹にパンチを入れる。パンチと言っても力なんて入ってなくて、じゃれつくようなもの。
「ははは、そう怒んなって、な?機嫌なおせよ、紺。今晩は朝まで可愛がってやるからさ」
俺は紺ちゃんのゆるくカールがかけられてふわふわになっているポニーテールの房に手をかけて匂いを嗅ぎながら、そう返す。
「ほ、
目の前の先輩男子は怒りに顔を赤くさせて、忌々しげに俺の名前を叫ぶ。
「あ、先輩、まだいたんすか?もう帰っていいっすよ?」
さらに煽る俺。
「このまま帰れるわけ無いだろうが!?渕簾さん、こっちに来て!僕が二度とそいつに手出しさせないから!」
ふぅむ、諦めの悪いお方ですねぇ。
だけど、そろそろ紺ちゃんがトドメをさすころ。
「ごめんなさい、私、もうこの子、
決ぃ〜まったぁー!これは精神崩壊レベルの大打撃ですよー!
先輩も、「あぅぅ」とか「そんな......」とかと「嘘だろ」とか口の中で呟きながらふらついてる。
もう大人しくダウンしておくのが一番いいですよ!なんでまだ立ってるんですか!いい加減膝をついても許されますよ!
「くそっ、あんなに......あんなに僕といい雰囲気だったのに!ひどい!う、うわぁああぁぁぁあぁぁぁぁ!」
そんな捨て台詞を言い残して先輩は走り去ってしまった。
何をどう勘違いしてたのか知らないですが、彼からすれば紺ちゃんを俺に寝取られたように感じたのかもしれません。
というか、俺が放った言葉のセリフ選び、どう考えても悪意あるでしょ。
あえて寝取られ展開を彷彿とさせるようなセリフのチョイスでしたし......。
俺が彼の立場なら再起不能になるレベル。
「あ......ごめんなさい、名も知らぬ先輩......」
走り去る彼の後ろ姿を見送りつつ、ごくごく小さな声で謝罪の言葉を述べさせてもらう。
誤解しないでいただきたい。
さっきまでの態度は決して俺が自分の意思でしたことではないんです!
「何謝ってるの?」
はぁっとため息をつく俺に、横から声がかかる。
声の主である紺ちゃんこと
「いやだって、勇気出して告白してきてるのに、俺が叩きのめすみたいなことして、可哀想でさ」
「ふぅ......あなたって子は......どうしてそうまで甘いのかしら。前も言ったけど、彼はね、教室で孤立してたからかわいそうに思って私がちょっと話しかけただけでストーカーみたいになっちゃってて困ってたんだから。妥当よ妥当」
うーむ、確かにストーカーみたいになってたとは聞いてたし、今日の言動も、ちょっと話しかけられたからって勘違いしちゃってアレだとしたら、結構ヤバいかも。
「でもさぁ。それにしてもあれはさぁ、ちょっとやりすぎじゃないですか?」
「全然やりすぎじゃないわ。それにこういうのはちゃんと吹っ切れるようにしてあげるのが優しさなの。私が
そういうもんなんでしょうかねぇ。
ちなみに紺ちゃんが「
今日みたいなことはすでに何度もあったからか、どうやら学校中で俺の名前は悪質なチャラ男として通ってしまっているらしい。
......解せませぬ。
「それにしたってやり方ってものがあるんじゃ......。それに俺もこれ以上セクハラ最低チャラ男だってみんなに思われるのは嫌なんですけど!」
「なぁに?まさか
そう、さっきまでのセリフも行動も全部、全部この人、紺ちゃんの台本の通りに振る舞っただけなんです!俺は無実です、助けてください!
紺ちゃんは別に俺のものじゃないし、おっぱいも尻も揉みたくて揉んでるわけじゃないんです。本当です。
柔らかくてちょっとは気持ちいいけど、できれば拒否したい役割だと思ってるんです!
