冬の雨音を聴きながら
和泉ゆり
冬の雨音を聴きながら
年末にやっていた深夜の特番ラジオが好きで録音して何度も聴いている。「心を風街に閉じ込めて」という素敵なタイトルと好きな女優がナレーターをしている。物書きで食べていけたらどんなにいいのだろう。繊細過ぎる何とも言えない感覚を文章に自由に書き起こして、その時々の自分の声に正直になる仕事。
今、私は何をしているのかと生徒に聞かれたら、恰好をつけて物書きをして時々猫と一緒に昼寝をしているよ、と答えるだろう。生まれてはじめて受け持ったクラスを放棄して逃亡劇をしているというのに。なんとも可笑しい。働いていた半年間で一番失ったのが自己肯定感。こんな人たちと何のために嘘偽りの笑顔を顔に貼り付けて働いているの?という疑問を頭に抱えて、そんなものの答えを自分で導き出すことはできず、教わることもできず、自分のしていることが全て哀れに思えてきて、ある日全てぶん投げてしまった。でも時々あの子たちは大丈夫かなとふと頭に思い浮かぶことがある。でもきっと大丈夫だとも思う。自分が本当にしたいことなんて分からない、自分のことが何もわからないけれど、最近はもう少し仕事をしてみようかなという気になっている。自分にできることをする、そうするしかないよね。
泉まくらの春にという曲がずっと好き。山戸監督の言葉の紡ぎ方が好き。傷ついた女の子の美しさを綺麗に切り取ってくれるから。ズタボロの状態を肯定してくれるような作品がこの世には溢れていてそういう芸術がないと生きてはいけないような気がしている。
冬の雨音を聴きながら 和泉ゆり @toumei10
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