第5話 終章 ~えぴろーぐ~

 かくして。


 俺はめでたくリッチェンケルトを救いだし、彼女の村へとやってきた。

 三匹の仲間たちも一緒である。迷子の俺たちの足として、なによりそれぞれにリンのパンツをあげるためだ。

 リンは俺に貸すのにはあれだけ渋っていたのに、獣たちにはこころよく洗い替えをあげるという。解せぬ。



 エルフたちは俺をまず弓を構えて出迎えた。

 リンが一連の救出劇を話してくれると、とりあえず信用はしてくれたらしい。食事と寝床を与えてくれた。身よりもなく手荷物ひとつない俺にとって、エルフの施しは心底ありがたかった。

 翌日にはすぐに出ていくよう促されたが、俺は頼みこんで、仕事を分けてもらうようにした。


 エルフらが苦手とする力仕事はもちろんのこと、地球ならではの遊び、手作りのオモチャも喜ばれた。閉鎖的なエルフにとってよその世界の住人は気味が悪く、同時に稀有でもあった。しだいに受け入れられていくにつれ、俺はエルフたちの好奇心を満たす語り部となっていった。

 年寄りたちは、日本の物語が気に入ったらしい。


 連日俺のまわりにエルフが集まり、大切にされ、友人となっていく。

 なにより、リンがそばにいる。

 俺はこの世界を愛するようになった。



「――いくのか。桃尻太郎」


 村の出口で――長老が眉をしかめる。


「はい。ヒトが、エルフの娘と結婚するために必要な試練だというなら、俺は挑戦するしかありません」


 そう言って、隣の少女に視線をやる。これから始まる長旅に向け、すっかり支度をすませたリッチェンケルト。


「大丈夫。わたしが護るもの」


 彼女は手にした弓矢――精霊王の弓を構えて見せた。巫女である彼女の姉が託してくれた、エルフの秘宝である。


「では桃尻太郎にもこれを」

 

 そういって、長老は抱え込んでいたものを渡してくれる。


 ――神殺剛柳剣かみごろしごうりゅうけん。英雄の兜。女神の盾。風神のブーツ。


「長老様、これは!」

「これぞ、エルフの村に伝わる真の秘宝。長老であるワシの手元に置いておった。……これを使い、必ず生きて帰ってこい。お前は次に、この村の主となるのだから!」

「はいっ!」


 俺は溢れた涙をぐいと拭い、さっそく、すべてを装備した。

 みるみる力がわいてくる。

 これなら、きっと、魔黒竜王神(グレートドラゴンロード)も倒せるはずだ!


「じゃあ! みんな! いってきますっ!!」


 手を振る俺に、一斉に檄をとばしてくれるエルフたち。俺は村に背を向け歩き始めた。

 大いなる挑戦にむけて、まっすぐに。



 隣をトコトコ歩きながら、リンが小さくつぶやいた。


「……しかしあれじゃの。エルフの秘宝にはなぜに鎧がなかったのかの……」

「ん? もしあったとしても着ないよ俺。この開放感がやみつきだもの。全裸サイコー」

「せめてパンツだけでも……」

「リンちゃんが貸してくれるなら」

「いやじゃ。なんだかもう、すっかり見慣れてしまったしな……」

「冒険から帰ってきたら、見慣れたものとは違う状態をお見せしますよ奥様」



 俺は笑って、桃尻をプリプリ振って見せたのだった。



 ――俺たちの冒険はこれからだ!

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全裸転生 とびらの@アニメ化決定! @tobira

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