第3話
「笑われるかも知れませんが、私はそれでも幸せでした……」
「え? ごめん……聞こえなかった。何か言いましたか?」
「いえ、いいんですよ。私は遠くへ行きますが、一目でも会いたかったな」
ぼくは急に居酒屋全体が仄暖かくなるのを肌で感じた。
夕方で陽が沈んでいると言うのに淡い光がカウンター席を照らす。
そう、彼女を中心に。
ああ、この人は死んでいるんだなとぼくは思った。
もう、この世にはいない。
そう、名前は佐藤 恵。
ぼくの最初で最後の愛人だった人だ。
最後の別れの時に、ぼくと娘のために、二人でクマのぬいぐるみを買おうと言ってたっけ。
「さあ、一緒にいきましょう。娘に会いに……」
ギフト 主道 学 @etoo
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★18 エッセイ・ノンフィクション 連載中 104話
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