第2話

10/10 夜


「アティから電話だ…」


 暇を持て余していた頃、アティから着信が入る


『近くで任務に手こずってる子が居るみたいだから行ってみたら?』


 といった内容で10秒も経たず切られてしまった


「今日は助けてもらったし、俺も行ってみるか。」


 

 新人の俺が助けに行ってまともに役に立てる気はしないが、今はどんなことがあるか分からないし戦いに慣れておきたい。


……………………………………………………………………


「大丈夫ですか?」


 木の根元に転がっている男に声をかける


「あんた、助けに来てくれたのか?」


 男が敵の場所を教えてくれ、俺は急いで走る

 男によると、先に戦っている仲間が居るという。


「…は?」


 [敵]という言葉に違和感を覚えるべきだった。

 まさか相手が人間だったとは。


「あなた、何ボーッとしてるの?」


 スタイルのいい女が話しかけきた


「助けを呼んでる人がいたので見に来たんですけど…」

「あら優しい子ね、殺してあげる!」


 女の目と声色が豹変し、左手に握られた真っ黒な刃先の曲がったナイフが高速で迫ってくる

「うわっ!」

「今の距離で避けるなんて、やるじゃない」

 不敵な笑みを浮かべる女が物欲しそうに睨みつけてくる


「たぁぁぁ!」

 知らない女子高生が濡れた水色の剣で女を切りつける


「あなたの水は厄介なのよね。」


 女はため息を着きながら呟く


「君、戦えるの?」

「えっと、一応」


 戦えることには戦える。だが、相手は人間だ。

 女子高生が俺の思考を読み取ったのか、説得してくる


「相手は敵よ!躊躇していればやられる」


 かっこいいセリフに感化されとりあえずは立ち上がるが、人間相手に戦うなんて不良だけにしてもらいたい。


「あら?やる気になったのかしら?」

「戦いたくはないんですが…」


 女が麗しい目でこっちを見ながら、小走りだが高速で近ずいてくる


「退って!」


 女子高生が前に出て水の障壁を貼る


「ふーん、結構幅が利くのねその水」


 女が軽く水の壁を切り裂き、ナイフを女子高生に振りかざす


「…っ!!」


 その途端に銃声が聴こえ、女の手からナイフが飛ぶ。


「大丈夫か?!」


 さっき倒れていた男の人だ


「…そろそろ時間ね。帰りましょう。」


 女が仲間を引き連れ背中を向ける


「ありがとう石橋さん」

「ああ、あんたも来てくれてありがとう。助かっ…」


 石橋さんが急に倒れる


「へへっ1人くらいはやっとかないと怒られちまうからな!」


 黒ずくめの忍者のような格好の男が木を伝って逃げていく

 女子高生は焦って追いかけようとする


「今行くと君も殺される!」

「うるさい!」


 <力>を発動し無理やり制止させると、そのうちこの子の仲間が来て説得してくれた。


「ありがとう、君が居ないとヒナちゃんも危なかったよ。」


 仲間の1人が感謝を述べてくるが、何しろ1人死んでしまっている。


「よし皆帰ろう。」


 全員が集合し、その場の誰かの能力で転送されて行った


「帰るか…」


 昨日と今日で色々ありすぎた

 昨日はいきなり超能力者になって、不良を倒して、今日は朝から怪物と戦って、続けて人間とも戦うことになるとは…


「あ、そうだ。」


 ふと端末を点灯させると、勝手にLINEの友達が増えていた


【アティ・ルナトリエ(NO.7)】【鈴木陽太(すずきようた)】【四ノ宮穂(しのみやひな)】


 恐らく、オブザーバー側が仲間と判定すれば勝手に登録されるのだろう




10/11 普通の一日


 昨晩人が目の前で死んだというのに、不思議と恐怖などは感じない。

 むしろ慣れているような感じがする…


 端末を点灯させると1つの通知があった


 アティ 【次の任務】


『1週間以内に十ノ神依加(とのかみよりか)の確保と保護。昨晩君が戦った強い女だよん。』


「は?」


 あの速くて強い女を俺1人で確保?