僕は見た目こそ、シルバーアッシュでツーブロックの髪を立ててたり、両耳にはピアスがいっぱい、そんで首元や腕にはいくつかのタトゥーが見え隠れしてるようなチャラ男って感じですけど、中身はこんなに真面目な男なんです。
この外見だって、髪は遺伝子の異常でこんなんになってしまってる地毛ですけど、他の装飾とかは紺ちゃんに強要されて仕方なくやってるだけなんです。
言葉遣いも、紺ちゃんの名前を「
俺はただでさえこの見た目のせいで、紺ちゃんと違って学校中の生徒から怖がられたりして誰も近寄ってきてくれない。
俺だって友達と仲良く青春とか送ってみたいと思ったから、せめて言葉遣いくらい紳士なものにして、みんなに受け入れてもらえるようにしちゃだめかって相談したのに、あえなく却下されてしまって、紺ちゃんと2人きりのとき以外は家族の前でもこんな言動をとらされている。
でも、俺は紺ちゃんには逆らえないので......。
「い、いや、不満っていうかさ..................。ねぇ、紺ちゃん、俺はいつまでこんなことし続けなくちゃいけないんです?」
「一生」
一生......一生かぁ。
「お、俺はまだ紺ちゃんに惚れたりしてないからね?紺ちゃんも早く他にいい人見つけていいんですよ?」
惚れてないなんて、嘘ですけど。
俺たちは本当はお付き合いしているわけではない。
あ、待って待って。セフレにしてるとかそういうチャラ男ムーブじゃないんですからね。
まぁ、きれいで素敵なお姉さんだとは思ってますし、女性として好きですよ?
青みがかった黒のきれいな髪をポニーテールにまとめて、優しげな丸い瞳と笑顔の絶えない口元。
158cmのCカップで、均整の取れた体型。
今回のストーカー(仮)事件の発端になった側面もあるけど、誰にでも優しく手を差し伸べるような女神的な存在。
ね、嘘でも「魅力的ではない」とは言えないでしょ?
けど......俺が気を許して付き合ったりするわけにはいかないんですよねぇ。
「
紺ちゃんはいつもこうやって好意を伝えてくれてる。威圧的だけど......。
けどその気持ちも多分、昔のことが原因で、俺に対する感謝とかそういう感情を勘違いしちゃってるだけだと思うんですよね。
紺ちゃんを俺に縛り付ける気もないし、本当に早くいい男が現れてほしい。
「あ、ありがと。でもさ、ほんと、他に目を向けても「黙って」......はい」
こうやって濁った目で強く言われたら逆らえない。
「なによ、合法的に私のおっぱいとお尻が揉めて、嬉しいでしょ?」
「嬉しくなんて「嬉しいよね?」......はい、すごく嬉しいです」
「うふふ、そうそう。最初からそうやって素直に言えばいいのよ♫」
まぁ、確かに、嬉しくないわけがないしね。
「ふぅ。まぁなんにしても今回も助かったわ。ストーカーみたいな人に告白されるなんて、何があるかわからなかったからね。ありがとね淡」
紺ちゃんは他の人の前では俺のことを「淡
お気づきだと思いますけど、告白してきてた勘違いストーカー男先輩の前で見せてた清楚代表みたいな紺ちゃんの女神的な姿は、よそ行きの振る舞い。
俺と
その本性は俺を便利に使う女王様。
「ほんとに、ほどほどにしてくださいよね」
「もういい加減諦めて、心からチャラ男になりなさいよ。それで私を蹂躙してよ」
......この人はすきあらば俺を誘惑してくるな。
「はぁ......しませんって」
「もぅ......。早く私に堕ちてよね?」
すでに致命的なくらいチャラ男としての風評被害を受けてるけど、心はまだ折れないよ!
心が紺ちゃんに堕ちて付き合ったりしちゃったら、理性のタガも外れて、俺はずっとえっちばっかりするようになるに決まってますしね。
そんなことになったら、名実ともにチャラ男になってしまう。
いつかチャラ男キャラをやめる日のために、貞操だけは守ろうと決めているんです。
「でもさ〜淡〜」
ギクッ。
紺ちゃんが低くて冷たい声で、暗くて光のない眼で、しゃべりだした。
有耶無耶にできたかもって思ったのが間違いだった......。
これは多分、俺の言い間違いが原因だろう。
「さっきのストーカーくんに言ってたセリフの中でさ、私のこと『紺ちゃん』って呼んだよね?」
「......呼んでな「呼んだね?」......呼びました......」
せめて最後まで言わせてよ。
「なにか言い訳はある?」
「えっと、そ、それ以外は結構完璧に演じられたと思うんですけど......」
そうだよ、他はできたんだから、ちょっとのミスくらい許してくれても、ねぇ?
