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@otakimr

第1話

10/7


 とても長い夢を見た

 学校で、人が何人も倒れていて…

 ベッドから体を起こし、思い出そうとするほど記憶が薄れていく


 朝を告げるトイレの水音と共に目が覚める

 俺は北上空(きたかみそら)、このペースでは学校に遅刻するかもしれないと思いつつ、最近始めたゲームのログインボーナスを受け取り家を出る。


 「走るしかないか…」


 学校まではそれほど遠い距離ではないが、できる限り全力で走り何とか遅刻の5分前に到着する


「ふぅ…」


 軽く汗を拭い、教室へ入る。

 クラス内のグループに分かれ、一日の学校生活が始まる


「いやマジなんだって!」


教室に入るなり猪田(いのだ)の声が聞こえる


「昨日は曇りだったろ?それに垂直落ちなんてほぼ隕石じゃん」 


 昨日LINEで話していた垂直に落ちた流れ星の件だろう

 俺は気づかれないように近ずき話に入る


「目がバグったんだろ」

「わ!びっくりした…」


 日比谷(ひびや)が驚きながらこっちを見る


「今来たとこだよ…てか、陽太(ヨータ)は?」


 普段は俺を含め4人いるはずだが、今日に限って優等生のヨータが居ない 


「珍しいね、ヨータが遅刻なんて」


 日比谷に続き猪田も口を開く


「昨日食いに行ったラーメンでも当たったんじゃないか?」


(ラーメンに当たるってなんだ?)


 そんなくだらない話をしている頃に担任が来て授業が始まり、特に目立ったことは無く一日が終わった。


 家に帰り、日比谷と猪田とオンラインゲームをしている時もヨータはログインしてこなかった。



10/8  いつもと違う朝


 朝起きてスマホゲームのログボを受け取る…つもりだったが、何故か既に今日分受け取られている事になっている


「バグってるのか?」


 寝ぼけた自分で受け取ったのかと思いふと時計を見ると、8時40分と表示されている


「…遅刻か…」


 急いで家を出て、学校へ向かう

 教室に着いた頃には授業時間は残り15分に迫っていた。


「遅刻しましたー」


 直に授業が終わり、猪田が話しかけてくる


「どこいってたんだよ?」

「ただの寝坊だから真っ直ぐ来たけど…」


 2人が困惑した顔で見てくる


「ソラくん授業始まる前はいたじゃないか」


 日比谷が不思議なことを言ってくるが、そんなことよりも2日連続で無断欠席しているヨータの方が気になる


「珍しいよな、ヨータが無断欠席なんて。」


 猪田の言う通り。ヨータとは中学からの付き合いだが、初めてサボってるのを見た

 さすがに心配になり、一応LINEを送っておいたが既読は付かない。


 そのうち学校が終わり、何事もなく一日が終わった。



10/9  最後の猶予ターニングポイント

 


 2日連続の寝坊

 今日は特に大寝坊で、既に正午を過ぎた通学路を走る


「お前金持ってへんのかコラァ!」

「ひぃ、持ってないですぅ!」


 昼間に通ったのが初めてだからか、不良共が居るのを初めて知った。

 可哀想だがどうしてやることも出来ない。


「あ?お前何見てんねん」


 と思ったら絡まれてしまった


「何か御用でしょうか…?」

 無論、何かあるに決まっている

「お前今見下した目で見てきたな?」

 別にそんなつもりは無かったが、なんかすごい怒ってる


「お前舐めとったらぶっ殺すぞ!」

 不良が怒鳴ると同時に、体に鈍い衝撃と痛みが奔る

 だがおかしい。不良は今拳を振りかぶったわけではなく何もしていないのに攻撃された


「うっ…なんだ…?」

「ひひひゃはぁぁぁはぁぁぁ!!」


 まるで漫画の様な奇声をあげながら笑い狂う不良

 俺は恐怖のあまり動けなかった。まるで全てが止まったかのように…いや、本当に止まっている?不良も、車も、通行人も、飛んでいる鳥もみんな止まっている。


「今度はなんだ?」

「君以外を止めたよ、北上空(きたかみそら)くん。」


(止めた?時間を?動きか?意味がわからない、時間を止めるなんてそんなゲームみたいなこと…)


「そんなに色々と考えたところで、止まっていることには変わりないんだよん♪」


 何やらウキウキしながら魔女服女が話を続ける


「ていうか、そこまで考えられるなら話が早いわね。」


(話ってなんだ?俺はこの女を初めて見たし、超能力者の知り合いなんて居ないはずだ)


「私は君を知ってるけどね、ソラくん」


 妙に鼻につく含んだ言い方で話が続く


「とにかく、最初の任務よ」


(任務ってなんだ?)