「はぁ、とりあえず学校行くか…」


 家を出ると、その先にヨータが待っていた


「よっ!」


 ヨータと登校途中、疑問や次の任務の心配な点を質問してみたりしたが、任務に失敗したらどうなるのかを聞いてみようとしたが、嫌な感じがしたので結局聞くことはなかった。


「お前らが2人で登校してくるの珍しいな!」

「あれ?2人方向逆じゃなかったっけ?」


 猪田と日比谷だ


「たまたま門の前で会ったんだよ」


 その日俺たちは三限で抜け、ヨータの偵察任務とやらに同行した


「任務って日常生活にまで影響してくんのかよ」

「仕方ないさ、機関に貰った能力なんだから。」

「望んでなかった奴も居るかもしれないのに、勝手だな。」


 何気ない話をしていると偵察目標地点の到着した


「あそこだ」


 シャッターが降りている大きな倉庫だ


「偵察っていっても何するんだよ?」

「今度の祭典奪還任務の為だ」

「祭典?」

「敵の機関の悪趣味な遊びさ。こっちの機関の能力者を捕え、殺し合わせる祭りらしい」


 なんて悪趣味なんだ、同じ人間なのに


「見えるか?あそこにいる奴ら」


 ヨータが小さな声で囁きながら指した先を見ると、倉庫の上の通路に一定の幅を開き合計17程度が監視を、下は別の4人が集まって話している


「あそこに居る下の4人は能力者だ。上の監視の中にも2人いる。」

「なんでそんなこと分かるんだ?」


 ヨータが何かを見透かしたかのようにスラスラと話すので、つい聞いてみる


「<識別(アイデンティフィケイト)>、大した能力じゃないがおかげで俺は偵察向きなんだよ。」


(つまりは便利屋さんて事か。)


 下の4人が話し終わったのだろう、見張り1人を残し解散してしまった頃ヨータが1人で侵入する。

 その間俺は見張りだ。


「おい、お前!そこで何してる?!」


 速攻でヨータが見つかったが、なんやかんや上手く誤魔化して逃げたようだ。


「あっぶねぇー」

「やばそうだったら飛び込んでたとこだったよ。」


 冗談混じりにそんな会話をしていると、急にヨータの顔色が変わる


「<運命からの囁き(フェイトウィスパー)>が発動した、直ぐにここを出るぞ。」


 ヨータがうんざりしたように言う

 最近発動する機会が多いからうんざりしているのだろう。


「そのー、あんまり無茶するなよ?」

「無茶なんかしてねーよ。ただ、この能力が特別嫌な感じなんだ。」


 落ち着ける場所に着き、ヨータが端末を取り出し担当を呼ぶ


「お、お疲れ様です…」


 気の弱そうな女の子だ


「任務終わったよ」


 女の子や子供に口調が優しくなるのはヨータのあるあるだ


「ご苦労様です、また夜に来ますね。」

「あぁ、ありがとう。」


 ヨータの担当が消え、ふと出た疑問を質問する


「ヨータって、報酬とか直接あの子に来てもらってるのか?」

「あの子がそうしたいって言ってきたんだよ。変なこと気にすんな。」

「ふーん」


 本当に何気ない会話だが、前にも聞いたような気がする


「とりあえず帰るか。昼休みには戻れるだろう。」


…………………………………………………………………


「起きろー北上」


 5限の途中で寝てしまっていたらしい。

 だいぶ長い夢を見ていたような気もするが起こされた衝撃で、全て忘れてしまった。


「大丈夫?ソラくん?」

「あれ?」


 何故か教室にアティがいる


「お前なんで居るんだ?」

「どうせ夜にまた行くし、このまま一緒に行っちゃった方が楽かなって。」


 授業中にも関わらず、クラスの奴らが俺たちの噂をしている。

 それも何故か、アティが初めからいたかのような話し方をしている。


「お前、全員洗脳でもしたのか?」

「<事実改変(ヘイトザパスト)>」

「は?」

「事実を書き換えて、私が元々いた事にしたのよ」


 よく分からないことを言っている


「まあ確かに、ほとんど洗脳みたいなものよ。」


 アティはサラッと言っているが、結構やばいことをしている。


…………………………………………………


「さて、今日貴方が足を突っ込んだ任務についてよ」


 勝手に部屋に入ってきたかと思えば、勝手に話し始めた


「あの偵察任務に関わったからには、貴方も【祭典・奪還任務】に加わって貰うことにするわ」

「もう面倒くさそうな感じがするんだけど…」

「任務の詳細は、適当にヨータくんにでも聞いといて。ところで貴方の仕事だけど…」


「貴方のメインミッションは、周りの仲間が死なないように盾になることよ。貴方なら死んでも蘇るでしょう?」


 その瞬間、視点が宙を舞う

 カメラを上に放り投げたかのような…


「貴方には死ぬ事に慣れてもらわないと行けない。意識が戻ったらここに帰ってきて。」


………………………………………………


「おかえり」

「俺…死んだのか?」

「今は生きてるでしょ?まあ、死んだ後の流れが分かれば、今日は十分よ。」


 特に死んだ実感は無かった。それに、気づいたらまたここにいただけで、自分で復活したなんて感じは無かった。


(ていうか今どうやって死んだんだ?)


