ルームシェア

三郎

本文

 高校卒業後、友人の提案でルームシェアをすることになった。どちらかに恋人が出来るまでという期限付きで。

 ルームシェアは今年で五年目になる。私も彼女も今のところ出て行く様子はない。


叶恋かなことの生活が快適すぎて一生結婚出来ない気がする」


「私は良いけどね。このままで」


 私の名前は、"叶う恋"と書いてカナコと読む。それが私の名前。だけど、私の恋は叶ったことはない。そもそも私は生まれてこの方、恋をしたことが無い。『いつか恋を知る日が来る』友人達にはそう言われて生きてきたし、私もそのいつかを信じて疑わなかった。

 人はいつか必ず恋をする。ほとんどの人がそんな常識を信じて生きているだろう。私も最近までは信じていた。だけどそうではないと知った。アロマンティックという、他者に対して恋愛感情を抱かないというセクシャリティがあるらしい。

 無理して恋をしなくても良いのだと知ってホッとした。だけど、一緒に暮らす彼女——愛望あみは違う。愛を望むという字の通り、いつも誰かに愛されたいと望んでいる。高校生の頃は彼氏が居たし、彼氏が欲しいと口癖のように言っている。

 私は誰かと恋愛をしたいとは思えない。だけど、一人が好きなわけではない。恋愛はしたくないけれど、パートナーはほしい。彼女との暮らしが死ぬまで続くことを願っている。だから私はいつも祈っている。彼女が誰かに恋してしまわないようにと。この家を出ていく日が来ませんようにと。

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ルームシェア 三郎 @sabu_saburou

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