「その不良共をぶっ飛ばして」


 口を挟む隙なく女は話を続ける。


「そいつらは私たちの機関と敵対している奴らが無差別に増やした能力者。そいつら3人とも能力者よ。」


 あんまり話についていけない


「私の能力は<管理人(オブザーバー)〉っていってなんでも出来るけど…例えばその男があんたに放った<悪意(イービルショット)>は、負の感情を見えない質量にして飛ばすことが出来るの。あなたはそれで今ぶっ飛ばされたってこと。」


 やっぱりピンと来ないが、女に疑問を投げかける


「こいつらを倒せって言うんだったら、俺にも能力が与えられるのか?だったらテンション上がるんだけどなぁ!」

「もちろん、あなたにも既に能力が発現されているわ。心の中で自分に問うのよ。」


(心の中で自分に問う…)


      運命再帰(フェイトリカバー)> <力>



「運命再帰(フェイトリカバー)と…ちから?こっちはなんか抽象的だな…」

「初めから2個持ちはレアだから、大事にしてねー」


 能力は増やせるってことか…?

 

「あ、それと<運命再帰(フェイトリカバー)>は死んでも任意の時間前にいた場所に戻って復活する能力よ。そして、<力>の方は賢く使えば便利に強いからあとは頑張ってね。バイバイ。」

「え?ちょっと待って…」


 その瞬間嫌な笑い声が聞こえた


「ひゃはぁぁはぁぁ!!!」

「…っ!まずい…!」

「あ?何がまずいんだぁ?お前は今から俺に殺されるだけなんだからよぉ!」


(使い方聞いてない…!発動しろ力!)


 その時急に右手の力が抜けた


(力を発動しようとしたからか?)


「はぁあ!」


 右手に力を込め全力で不良に打ち付けた


「ガフッ…!」


 男は倒れ、取り巻きが駆け寄る


「お、おい!どうしたんだよ?」

「こいつ、マジで強えよ」

「いつものやっちゃえよ!殺しちまうかもしんねえけど。ひゃはははは」


 不良が叫びながら突っ込んでくる


「覚悟しやがれヒョロがりぃぃ!」


 拳を振りかぶる不良を突き飛ばし、逃げる

 不良共3人が全力で追いかけてくる


「はあっ、はあっ」


 現実とラノベは違う。2次元ならすぐに能力を使いこなしていたりするが、実際は使い方すら自分ではわからない。


「くそ!行き止まりか!」


 夢中で走っていたせいで、知っている道なのに行き止まりに来てしまった


「もう逃げれないなぁ!」

「「「ぎゃっはっはっは!!」」」


(やるしかないのか…!)


 試しに近くに落ちていたコンクリートの破片を思いっきり投げつけてみる

 小さな波動が起き、炭酸の缶を開けた時のような軽い破裂音がなる


「うぉぅわ!」


 男が咽び泣き、気づくと不良2人の肩を貫通し穴が空く


 (え?)


 全力で投げたけどまさか肉と骨を貫いてふたり同時にやってしまうとは思ってなく、血を垂らしている不良共を見て少し怖気付く


「てめぇ!何してやがる!」


 残った1人が睨みつけながら走りかかってき、その右手に火が浮いている


「やばいやばいやばいやばい!」


 男が火を押し付けてき、それを防いだ俺の左腕が焼ける


「うぁぁっ!」


 熱さと痛みに耐えきれず、咄嗟に右手の拳を相手の顔面に打ち付ける


「あっ」


 嫌な音と同時に顔が濡れる、血だ。相手の顔面が正面から陥没している。


「お、おい大丈夫か?」


 顔がぐちゃっとなってしまっているので、つい心配してしまう

 だが、動かない


「すごぉい!使いやすい能力とはいえ、いきなり能力者3人に勝つなんてやるじゃない!」


 時間が止まっている。


「こいつ大丈夫なのか?」

「こいつらは後で機関が回収するから気にしないで」


(回収ってなんだ?てか、警察に捕まるんじゃないか?これ)