「関係ないよね?私たちの
「......はい、言い訳は辞めます」
下手に紺ちゃんを刺激してこれ以上罪を重ねてしまわないように、大人しく従うことにします。
「うん、よろしい。じゃあ今晩はお仕置きね。ま、お仕置きっていうよりご褒美に近いかしら。今晩こそ、淡が私に堕ちちゃうかもね♡」
「............帰りましょうか」
「はぁい」
反論を諦めた俺は、嬉しそうに腕に抱きついてくる紺ちゃんを大人しく受け入れて、一緒に帰路についた。
向かうは俺の家。
お仕置きのために......。
*****
俺と紺ちゃんは互いにある契約を結んでいる。
その内容は以下のようなもの。
==========
#契約項目1
##契約内容
##契約違反時の罰則
渕簾紺がこれに違反した場合、行為が行われた事実を生涯秘匿するとともに、法蓮華淡との恋人関係を完全に諦めること。
#契約項目2
##契約内容
名前の呼び方や言葉遣いの間違い、およびその他台本から逸脱した演技を実行した場合、本契約を違反したものとみなす。
##契約違反時の罰則
法蓮華淡がこれに違反した場合、直近一晩、性欲増進薬ラブメイカーを服用し、渕簾紺と全裸で朝まで同衾すること。
※法蓮華淡が契約内容を破棄・変更する場合、法蓮華淡と渕簾紺の婚約を両親に伝え、可能な年齢であれば即入籍すること。
==========
といった具合。
昔、紺ちゃんが夜に俺の部屋に忍び込んできて、俺を襲おうとしてきたとき、これはいよいよもって貞操の危機だと思って交わした契約。
要はそのとき、貞操を守るために紺ちゃんが俺を逆レイプしないって約束してもらう代わりに、紺ちゃんにとって都合のいい約束もするという交換条件をだされた形。
正直なことを言えば、紺ちゃんには素直に「夜這いなんてしない」と約束してほしかったけど、まぁ彼女の立場にたって考えてみたらメリットもなくその条件を飲む理由がないですもんね。
契約項目1は言わずもがな俺が出した条件。俺のことを勝手に襲わないでください、ってこと。
本当に守りたいのは、俺の貞操というよりは、紺ちゃんの貞操だけど......。
そして契約項目2こそ、紺ちゃんが提示してきた交換条件。
今のようなチャラ男を演じて、外向けには紺ちゃんを「自分の女」のように扱うことってやつ。
みんなの前で「紺ちゃん」なんてヌルい呼び方をせず、年上のはずの紺ちゃんが俺のモノだって周りにわからせるみたいに「紺」と呼び捨てたり、タメ口で話したり。
もし言い間違えたりしたら、クスリを飲まされてめちゃくちゃエロい気持ちにされて、ムラムラが止まらない状態で裸で密着して寝ることを強要されるって契約。
紺ちゃんが俺を堕とすために出した条件。
これが本当にきつい。
俺自身、なんで未だに本番に手を出さずに耐えられているのかわからない程度には効果抜群。
契約を結んだのは、俺が中学1年、紺ちゃんが2年のときなので、契約締結からすでにかれこれ4年ほど経っている。
その間、もう何度眠れない夜を過ごしたかわからない。
最初の頃は演技もグダっていたのでほとんど毎日同衾させられていた。
契約内容を確かめたとき、当時の俺はこれで紺ちゃんから変なことをされることがなくなって、俺が理性を保ってさえいれば貞操を守れる、などと甘いことを考えていた。
契約では、
注意書きとして書かれた「俺の都合で契約内容を変更する場合は即結婚」という謎の条項も、紺ちゃんが俺と絶対同衾するために契約内容を変えさせないようにしているのかな?なんて深く考えずに締結してしまった。
まさか、「本番
紺ちゃんは同衾のたびに本番以外のあらゆるいたずらを仕掛けてきた。
しゃぶられたり、大人のキスをさせられたり、足やアソコをしゃぶらされたり。
正直すでに貞操を失っていると言っても過言ではない気がしているけど、見ないふりをしている......。