「私の<管理人(オブザーバー)>を介して、<切断(セパレート)>を使ったの。」

「どうやって能力増やすんだ?ヨータもなんか<#識別(アイデンティフィケイト)>っての使ってたし。」


 ふと出た疑問を投げかける


「彼の<識別(アイデンティフィケイト)>は、彼の適正だからね。」


 そう言えばヨータもなんか能力の適性がどうとか言っていた気がする


「俺の適性はどんな感じだ?」

「任務の報酬使えば?」


 そう言われ端末を付ける


      『担当にお願いできる券』


(なんかヤバそうなのがある)


 俺は自分の能力の適性とかを知れるようにその券を使おうとした時に1つ思い浮かんでしまう


「アティを俺のものに出来たりする?」


 つい思考よりも発言が先走ってしまった


「知らない。そんなの私個人で決められないし、やってみれば?多分受理不可で返されると思うけど。」


「じゃあそれで」


……………………………………………………


「もしこれで本当にできるとして、やっちゃっていいわけ?」

「別にいいよ。上に帰っても暇だし。」


 “上”というのは、普段アティがいる場所だろう


「じゃあ、押すぞ…」


 『決定』


「いけちゃったよ!」


 驚き叫んでしまう


「じゃあ、私はソラの所有物になっちゃったので、どうぞお好きに。」


 急に機械的になったアティに対し妙な違和感を覚える。


(こいつ本当にさっき俺を殺したのか?)


「じゃあ、これから家事とか宜しく。」


 その日の夜、アティの寝床がないことに気づきドキッとしたのだが…


「私の寝る場所は?」

「…一緒に寝るか?」


 アティが部屋の床に目を向け手をかざす


「ここ貰っていい?」


 言葉の意味がよく分からないがとりあえず返事する


「えと、いいけど…」


 すきま風のような音がしたと同時に、手をかざしていた場所にベッドが現れる

 それも、俺のより大きいものが


(なんだ今の?まあ、疑問は明日でいいか。)




