良い子
夏伐
いいこ
ばあちゃんが言っていた。
「悪い事をすると罰が当たるよ」
僕は何度も言い聞かされていたので、今でも愚直に真面目に生きている。
ばあちゃんはもう何年も前に死んでしまった。
お父さんが『よそで女の人と暮らしていた』時、足がぐちゃぐちゃになって帰って来た。ばあちゃんは言った、天罰だ、と。
犬のワンは、いつもばあちゃんに威嚇して吠えていた。
ある日起きたらワンの舌がちぎれていた。
ばあちゃんは言った。天罰だね、と。
僕は恐ろしくて、悪い子にならないように勉強も運動も頑張った。
お母さんは僕が必死に頑張っているのを見て、とても喜んでいた。
ばあちゃんの葬式の日、お母さんはお腹に穴の開いた人形をタンスから出してばあちゃんの棺に入れた。
それは燃やされてサラサラの灰になった。
ばあちゃんは事故で即死だった。前の日はお母さんと大喧嘩をしてピリピリしていたのが最後の姿だった。
僕はお母さんが人形を出したタンスをこっそり覗いた。
そこは小さな家のようになっていて、足がぐちゃぐちゃになったお父さんの人形、舌が抜けた犬の人形もいる。
「あら、悪い子ね」
お母さんが子供の人形を持って、頭にチクりと針を刺した。
その度に酷い頭痛に襲われる。
「いい子になれるかしら?」
お母さんが大きな口を開けて、声を出さずに笑っていた。
良い子 夏伐 @brs83875an
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます