最終話 スクールバッグに祝福を秘めて
「冴衣ちゃん!」
「お待たせ、環。今日暑くない? コート要らなかったかも」
「うそっ何どうしたの? たった五分の遅刻で済むなんて、新記録……」
「私だって毎回いつも遅刻してるわけじゃないんだけど……ところで、間に合いそうなの?」
「余裕余裕。というか、冴衣ちゃんが遅れる前提で予定組んでたから、かなりの余裕。どうしよう」
「ひっぱたいていい?」
「理不尽」
「それにしても、懐かしい。いつ以来だっけ」
「冴衣ちゃんはあの文化祭からずっと会ってないもんね」
「そりゃ、学校違う先輩だし。あなたがいつもいつも話すから、無駄に近況だけは知ってるのだけど」
「だってさ、一人で受け止めるには重たすぎるよ。私、甘いのそんなに得意じゃないんだって」
「それで思い出した。この前ネットで見たパンケーキ食べたくて」
「なんて店? 甘いの以外があればいいよ」
「そうそう、それで聞いてよ。この前、先輩に相談されたんだけどさ、お泊まりの誘いをどうやって恋人を傷つけずにかわすか」
「なんでよ……もうとっくに付き合って数か月経つでしょ。かわす必要ある?」
「それが、先輩が『ちゃんと親御さんの許可とってから!』って言い張って。そしたたら彼女さん、『えっ、ママたちにこれから娘さんとセックスしますって言うの?』って返してきたらしくて、先輩が頭抱えてた」
「幸せそうじゃない、確かにそりゃお腹いっぱいになるわ」
「あ、鍵出すから待って。ここが私たちの部室」
「なにここ、お茶会会場? 私物だらけじゃない。気ままにやってんのね」
「ウチ校則ゆるゆるなので」
「あーあ、たまには私も逢杏に通おうかな」
「制服貸してあげようか?」
「ホント?」
「食い気味に来ないで冗談です」
「で、何から始める?」
「飾り付けして、プレゼント仕込んで、そしたらケーキ買いに行きますか!」
「「副会長、お疲れ様です!」」
「あ、お疲れ様。今日は早めに出るね」
「はーい。やけにソワソワしてますね? 今日、何かあるんですか?」
「えっと、誕生日のサプライズを用意してて」
「えー、どんなですかー?」
「いやいや、引き止めちゃダメでしょ。副会長、今後じっくり聞かせてくださいね」
「あはは、ありがと」
(放課後は環と有原ちゃんとお祝いして、その後は二人で……よし)
(ふふ、早く喜ぶ顔が見たいな。今日も大好きだよ)
「あー、会長! ちょっと予算のことでわからないことがあるんですけどっ!」
「え? ごめんね、今日は私、用事があって……明日でもいいかな?」
「そこをすみません! 五時には終わりますから、どうしてもここだけお願いします……!」
「えっ、それ別に今日じゃなくても……あいたっ!?」
(もう、案の定聞いてなかったでしょ! 会長を五時までなんとか引き留めてくれって副会長のお願いを!)
(え? だって副会長はさっき帰っ……いたたた、ほっぺつねるのやめてえ)
(いいから協力しなさい、にぶちん!)
(ひゃああい……?)
(うーん、早く蓮ちゃんのところに行きたかったんだけどなあ)
(でも、今日はずっと……ううん、明日のお休みも一緒にいれるもんね。ふふっ、楽しみだな)
(蓮ちゃん、今日も大好きだよ!)
「あ、先輩、彼女さん来ましたよ。それじゃいきますよ、せーのっ!!」
『おめでとうございますっ!!』
【完】
女子校の後輩に私が生徒会長に恋していることを知られてしまった話 可惜夜アタ @atalayoata
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