第7話 お局小説を書いたり

「ほら、お、そ、い! 早くその書類渡しなさいよ。いつまでやってんの!」

 マサコは、私の机の横に陣取り、手伝うわけでもなく、急かしてくる。

「そういえば、明日のサンカク企画さんに出す資料、サンカク企画さんは先方に十六日に出すって言ってたから。おたよりの吉日も十六日にして渡してあげて」

「え、あ、待ってください、メモします」

 私はメモ紙を探した。あれ、机の上のメモ、無い、どこだ。

 マサコが鼻で笑う気配がした。

「これ?」

 メモ紙はマサコが持っていた。

「覚えなさいよ」

「メモしたいです」

「記憶力がないの?」

「ないです、メモしたいです」

 マサコはくつくつと笑って、私にメモ紙を差し出した。

「そういえば明後日の株式会社ロッカッケイのチラシね、『電話番号を入れといてほしい』って言ってたから。ゼロサンの……」

「まって、待ってください」

 メモ紙に慌てて記載しようとしたとたん、

「いった!」

 マサコが悲鳴を上げた。私のペン先が、メモ紙を持つマサコの指を刺してしまっていた。ボールペンで線がはっきりと書かれた指。

「ご、ごめんなさい……!」

「ちょっと、裏に来てもらおうか」

 更衣室に呼び出された私は、ウェットティッシュでマサコの指を拭かされる。

「そうじゃない」

 マサコは、潤んだ視線を向けてきた。

「突然刺すから痛いわけ。あんたが使うのは、これよ」

 ランチボックスセットの中から、マサコは爪楊枝を取り出した。

「これで、触るか触らないかギリギリの強さで、私の全身をなぞりなさい」


 ターン!

 エンターキーを押して、私は「公開」ボタンを押した。

 今日もお局の小林まどかは意地悪だった。メモもさせないとか、どういう嫌がらせだよ! 本当は意地悪してほしい変態キャラとして確立してやる。ああ小林のくそったれ。二日連続でお局小説更新だ!


 まどか、マサコ。「ま」しか合っていないが、一文字だけ合わせてやったのは、本気の復讐心のなせる業だ。

 爪楊枝で気持ちよくもだえればいいよ!

 

 私は今日も、百合エロ小説を書く。プリン小説のほうは二日連続でお休みだ……。芽生がプリンを作っていないので。そんな日もある。

 昨日の芽生は、少し様子がおかしかった。ちょっと心配だから、あまり、復讐心はわかない。どうしたんだろう、気になってはいるが、芽生は私が心配を口にするのを嫌がる。だから聞かない。

 

 聞かないのって、優しさなのかな。

 本当は、嫌がられても、聞いた方がいいこともあるんじゃないのかな。

 でも、芽生は私が心配すると、たいてい、「あんたに心配されたくない」と怒るのだ。マウンティング女子のあつかいは難しい。


 でも、そろそろご飯が炊ける時間だから、鍋を温めて、芽生をよぼうか。鍋の温かさだけしか、芽生は受け取ってくれなさそうだから。

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