だって、紺ちゃんのためにも本番はだめだけど、好きな人にえっちなことしてもらえるなんて幸せですし。
ともかく、俺たちはそんな契約を結んで、これまで正しく遵守してきた。してしまっていた。
それでもここしばらくは上手に演技できていたから、紺ちゃんと一緒に寝るなんていうある種の拷問も受けずに済んでいたんですけど。
そんな中で今日の言い間違い。
ついつい口をついて、一瞬だけ「紺ちゃん」と言ってしまった。
すぐに言い直したけど、紺ちゃんがそんな餌を取りこぼすはずもなく、お仕置きを受けることになった......。
「
「あぁ......うん、わかり......ました」
どうやらそろそろ拷問のお時間のようだ。
ダイニングの端で迫られる。
この家には父さんも母さんもいて、さっき俺と紺ちゃんと4人で一緒にご飯も食べた。
でも今は両親ともに寝室に行ってしまい、2人きりの状況になっていた。
何を言われたというわけではないけど、紺ちゃんのこの言い方、この意味深な昏い目線は、早くクスリを飲めってことだろう。
光を通さない茶色の瓶から1錠取り出して手の平に乗せる。
久々に手に取る錠剤型のクスリ。
本当に合法なのかもわからない。
ごくごく小さな円形で、ピンク色をした錠剤の真ん中には、ハート型が刻まれている。
性欲増進薬ラブメイカー。
最近、この街、
絶大な効果で一晩中狂ったように愛し合えるようになり、夫婦仲を更に良くする素敵な薬なんだとか。
......飲みたくない............。
これを飲んだら本当にムラムラがヤバいことになるんですよ。まじで。
錠剤を眺めて動かない俺にしびれを切らしたのか、紺ちゃんが声を上げる。
「何してるの、淡。早く飲みなさい?それとも私と結婚したいってことかしら?」
なんという究極の選択......!
「の、飲むからっ。もうちょっと待って、覚悟決めさせてください」
「早くぅ〜。あ、わかった、お口移しで飲ませてほしいのね!?もぉ〜、それならそうと早く言ってよね♡」
え!?んむぐっ!?
紺ちゃんは話し終えるのが早いか、俺の手の平に乗っていた錠剤を奪い取って水と一緒に口に含み、俺を押し倒して唇を合わせてきた。
舌で俺の唇をこじ開けて、口の中に薬を流し込んでくる。
ただ、いきなりのことで驚いてしまい、変なふうに口の中が動いてしまい、結果、錠剤を紺ちゃんの口の中に押し返す形になってしまう。
それに気づいたのか、紺ちゃんは口の中の水だけ全部俺に流し込んだかと思うと、唇を離して犬歯のあたりで錠剤を噛むように保持して俺に見せつける。
その表情はこころなしか喜びを含んでいるようにも見える。
「淡?どうしてこれを私に返したの?これは契約違反じゃないかしら。やっぱり結婚したいのね?あ、それともとうとう本番えっちをしたいっていう意思表示かしら?」
「ち、違うよ!飲むから!返してください!」
「返して?どうして命令形なのかしら。約束を破ったのは淡なのに」
そう言われると弱い......。
「あ......はい。ごめんなさい。俺にその薬を飲ませてください、お願いします」
「うん、淡くんはちゃんと謝れて偉いね♫でも......」
あー、この流れは多分何かしら要求してくるんでしょうねぇ......。
「一度はコレを飲むのを嫌がって、約束を破っちゃったんだから、バツとして、淡が自分のお口で、私の口の中からこれを取り出して?」
そう言って紺ちゃんは錠剤を口の奥に隠す。
「......はい......」
そんなのほとんど本番と変わらないレベルでいやらしい行為だろって思うけど、この条件を断ったらいよいよ俺は契約不履行。
結婚が成ってしまう。
んちゅっ......れろっ......んむっ、じゅるずぞっ......っ!あった。
れろれろっ......。ぷはぁっ!
