7

 瑞希をおぶった京牙がふと小さく「ん?」と呟いた。

 少しだけ瑞希の方に首を動かすと、鼻をひくつかせ匂いを嗅いでいる。

「な、なんだよ?」

「ん……あ。お前……。いや、なんでもない」 

しばらく進むと向こうから二人、こちらに気づいて手を振る者がいた。

「おーーい兄貴ぃ! どこ行ってたんだよ、もうすぐ門が閉じるぜ?」

 京牙ほどは大きくないが、それでも瑞希に比べたら大きく、同じようにフードを被った男二人が、近づいてくる。

「おう! 風太、雷太!」

「……んっ、なんだ、そいつどうしたんだ?」

 フードから隠しきれない癖っ毛が見える男が、背中の瑞希に視線を移した。男は肩をすくめた。


「また兄貴、おせっかいだな」

「ほっとけ」


 京牙は背中の瑞希に二人を紹介した。

 髪の毛に癖がある方が雷太、彼よりも背の高い男が風太というらしい。

 合流した男たちの歩幅が上がる。

 恐らく、先ほど呼び止めてきた風太が門が閉まるとか言っていたからだろうか。と京牙の背中で瑞希は思っていた。


 そうこうしていると街の入り口らしき門が見える。

 大きく頑丈そうな鉄の門を瑞希は見上げながら息を呑む。


「京牙さん、閉門時間少し遅れてますよ、ちゃんと守っていただかないと」

「すまねぇ!」


 瑞希はその場で降ろされると、京牙に背中を押されるように街の中に入った。

 門番らしき男達がやはり同じようにフードを付けている。


(遅くなったの、俺のせいかな……?)


 門には物々しい彫刻が施されてあり少し緊張感が増した。

 京牙達が最後だったのだろう、街の中に入ると静かに門が音を立てて閉まり始めた。


「うわぁ……すごい……」

 目の前に広がる光景に瑞希は思わず声を上げた。

 大勢の人があちこちいて、まるでそこは商店街のようだ。

 

 店先に食べ物を売っているお店や、自分と同じくらいの背丈の恐らく子供なのだろう。

 嬉しそうに走り回っている。

 年寄りから子供、女男と様々な人がいた。

 瑞希はいきなりの人と街並みに思わず好奇心が疼いた。店をざっと眺める。

 辺りには夕飯時なのか、どこからかいい匂いが漂っていた。

 店先で大きな鉈を振り下ろし、獣をさばく人もいたり、飲み物を売っているお店もある。


 が、ふと瑞希はそれらの人たちにある共通点を見つけた。

 大人は気づかなかったが、走り回る子供たちの頭に何か二本突起が見えるのだ。

 それと同時に京牙たちもフードを取り、リラックスした様子を見せた。


「今夜は何食おうかなっと」

 京牙の仲間たちもフードを取り払う。


(なんだろう……この違和感……)


 瑞希はまるで体の中から警笛が鳴っているかのように胸がどきどきしてきた。

 自分より背の低い子供が自分の横を数人すり抜ける。

 それと同時にあることを悟り、咄嗟に踵を返した。

 門がもうすぐ閉ざされようとしている。


「ミズキ?! どうした?」


 背後で京牙が叫んでいたような気がした。

 が、無情にも門は瑞希の目の前で閉じてしまった。

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