第8話 安達太良山、遠きにありて思うもの。

テレビあさひは、見事とV字回復した視聴率を更に10%に載せる為、

ドラマCMやバラエティ番組に出演者を無理矢理ブッキングし番宣させた。

その甲斐があって視聴率は8話は過去最高の15.7%を記録した。

しかしそれが仇となってしまった。


高橋ユウトは、当時コージさんからの原作を読んだ時、即座にダメだと思ったが

締切の時間が無い為、どうせ差し戻されると思い一旦制作サイドに提出し、

その間にコージさんに修正させようと目論んだ。しかし、何とそのまま採用されて

しまった。当時の制作サイドは頼みの綱だったヒロセカンナちゃんがコロナで

降板になったことと元々プランH(敗戦処理)だったこともあり、たいしたチェックもしていなかった。



みかんは翌日店長に河原に呼び出され、新しい武器をテストすることになった。

昨日のことがあり早く行動を起こす必要があった。新しい武器はフリスクのケースに入っており、店長はみかんに早速スマホからコードを入力する様に指示した。


......


全く反応はなかった。店長は解除コードをみかんに入力させた後、

フリスクのケースを確認した。

『あれっ、ピンクのフリスクが入っていたはずだけど知らない?』

『えっ、わかんないけど』

武器とフリスクを区別する為、着色していた。



同じ頃、ターゲットは右手にチュールを持ち、悪人には似ても似つかない笑顔で

子猫を膝の上に乗せ、『ショコラちゃん、チュールでちゅよ』と赤ちゃん言葉で

チュールを近づけた。その瞬間、子猫が爆発した。血塗れになったターゲットは

『うわぁーーー』と叫んだ。その映像が堂々と放送された。


当然、テレビあさひには苦情の電話が殺到し、また視聴率が良かった為、

反響が大きく他局でも取り上げられた。ドラマは即打切りとなった。


その1ヶ月後、高橋ユウトはソニーバッテリー福島工場に移動となった。


高橋ユウトは、昼休みが終わる前に自席に戻るとメモが貼ってあった。

SMEの星野シニアマネージャーから折り返し電話が欲しいとの事だった。

ユウトはすぐに折り返した。


『高橋くん、久しぶりだねえ。急で申し訳ないんだが来月、

SMEに戻って来てくれ。』


『えっ、どうしてですか?ドラマの件、僕飛ばされたんじゃなかったんですか。』


『何、飛ばされたって?そっちに行ったのはソニーグループの若手社員向け人事交流で行っただけだぞ。本来は1年なんだがプロジェクトがあって急遽戻ってもらうことになった、勿論人事には了承済みだ。』


『プロジェクトって何ですか?』


『女スナイパーの映画化が決まった。実はあの後

ヒロセカンナちゃんの事務所から、本人があの役を是非やりたいと

逆オファーがあったんだよ。それと実は評価も賛否があって否の人はほとんどが

猫好きの方でだったけど、ドラマファンからは賛の方が多くて、

予想出来ないストーリー展開とか、監督が鬼才とかジワジワ評判がたち、ソニーとしても地上波だと問題があるが映画ならいいだろうとゴーサインが出た。

だから待ってるからな、よろしく。』


電話を切った後、ユウトは気持ちを落ち着かせる為、部屋を出た。

するとシロー先輩からLINEが入った。


『ユウト、仕事溜まってるから早よ帰ってこいよ、コージさんの担当は

お前しかいないからな(^.^)』


ユウトは安達太良山を見つめながら、

『引っ越し面倒くさいなぁ。』とつぶやいた。

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シン・女スナイパーは派遣社員💛 夕哉圭シロー @yuyakeshirou

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