奥歯の裏に隠してるなんてエグい。
舌で口の中全体を弄ってようやく見つけた。
しかも探すのを舌で妨害してくる。
あとは取るだけなのに、うまく取れなくてただのディープキスをしばらく続けることになってしまう。
はぁっ、はぁっ......と、取れた。
ゴクン。
「うふふ、私の唾液まみれのおクスリ、おいし?あ、もしかしてこうして欲しくてわざとあんなことしたのかな?かーわいぃ〜♫」
......おいしいから困る。
数年に渡る調教の結果、俺の体と頭は紺ちゃんの唾液をごちそうだと認識してしまっているらしく、信じられないくらい美味しいと感じてしまう。
でもこんなのはまやかし。俺は今晩もしっかり耐えるんだ!
「ち、違うから!もういいでしょ、寝ましょう」
「ふふっ、そんなに早く私の裸がみたいのね?しょうがない子。今晩こそ、いい加減、2人で卒業しようね?」
「し、シませんからね」
「はいはい、我慢しても無駄なのにね♫」
*****
あれから2人で俺の部屋に向かい、着ていたスウェットと下着を脱いでベッドに入った。
俺が腕枕をして向かい合うようないつもの体勢。
紺ちゃんの頭が顔の前にくる。
「あはっ、こうやってくっついて寝るのも、もう数ヶ月ぶりね。あぁ、淡からとってもいい香りがするわ」
裸の俺をギュッと抱きしめながら、少し見上げるように顔を俺の方に向けて、卑猥なささやきを仕掛けてくる紺ちゃん。
今にも唇が触れそうな距離に、紺ちゃんのきれいな顔がある。
それに対して俺は......。
「紺ちゃんは臭い紺ちゃんは柔らかくない紺ちゃんは気持ちよくない」
理性が崩壊しないようにぶつぶつと独り言を唱える。
本心では、今すぐ挿れてしまいたい衝動にかられるくらいいい匂いだし、すべすべの肌は柔らかくて、密着しているだけで気持ちいい。
せめて反対のことを口に出して言っておかないと、すぐにでもいろいろ決壊してしまう。
「......いつものことだけど、ちょっと傷つくわね」
「ご、ごめん、でも理性を保つためだから......」
そう、俺は同衾することになったときはいつもこんなふうに紺ちゃんを
女の子にしていい仕打ちじゃないかもしれないけど、俺の貞操、いや本当は
俺のその言葉のあと、数秒間の沈黙が流れる。
..................?
俺の胸のあたりに頭をうずめるような姿勢になっていて、表情も見えない。
どうしたんだろうか?
紺ちゃんがこの状況でこんなに早く寝るはずがない。
いつもならこのあたりで俺のナニをしゃぶりだす頃合いだ。
なのに、紺ちゃんは一言も話さない。
ムラムラがヤバいから、なんでもいいからできるだけ喋って意識を別のところに向けておきたい俺は、目の前にある話題として、いつもと違う紺ちゃんの様子について尋ねてみた。
「......どうしたんですか?」
「私って......そんなに魅力、ないのかな」
ぼそりと、いつにない弱気な声でのつぶやきがこぼされた。
「普通、こんなにアプローチしてたらちょっとくらいなびいてくれてもいいじゃない。淡のこと大好きな女の子が受け入れ準備万端で裸で寝てるんだよ?
それでも手を出さないって、淡にとって私って全く魅力がないってことでしょ?私、どうしたらいんだろ......」
本気の悩みらしい。
紺ちゃんが弱音みたいなのを吐くのは本当に珍しい。
いつも強気で、元気で、明るくて。こういう姿は滅多に見せない。
そんな紺ちゃんから放たれた酷く後ろ向きな言葉に、ドクンと庇護欲が掻き立てられる。
ムラムラとした情欲が収まったわけではないけど、それでも今は真面目に話さないといけない状況だと判断して、深呼吸を1つして落ち着く。
「紺ちゃん。俺のせいで悩ませちゃて、ごめん。でもさ、俺の考えは昔からずっと変わってないよ。紺ちゃんはめちゃくちゃ魅力的な人だよ」
「じゃあ、じゃあなんで!?なんで私に手を出さないの!?」
「紺ちゃんが初めて告白してくれたとき、言ったでしょ。紺ちゃんはきっと、尊敬というか感謝というか、僕に対して恩を感じてる気持ちを、愛情だって勘違いしてるんだよ。いつか紺ちゃんが本当の恋をして、そのときにその人にすべてを捧げられないってなったら、絶対後悔しますよ。だから、そんな紺ちゃんの身体を俺なんかが汚すなんてできないんです」
これが偽らざる本当の気持ち。
紺ちゃんは
俺の釈明を聞いて、また数瞬の沈黙が流れたあと、紺ちゃんが小さく口を開く。
「なによ、私の口にも顔にも髪の毛とかお腹にもぶっかけといて、汚したくないとか......どの口が言うのかしら」
ぐっ!?
