終章

 人に優しくすれば、必ず返ってくると言われた。

 私は誰よりも優しい。

 誰にでも優しく話しかける。誰にでも共感する。

 人の話は笑顔で聞く。

 ありがとう、をたくさん言って、おなじ数のごめんなさいを言った。

 悪口は絶対に言わない。

 だって私は馬鹿じゃないから。

 誰からもいい人に思われるには、優しいと思われるには、最後に一番いい思いをするには、うまく振舞うことが求められるから。

 誰に嫌われたって構わない。

 何故なら、私を悪く言う方が嫌われるから。

 周りからどう見られるかも考えられない人に用はない。私はただ何も言わず可哀そうな人を見てればいいだけ。

 自然に消えていなくなる。

 

 私は誰より優しく、誰より賢い。

 それを誰にも言わないのだから。

 馬鹿な人たちにありったけの軽蔑をこめて。

 自分の黒い黒い気持ちと同じくらい黒い服を見つめた。

 死にたい人を、死なさせてあげたい。

 でも自分の手は汚したくない。

 

私も、眠りから覚めることはない。

 彼女たちと、同じように。

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彼女たち 山崎涼音 @Suzune__

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