お姫様 4
焼肉を食べ終えた市倉は、優しいおじさんと共に光り輝く街へと消える。
そこで、市倉は洪水のように押し寄せる初めての体験をいくつも受けた。
「それじゃ、おじさんは先に行くから。疲れていたら寝ていると良いよ」
ふわふわのベッドで市倉は寝る。三万円という大金を握りしめて。
朝だ、お世辞にもいい天気とは言えない曇り空。
帰りたくない。市倉は街なかをフラフラと歩く。
家の近くに居たら見つかるんじゃないのかと思い、三万円を使い、初めて切符を買って大きな街へ向かう。
「すごい……」
大きな街へ来た市倉の一言目はそれだった。テレビでしか見たことがない、そびえ立つ建物と人々。
自分のみすぼらしい格好が恥ずかしくなり、せっかく街に来たのに大通りは避けて路地裏を歩く。
これからどうしようかと考え、悩む。建物に寄りかかって地面に座り込んだ。
どれぐらいそうしていたか、分からないが。突然声を掛けられる。
「ねー、キミも家出ー」
問いかけられて、市倉はハッとして前を向いた。ピンクと黒の服を着た、黒髪ツーサイドアップの可愛い女の子がそこには居た。
「あっ、えっとその……」
「訳ありっしょ」
ニコリと笑う少女の笑顔が眩しい。
「は、はい」
「ここ危ないから、付いてきて」
手を差し伸べられて、市倉は思わず手を握る。
支えられて立ち上がるが、少女は手を離してくれない。
「一緒に行こ。私は『アカリ』」
「アカリさん……」
「さんなんて要らない要らない」
そう言ってアカリはケラケラと笑っていた。
「キミは」
「私は『市倉
「メイちゃんねー。オッケー。敬語抜きでいいよー、ウチ等そうしてっから」
「えっ、あっ、うん」
裏路地を抜けると眩しい光が眼の前にどんどん広がる。
「ようこそ、チクハカプラザ前へ!」
そこは相変わらず人が多いが、なんというか自分と同い年ぐらいの子が多い。
学校はどうしたのだろうかと少し考える。
「アカリー、その子だれ」
金髪の少女が近寄ってきて話しかけてきた。市倉は思わず身を縮こませる。
「メイちゃん。さっきそこで拾ってきたの」
「子猫みたいじゃん、オモロ」
何が起こっているのか分からない市倉はもじもじとしているだけだった。
「よろしく、メイちゃん。私は『ルー』」
日本人の名前らしくない単語に、市倉は戸惑った。
「あー、私さ、親嫌いだから名前捨てたんだよね」
ルーと名乗る少女は笑いながら言っていた。
そして、アカリが説明を入れてくれる。
「それで、昔見ていたアニメから名前取ったんだって、オモロいっしょ」
「そうなんだ……」
未だに暗い顔をする市倉を見てアカリは肩に手を回す。
「ウチ等もう友達だから、そんな顔しないで」
「えっ、友達」
キョトンとする市倉にルーは笑顔で話す。
「そうそう。メイちゃんも家で何かあったんでしょ。それなら仲間だよ」
サハツキ -死への案内人- まっど↑きみはる @madkimiharu
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