それは......そうだけど......。
「それになに!?私の気持ちが勘違いですって!?勝手に決めないでよ!だったら何年間勘違いしてるっていうのよ!?」
紺ちゃんがヒートアップしてきて、上半身を起こして声が大きくして俺を責める言葉を綴る。
それに合わせて俺も身体を起こして反論する。
「すげぇ長い勘違いなんですよ!紺ちゃんが俺を好きだって思うようになったのって、アノトキでしょ!?
紺ちゃんが中学1年のとき、変なおじさんにストーカーされてて、路地裏で腕を掴まれてたときに俺が助けに入ったときからでしょ!?
そりゃあんな状況だったら、怖くてドキドキして、吊り橋効果も抜群ですよ!
そんなまやかしの感情で、紺ちゃんの人生を縛るなんてできないでしょ!?」
*****
あれは今から4年くらい前。
あの契約を締結することになる少し前。
当時小学校6年生だった俺は気づいてなかったけど、紺ちゃんは変なおっさんにストーカーされていた。
今回のようなあまいストーカーじゃなく、盗撮やポストへの気持ち悪い手紙の投書など、結構過激なストーカーだったらしい。
そんなあるとき、たまたま俺が下校しているときに、暗い路地裏から紺ちゃんの悲鳴が聞こえた。
幼稚園の頃からの幼馴染の紺ちゃん。
シルバーアッシュという目立つ髪色のせいで人が寄り付かなくて孤独だった俺に、唯一優しくして仲良くしてくれたお姉さん。
そんな人の声を聞き間違えるわけがない。
何事かと思って急いで路地裏に入ると、鼻息を荒くした汚いおじさんが紺ちゃんの腕を掴んで、なんか卑猥なことをしゃべっていた。
友達もいなくて暇だったからトレーニングはそれなりにしていたとはいえ、小学6年生の俺とある程度身長のあるおじさんでは、戦力的に分が悪いと思った。
それでも、俺に良くしてくれた人を置いて逃げるわけにはいかない。
俺は自分を奮い立たせて2人に駆け寄り、おじさんの手を蹴り払った。
急な闖入者におじさんが驚いているすきに、紺ちゃんの腕を掴んで路地裏をでた。
それでも人通りが増えるってことはなく、誰かの支援は期待できなさそう。
どうすべきかを悩んでいると、さっきおじさんが呟いてた卑猥な言葉が頭をよぎる。
なんか「処女膜を食べてあげる」とか「やっぱり初物がいい」とかそういうアホなセリフが聞こえてた。
なら、紺ちゃんが
その考えが、すべての発端。
俺はこの間のストーカー先輩にしたのと似たようなセリフをおじさんに向けて放った。
「おじさんがこの子の処女を食うのは無理だよ。この子の身も心も、すでに俺が食っちゃったからね!残念でした」
俺のその一言に、おじさんはブチギレ。「俺のもんに何しくさってんだ!?」とか喚きながら俺を殴る蹴る。
ある程度俺をボコボコにしたあと、「非処女なんていらねぇよ、このビッチが」とかカスい捨て台詞を紺ちゃんに吐き捨てて、その場を去っていった。
少し離れた場所で震えながら様子をうかがっていた紺ちゃんが号泣しながら走り寄ってくる。
ちゃんと守れたみたいで、よかった。
......その日の俺の意識は、そこまでで途切れていて、次に起きたのは病院のベッドの上だった。
何箇所か軽く骨折していたらしい。
あのとき気絶した俺を助けるために、紺ちゃんが近所の家に助けを求めに行って救急車を呼んでくれたらしい。
おじさんは本当にアホだったらしく、ストーカーと、俺を暴行した罪でお縄になったそう。
ひと安心だった。
ただ、良くなかったのは、この日から紺ちゃんの言動がちょっとおかしくなった。
俺のことを好きだと言って告白してくれた。
彼女のことが好きだった俺は嬉しく思ったのと同時に、「これじゃだめだ」という気持ちを感じていた。
変にマセたガキンチョだった俺は、当時から吊り橋効果について知識を持っていた。
