第7話 虐殺のクリスマス
2年前
12月24日
人は寝ている間でも人を殺せるらしい。嘘だと思うかもしれないが実際にそういう事例があり、ミステリー小説にも使われている。
ただそれを目の当たりにしたことが無いからか俺はそれを信じられない。
フィクションの中での出来事としか思えないのだ。
そう思いながら、大きな屋敷の外で小説を読んでいた。
「やあ、少年。ようこそ私のパーティーへ」
突然声をかけてきた少女。
この少女の所為で俺は参加もしたくないパーティーに参加させられている。
少女の名前はフレデリカ・ユーティア。
綺麗に輝く銀髪に澄んだ赤色の瞳。整った容姿は誰が見ても美少女と感じるだろう。
だが人は見かけにようらない。よく大人たちが口にする言葉だが、実際その通りだと俺は思う。
こんな美少女でも性格はお世辞にも良いとは言えない。
自堕落で悪戯好き。静かにしてればそんな性格はバレる事はないが、もう少しまともになってほしいものだ。
「はぁ。何がようこそだ。無理やり連れて来てるやつにいう言葉じゃないな」
「確かにそうだけど。まあ一応礼儀見たいなものだと思ってくれたらいいよ」
「ふん、お前に礼儀なんてあるんだな」
「あっ、そんな事言うんだ〜。いいのかな? 私の方が一応年上なんだよ」
そう言いながらニヤニヤとこちらを見てくる。
「おい、その顔止めろよ。気持ち悪い」
「ひ、酷い!」
全く、普通にしていれば本当に綺麗なんだがな。
「というか変な悪戯はするなよ。お前主催のパーティーなんだから俺なんかに時間を割くな」
「ちぇ〜。分かったよ。それじゃあまた後でね」
そう言い残し彼女は館の中へ戻っていった。
さてと続きでも読むとしよう。
■■■
それから一時間後、パーティーが館内で始まり、彼女は挨拶回りで忙しくしていた。
「ったく、よそ者が日本に会社を構えるなんてな」
「本当だよ。ああいうやつらがいる所為で俺たちの仕事が減っていくんだよな」
「大人しく祖国で働いてればいいもの」
醜い嫉妬だな。
仕事なんて国籍や見た目なんて関係ない。出来るやつがやればいい。
その方が社会がまともに回る。なんでそんな事もわからないんだ。
「いや〜終わった終わった。どこの国でもあいさつ回りは面倒臭いね」
「そういう礼儀だから仕方ないだろ」
「そんな事言われなくても分かってるよ〜。もう少年はまだまだ子供だな」
「はあ?」
「こういう時はね嘘でも労いの言葉を伝えるんだよ」
「仮にそう言っても大人なら嘘だと分かる。なら率直な意見を言うべきだ」
「ふふっ、そう言う所がまだ子供だね。大人はね上手く建前と本音を使い分けるんだよ。それが出来てない少年はまだまだ子供ってわけ」
正直、彼女が言っている事は理解出来ない。そんな建前で塗り固めた自分は本当の自分ではない。
もしその建前の言葉で大変な事件にでもなれば当然収集がつかなくなる。
そんな事ぐらい彼女は理解しているはずだ。なのに……。
「もういい。俺は帰る」
「何、言ってるの。少年は帰れないよ」
「な、なんでだ!」
「ここにいる人は泊まっていく予定だからね。車は全部帰らせちゃったから」
く、くそ。さっきのニヤニヤした顔はそういう事だったのか。
やられた。
―夜―
パーティーは夜遅くまで続き、酒の入った大人たちは声を大にして話だした。
そんなフロアに嫌気がさし、俺は用意された部屋へと向かった。
電気を点ける暇もなくベットに倒れ込み、そのまま意識を落とした。
ん……。何だか寝苦しいな。
目を開けるとそこには一緒のベットで寝ている彼女の姿が。
「な、な、何してるんだよ!」
思わず声をあげてしまった俺、それに気づいた彼女は身を起こし目を擦りながら平然としている。
いや単純にまだこの状況を理解していないだけかもしれない。
「どうしたの〜? 急に大きな声出して」
「どうしたじゃない! なんでここにいるんだよ」
「ちょっと疲れちゃっって。休みに来たんだ」
「なら自分の部屋で寝ろよ」
「冷たいな〜。別に同じベットで寝てもいいでしょ」
「良いわけないだろ!」
全くこいつは何を考えてるんだ。
「まあそんな事は置いといて。少しいい?」
彼女は改まって俺の前に座り、深呼吸をしだした。
「少年、今日は一緒に来てくれてありがとね」
「……えっ?」
正直俺は彼女が言った事を理解するのに数十秒掛かってしまった。
なんせ、いつもお礼なんて言わず悪戯をしてくる彼女。
そんな彼女の口からお礼の言葉が出てきた。
となれば理解するのに苦しむは当然だ。
「な、なんだよ急に」
「実は一人じゃ心細くてね。本当に少年が居てくれて良かったよ」
普段は見せる悪巧みする笑顔ではない心からの笑顔。その顔に俺はドキッっとしてしまった。
マジで別人じゃねーか。
「そんな少年に最後の頼み。あの子たちの事を任せるね」
「はあ? なんだよ最後の頼みって。どこかに行くのか?」
「当たらずとも遠からずかな」
「なんだよ、それ」
「ごめんね。でもこんな事を頼めるのは少年しかいないの」
「……あの二人は何て」
「私の決めた事だから好きにすれば。だって」
「そうか。どこに行くか知らねーけど必ず帰って来いよ。あの二人のために」
「……うん」
そう言って彼女は部屋を出ていった。
今思えばあの時、俺はあいつを止めるべきだった。
普段とは違う姿に、あの言動。
あの時間に戻れるなら俺は……。
■■■
肌寒さと顔に水滴が当たる感触で俺は目を覚ました。
うっすらと目を開けるとそこはでベットでは無く屋敷の外だった。
なんで、外に……。
そう思い体を動かそうとすると何か金属の様な物が落ちる音がした。
落ちた物を見るとそれは血が付いたナイフだった。
更にその目の前には。
「な、なんで……」
彼女が、フレデリカ・ユーティアが無惨にも血を流して倒れていた。
「お、おい! しっかりしろ!」
急いで彼女を抱えて呼びかける
しかし彼女が口を開け、声を出す事は無かった。
「誰が、こんな事を……」
受け止められない現実の中、更なる追い討ちをかけるかの様に複数の人たちが俺に近づいてきた。
「通報したのはお前か?」
女性がそう尋ねてくる。
「……」
「ふん。なら質問を変えよう。そこの女を殺したのはお前か?」
「ふざけるな。俺が殺すわけー」
「では、何故お前の服は血で汚れているんだ?」
「はあ?」
その言葉を聞いて自分の服を見る。
女の言う通り、服は血で汚れていた。まるで返り血の様に。
「取り敢えず、話を聞かせてもらうぞ」
すると空から雨が降り始める。
「チッ。証拠が流れるぞ。お前ら出来るだけ確保しろ」
後ろで待機してた人たちはか女の声に動かされ、証拠を探し始める。
「さあ、行くぞ。立て」
ここからの事はあまり覚えていない。
俺が殺したのかもしれないと言う事実と、目の前で最愛の人を亡くしたというショックの所為だろう。
そして気がついた時には屋敷での生き残りは俺一人と言う事実が話された瞬間だった。
ロリコン探偵♡ご主人様♡ 穂志上ケイ @hoshigamikei
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