第7話 漆


「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」 

 謝りながら後退り、すぐ壁にぶつかって動けなくなった。

 外したか。

 手応えはあったのに。

「本当に、もうちょっと、思慮深くなろうよ」

 軽蔑したように聞こえる声に、ただただ震える。

「あなたは、ボクが何か知っていて、こんなことをしたの?」

 オレは必死に首を横に振った。

「だろうねぇ」 

 溜息交じりに呟いた。

「…………ごめんなさい、オヤスミンさんを撃たないと……帰れないって言われて…………麻酔銃だから、死なないからって…………」

 オヤスミンの迫力に押されて、すべて白状する。

「嗚呼。ボク死なないから、大人しくさせるしかないんだよ」

「何なんですか……あなたは?」

 フッと鼻で笑われた気がした。

「話し合えば、言ってくれれば、そんなことしなくても帰れる方法を、一緒に見つけてあげられたかもしれないのに」

「えっ」

「もう、遅いけど」 

 ぺっと口の中から、弾を手に吐き出した。

 スカートの中から、オレと同じ銃を取り出し、弾を込める。

「そ、それって…………」

「この前来た、迷子の置き土産」

「その人、どうなったんですか!」

 混乱して声が裏返る。

 今度は、しっかり鼻で笑われた。

「すぐ教えてもらえるよ」

 銃口をこっちに向けてきた。

「待って、ごめんなさい、話し合いますから!」

 両手を上げて叫ぶ。

「ごめんね。ボク、騙し討ちとか、隙を突くとか、大嫌いなの」

「ひっ、やめて」

「永遠に、おやすみ」

 胸に強い衝撃を受けて……そして、意識が遠のいた……。



「あららっ、鮫島さめじまくんも戻って来れなかったねぇ」

「やっぱり、『睡魔すいま』って強いねぇ」

「もうちょっと、頑張れるかと思ったのに、残念だったねぇ」

「実験体4号は、どれにする?」

 宇宙マッチングサイトを、また検索しだした。



【 亀・狸・鮫のつく名前 従順で勤勉な宇宙人 】


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オヤスミン 草凪美汐. @mykmyk

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