だから、紺ちゃんのその想いは、危険な場面に遭遇して高まった鼓動と、恋の鼓動を同一視してしまっているだけだと思った。
だから、そんな「まがい物の好き」で、俺に縛り付けられるなんて、だめだと思ったわけです。
告白を断ってからの紺ちゃんはさらにおかしかった。
ストーカーから助けに入ったときの俺の態度が相当おきに召したらしく、学校や他のところでも「こいつは俺のものだ」って振る舞うようにお願いしてきた。
いわく、当時からたくさん告白されていて、めんどくさくなっていたらしく、それを減らすためだとか。
そのころはまだ今のような契約は結んでなかったから、告白を受けたときだけ出向いて、その一瞬だけ演技するだけだった。
それからしばらくして、俺が中学に上がって少ししたころ、告白を断り続ける俺にしびれを切らして、理性の限界を超えた紺ちゃんが俺を襲いに来て、あの契約を結ぶことになって現在に至る。
これが紺ちゃんが俺のことを好きだと
*****
「俺はそんなきっかけで生まれたまやかしの、勘違いの感情で付き合ってほしくないんですよ!
紺ちゃんには、色眼鏡無しで人を見て、ちゃんと恋して、好きな人にハジメテを捧げてほしいって......そう願ってるだけなんですよ......」
俺の、近所迷惑も顧みない心からのシャウトに、紺ちゃんのヒートアップした反撃が沈静化して、二人の間に静寂が訪れる。
止まった空気を壊したのは紺ちゃん。
「バカ......おバカ。本物のバカ。私は淡のことが好き、大好きなの。この気持ちは勘違いじゃない」
「はぁ!?俺の話聞いてました!?勘違いじゃないかどうかなんてわからないでしょう!?」
俺の叫びを聞いてなかったんだろうか。
紺ちゃんは落ち着いた声で語る。
「勘違いじゃないわよ。そもそも、私がそのときから淡のことを好きになった、ってところから間違ってるし」
「......え?」
「私、それよりずっと前から淡のこと好きだったよ」
「う、嘘だ......」
俺の記憶の範囲で、そんな気配はなかった。と思う。
「本当だよ。最初は幼稚園で1人ぼっちで遊んでて可哀想だな〜って声をかけたけど、それから私の後ろだけをひょこひょこついてきてくれて可愛いなぁって思うようになった。
小さい頃からうちのパパとママみたいにずっとラブラブな家族を自分も作りたいって夢見てた私は、だんだん、私だけを見てくれる淡こそが運命の人なんだって思うようになっていったの。
小学校の真ん中くらいには淡のこと、男の子として好きだったわ。あのストーカーの件なんて、ただの告白するきっかけでしかなかったわ」
衝撃の事実を伝えられた。
紺ちゃんはさらに追撃を加える。
「だいたい、もう何年も何年も淡と一緒に過ごして、あなたのいいところも悪いところもたくさん見てきて、その全部を好きになってるの!そんな私の気持ちを、勘違いだなんて馬鹿にしないで!」
心にズドンと衝撃を受けたかのような感覚。
俺は
「でも......だったらそれを告白してくれたときに教えてくれたらよかったじゃないですか!」
そうだよ、昔から好きだったって告白してもらえてたら、こんなに長く勘違いすることもなかったはずだ。
「言ったわよ!なによ!淡が私の一言目で勘違いして勝手に上の空になって聞いてなかっただけでしょ!?私のせいにしないでよ!」
なんてこった、伝えられてたらしい。
確かに告白で呼び出されたときから、勘違いがどうとかって考えて頭がいっぱいで、上の空で聞き逃してたかも......。
「......す、すみませんでした......」
「わ、わかればいいのよ、わかればね......」
激しい口論に一旦のオチがつき、声を荒げてしゃべった分、2人ともはぁはぁと上がった息を整える。
その後、先に話し始めたのは紺ちゃんだった。
「......で?私のこと、抱くよね?」
ぶはっ!