10/12


「早く起きないと遅刻しちゃうよ」

「…ぅん?」

「起きて!」

「ごふっ!!」


 体が跳ね飛んで目覚める


「朝イチからダメージ喰らう日は多分いい1日じゃないだろうな…」

「くだらないこと言ってないで、もうすぐ遅刻圏内だよ?」

「それって俺の能力考慮してる?」


 人に貰った能力で調子に乗っている


「もちろん考慮してる上で5分よ。」

「…え?なんか瞬間移動的なの無いですか?」

「あるけど、その場合1人で行かせてもらうわ」


 手際のいいことに、荷物と制服が目の前に用意されてある

 それから、アティが昨日出したベッドが無くなっている


「私のベッドは部屋から転送させてきたものだから、ただ元の位置に戻しただけよ。」


  思考を読まれ疑問に先回りされる


「じゃ、私先に行くから」


 アティはそのまま空を飛びながら次第に透明化し、行ってしまった


「ズルくない?」


普段の通学時間より遅いせいか、全く人が居ない道を<力>で飛ぶように走る


「着地痛すぎるだろこれ!」


 脚力は強化できても、体感やバネの力を強化するのに間に合わない


「はぁ、はぁ、着いた…」


「さすが…通常能力にしては使い勝手良すぎるわね…」


 クラスに着くや否や猪田と日比谷が話しかけてくる


「お!ギリギリだな!ソラ」

「おはよう」


「お前なんで担当と一緒に来てんの?昨日から居たけど、やっぱりおかしいよな?」


 俺はヨータに事情を説明した


「ふーん、お前めっちゃキモイ命令したんだな」

「俺も話してて自分でそう思ったよ。ところでヨータはどう使ったんだ?」


 興味本位で聞いてみる


「俺はその券担当にあげたよ。担当が俺に対して使ったんだ」


 そんなことできるのか


「あのチケット、将来有望な能力者にだけ配られるんだよ。まず担当が着くこと自体、ひと握りの能力者にしかないからな。」


 続けて話す


「俺の担当すごい気弱な子なんだよ。」


 ヨータが話終わると、アティが横に飛ぶ


「私もヨータくんみたいな優しい人担当したかったなぁ~」


 アティがもの欲しげに続ける


「こいつギンギンな目で命令してきたのぉ酷くない?」

「は?」


 別にそんなつもりは無かった、ただ出来るのか試しただけで…


「お前…マジかよ…」


 普通に引かれてる


「お前からちゃんと説明しなおせよ。」

「別に間違ってないじゃん。」


  わちゃわちゃとやり取りをしている頃、担任が教室に入ってきて授業が始まる


「なんか退屈ね。まともにこっちに居るの初めてだから楽しみ方わかんな~い」


 一限の終わりと同時にアティに話しかけられる


「授業は楽しむもんじゃなくて勉強する時間なんだよ。まあ、退屈ではあるけど。」

「もう今から外行かない?」

「でも、最近授業サボり気味なんだよなぁ。」

「私が何とかしとくから行こうよ」


 なんだか美味しい話に聞こえてしまい話に乗る。堂々と学校を出るとアティがまた口を開く


「私お腹空いた」


 目を合わせ#縋ってくるアティに返す


「なんか食べたいもんある?」

「自分でリードするのが男でしょー?」

「めんどくさいな」


 いつの間にか距離感が近すぎる

 初めて会った日なんてロボットの様な受け答えだったのに、今となってはただの女子高生だ


(制服のままだとまずいか?本来なら学校の時間だし…)

「着替えとこっか。」


 アティがそう言うと、気づけば2人とも私服になっていた

 何の能力なのか聞こうとすると、先読みしてアティが答えてくれた


「<等価交換(アポーツ)>、一般的に同価値だとされる物同士を入れ替えられる能力。ちょっと使いにくいんだけどね。」


(使いにくい?手元に無いものを出せるだけで十分じゃないのか?)


「何が不便って、交換先の物質と入れ替えなのが問題なのよ。」

「なるほど。」


 適当に話しながらアティの接待をしているだけだったが、振り回されながらも案外楽しかったのかもしれない。

 この子もすぐ俺を殺したりするけど、見た目は普通の女の子だ。

 そのまま暗くなるまで遊んで帰った


「シャワー浴びていい?」

「どうぞ」


 まさか俺の部屋で女の子がシャワーを浴びる事があるとは思わなかったが、これからは普通になるのだろうか。


「覗けないようにはするけど、変なこと考えるんじゃないわよ。」

「別に覗かねぇよ…」


(てか命令すれば関係ないんじゃ…)


「あがったわ。」


 アティが風呂場に行き数秒で戻ってきた


(やめておこう…)


         その日の晩


「緩和するか…」

「なにが?」


 眠そうにアティが応える


「所有物はやり過ぎかなって」

「じゃあ、どうなるの?」

「…パートナー的な?」

「じゃあそれで。」


 眠いのかすごく大人しい 


「おやすみ」



  10/12  展開


「そういえば、任務の女ってどこにいるんだ?」


 アティの作った朝食を食べながら聞く


「意外と近くに居るっぽいけど。」

「ぽい?」

「なんか、あんたの担当になった日からサポーティングってのができるようになったんだけど、まだ慣れてないからよく分かんないのよね。」

「解説ご苦労。まあどうせ暇だし行ってみるか。」


 朝食を食べ終え、わざわざ電車で向かう


「能力使っちゃダメだったのか?」

「もし急な先頭になった時に少しでも温存しておきたいじゃない?」

「アティが戦いに参加してくれるなら余裕だろ?」

「私先頭は専門外だから期待されても困るけど」


(人の首を容易く跳ね飛ばしてる癖に…)


「まだ引きずってるの?」

「別に気にしてねえよ。それより、十ノ神って女は何してる人なんだ?」

「十ノ神 依加(とのかみよりか)は看護師で、今頃どっかの病院にでも居るんじゃない?」

「能力者の看護師か…とりあえず会いに行ってみるか。」


…………………………………


「あっつぅ~い…」


 アティが嘆く


「なんか冷たいの飲みたい」

「自販機でなんか買うか?」

「何それ」


 アティに自販機の使い方を教えていると、不意に声が聞こえてくる


    “動け”


「え?」

「どうかした?」


 <力>でアティを連れ横に飛ぶと、さっきまでたっていた場所に黒いモヤが一瞬かかり、消える


「呪い系の能力ね」

「俺誰かに呪われるようなことしたか?」

「知らない。呪い系の能力は連続して撃てないはずだからもう無視でいいわよ。」


(そういえば、なんで分かったんだ?)


「<運命からの囁き(フェイトウィスパー)>、ヨータくんのやつね。」

「俺にも発現したのか…蘇るとしても発動するのか?」

「この2つの併用は初耳だけど、多分蘇る上で過去に声を送るんじゃない?」

「死ぬだけ得ってことか…なんか腑に落ちないな。」


 そのまま何事も無かったように病院へ向かう


「ここに十ノ神 依加さんて看護師さんは居ますか?」


 アティが洗脳して住所を聞き出したおかげで直ぐに病院を出た。


「また電車か…」

「仕方ないでしょ、相手の能力もよく把握してないんだから。」


……………………………………………


 十ノ神の家の前へ着いた頃には既に昼を回っていた


(チャイム押してみるか…?)


「押してどうするのよ」


(確かに、だが<運命からの囁き(フェイトウィスパー)>で確認しながらなら…)


「ソラが分かっても私は死んだら復活しないのよ」

「どうせ死なないだろ?」


 一々心を読んでくるアティが弱がった事を言ってくる


「まあいいわ、押してみましょう。」


 言われるがままチャイムを押してみるが反応がない。しばらく待ってもう一度押してみたが、来る気配すらない


「はぁ、もういいわ」


 アティが気だるそうに前へ出たと思えば、扉を捻じ曲げて開いてしまった

 中に入ると電気が着いているし、靴もある


「靴があるって事は居るのか?」


 靴を脱いで中に上がると階段の先から物音がした


「見てくる」


 さすがに怖かったがアティは甦れないし、仕方がない


「…だれ…?」


 女の声が聞こえるが、真っ暗でよく見えない


「十ノ神 依加さんですか?」

「誰って聞いているの。」

「あ、この前森で殺されかけたものです。」


 <運命からの囁き(フェイトウィスパー)>は発動しない


「何の用?」


 まだ姿は見えない


「こっちの都合なんですけど、俺に捕まってもらえませんか?」


 あえて直球に話してみると音が近ずいてくる


「私を殺すつもり?」

「そんなつもりじゃなくて、ただ任務に当てられただけです。」


 訝しげに尋ねてくるが嘘偽り無く答える


「もう1人居るんでしょう?連れてきてくれる?」


 アティを呼び、テレパシーに期待し心の中で危険を伝える


「どうして私を捕まえたいの?」


 任務のことを伝える


「捕まったらどうなるのかしら?」


 そんな事を聞かれても分からない。だが、1つ考え付く


「こっち側に寝返りませんか?」


 出来るか分からないが、アティに聞いてみる


(そんなこと出来るか?)


(知らないわよ。てか何勝手に話進めちゃってるのよ)


 テレパシー越しに困っているのが分かる


(なんか抵抗する意志を見せないし、いきなり攻撃するのも悪いかと思って…)


(お人好しなのはいいけど、あなた根本から任務を覆してるのよ。)


 テレパシーで会話していると十ノ神が口を開く


「寝返るって言われても、私は別にこっち側に属した覚えはないのよ。私の能力はこっち側の人が用意したものかもしれないけど。」


 こっち側に来ること自体は完全に反対という訳ではないらしい。


「それよりもどうして私個人を標的にしてるの?」


(確かに…)


「あんたがこっち側の人間を殺しまくってるからよ。」


 ここに来てやっとアティが十ノ神と言葉を交わす


「それは…私の能力の都合上仕方なかったの。」


 能力の都合だとは言っても、人を殺すことは褒められたものじゃない


「あんたの能力や弱点全てを晒せばこっちの機関に入れるんじゃない?」


 十ノ神は少し考えた後、すぐに応える


「私の身を保証してくれるなら、そうするわ。」

「分かった。」

(アティ、何とかなりそうか?)


(あなたを上に連れて行く必要がありそうね…)


 話はまとまり、アティが壊した扉を治し家を後にする

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