「きゅ、急ですね!?」
「急なわけないじゃない!何年待ったと思ってるの!?」
いやたしかにそうかも知れないけどさ!
「私は心の底から淡が好き。淡も私のことが好き。淡はおクスリ飲んでエッチな気持ちになってる。私の身体も準備万端。2人とももう裸。こんな状況で私を抱かないって選択肢があるとでも思ってるの!?」
「あ、あー......でも、いきなりっていうのはさぁ」
「でももだってもないの!抱きなさい!欲望を全部私にぶつけなさい!さっきおクスリを私の口からとったときのチューからおっきくなりっぱなしのそれを、私に挿れなさい!」
そこまで言われて、俺ももう我慢の限界。
紺ちゃんのためだと自分に言い聞かせて、気合と理性でなんとか抑えてきた性欲のダムは決壊間近。もう保たないっ!
「あ、あの、紺ちゃん......?」
「なに!?まだなにかごちゃごちゃ言うつもり!?」
「そうじゃなくてさ。俺、このあと正気を失って紺ちゃんを貪っちゃうと思うから、その前に..................ね」
想いは伝えあったけど、まだ俺たちは恋人じゃないからね。
俺は見た目はチャラくても、こういうことには真摯に紳士であるべきだと思ってるから。
めちゃくちゃする前に、言っておかないといけませんよね。
「紺ちゃん。渕簾紺さん。俺は昔からあなたのことが好きです。
前に交わした俺たちの契約は、
どうか、俺のお嫁さんになってくれませんか!」
俺が紺ちゃんを貪る前に、新しい契約をしたい。
伝えた俺の想いに、紺ちゃんはめちゃくちゃ素敵な笑顔に、きれいな涙がきらめいていた。
「はい、私を、淡のお嫁さんにしてください!」
ふぅ〜。
「それじゃあ、いただきます!」
*****
「ねぇ、俺ってまだチャラ男みたいな振る舞いしなきゃだめなんですか?」
「え?一生それって言ったよね?」
えー、俺を繋ぎとめるための方便じゃなかったんですね......。
「私、好きになったきっかけはあのストーカー事件ってわけじゃないけど、あのとき淡が私を自分のモノだって他の人に独占欲を宣言してくれてるみたいで気持ちよかったっていうのもホントなのよね」
「あ、そ、そうなんだ......?」
性癖ですか......。
「それに、淡がそうやって周りから敬遠される見た目とか、みんなの前で私のおっぱいとかお尻を揉むような変態だって伝われば、変な女の子が近寄ってきて取られる心配もなくなるかなって」
そ、そうですか......。
まぁ今となっては何でもいいですけど、青春の間に友達を作って話したりしてみたかったって気持ちは、ちょっとある、かな?
俺のそんな心のうちを見透かしたかのように、むっとした表情になる紺ちゃん。
「なによ、他の女の子とおしゃべりしたかったの?許せないわね」
「そ、そうじゃないよ!お、女の子とかじゃなくて、友達作ってみたかったなって......」
「ごめんね、そのお願いは叶えてあげられないわ。そんなことしたら淡に惚れちゃう女の子続出だから」
「そんなことにはならないと思うんですけど......ま、いっか」
「大丈夫。そんなこと考えられないくらい、私で満たしてあげるから♫
まずは今晩は、ラブメイカー、5錠、飲ませてあげるね♡」
「ちょ、ちょっと待って、前2錠飲んでシたとき、3日間しっぱなしで腹上死直前になったんですよ!?5錠って、絶対ムリですって!」
「繋がったまま死ねるなんて、素敵じゃない?」
そう云って俺をまっすぐ見つめる渕簾紺の瞳は、真っ黒でぐるぐると渦巻くように濁っていた。
そんな姿にも俺への愛が感じられて、とても魅力的に見えて、期待に答えてあげたいって思っちゃう俺は、多分末期なんだろうな。
「おらっ!ごちゃごちゃ言わず、その身体差し出せ!」
「あんっ♡チャラい人に堕ちちゃった♡」
幼馴染にチャラ男のフリをさせられています。いい加減こんなキャラ辞めたいです 赤茄子橄 @olivie_pomodoro
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