「とりあえず最初の任務は完了!報酬は招待券と傷の治療ね。」


 左腕の火傷と燃え尽きた袖が元に戻る


「招待って?」

「誰か1人あなたが選んだ人間を同じ能力者にしてあげるっていう券なんだけど、その時は同じように任務もこなしてもらうからね。」

「そういえば任務ってなんなんだ?」

「敵を減らしたり、未来が消滅しうる事象を未然に防いだり…まあそんな感じね。」

「死ぬこともあるのか?」

「死ぬこともあるだろうけど、あなたには関係ないんじゃない?どうせ蘇るだろうし」


 いきなりぶっ飛んだ事を…いや、超能力の時点でぶっ飛んではいたが、死という言葉を聞くとさすがに恐ろしい


「だ・か・ら、招待はよく考えた方がいいわよ」


 相変わらず鼻につく喋り方だ


「そういえば、初任務遂行おめでとう。これを渡しておくわ。」


 そういうと女がひとつのスマホ端末を置いてフワリと消えてしまった


「居ない…」


 倒れていたはずの不良共が血痕ごと無くなっている


「学校…はもういいか。」


 そのままその日はサボって家に帰った



同日 夜


「能力の確認でもしてみるか…」


俺は近くの人の少ない山へ行き3時間程度練習した時、ひとつの奇妙なことを思い出した。


 昨日の違和感だ


 昨日俺は1時間分の記憶が無かった可能性がある。

 もしかしたら通学途中で死んで、<運命再帰(フェイトリカバー)>で戻ったのかもしれない


「あ!そうだ」


 女に貰った端末をポケットから取り出し、LINEを開くと1つの連絡先が登録されている


  [アティ・ルナトリエ(NO.7)]


(No.7…あいつの名前か?とりあえず掛けてみるか…)


「どうしたの?ソラ、」


 あの女の声だ


「聞きたいことがあるんだけど、」


 女にさっきの考察を伝えてみる


「確かに<運命再帰(フェイトリカバー)>は発動してたみたいね、でも詳細は言えないわ。禁則事項に反するみたい」

「みたいってなんだよ」

「未来が消滅しうる可能性のある事なのか、敵が増えることになるのか…その他の何かしらの禁則事項に反するってこよ。」


 訳が分からない、どうして昨日の朝にわざわざ発動したのか。それにアティは任意の時間に居た場所へ戻るって言ってたはずだ。なら死んだことも覚えてるんじゃないのか?


「はぁ、疲れた…」


 今日は出来事が多すぎた。



10/10  胸騒ぎ(プレモニション)


 いつも通り登校し、一日が始まる


「おはよう」


 日比谷と猪田に声をかける


「お前なんか疲れてね?」

「ちゃんと寝た方がいいよ?」


 猪田と日比谷が心配してくれている


「ソラ、ちょっといいか?2人だけで」


 久しぶりに会ったヨータに突然呼び出される


「これを見てくれ」


 ヨータが1台のスマホを取り出し見せてくる。俺がアティに貰ったものと同じ端末だ。


「お前、だから2日も休んでたのか…」

「話が早くて助かるよ。それから、お前を招待してしまったのは俺だ。ごめん。」


(何を謝ることがあるんだ?超能力者になれたってのに)


「そんなの、逆に感謝したいくらいだよ」

「いや、そんな簡単な話じゃ…

「おはよー!」


 アティがいつの間にか俺たちの横に居た


「せっかく2人が一緒にいる事だし、協力して任務をこなしてもらいたいの。」

「まさか毎日やるのか…?」

「お前連続なのか?(一体どんな能力なんだ…)」


 アティが続けざまに口を開く


「今日この後、学校に侵入してくる不審者を退治してちょうだい。」

「そいつも能力者なのか?」

「ううん、そいつはただの犯罪者よ」

(能力者より怖くね?)


「それで、そいつはいつ来るんだ?」

「知らないわ。」

「はぁ」


 任務をこなしてこっちにはどんな得があるんだ?


「まぁ、ヨータくんはソラに色々教えてあげてね」


 そのうちアティはまた消えてしまった


「えっと、まず俺の能力は<運命からの囁き(フェイトウィスパー)>がメインだ、未来で死んだ自分の声が聞こえる。」


 声が聞こえたら未来の自分は死んだって事なのか…


「ソラの能力も俺に似たようなのが発現したはずだけど…あとでいいか。」


 軽く話していた頃、本来なら授業中なのに校内放送が流れる


『全校生徒に連絡します。ただいま、校内に不審者が侵入しました。教室に入り鍵をかけ、不審者に姿を見られないようにしてください。繰り返します…』


「思ったより早く来たな…」

「とりあえず探そう。」


 学校の正門へ向かうと、既にそこには血痕が垂れていた


「もう怪我人が出たのか…」


 2人で焦りを落ち着かせ再度不審者を探そうとした時、隣校舎にて悲鳴が聞こえる


「急ごう!」


 ヨータと悲鳴が聞こえた方向へ向かう


「お前能力戦闘に使えるか?」

「それなりには」

「俺が気を引く隙に何とかしてくれ!」


 ヨータが不審者を怒鳴りつける


「こっちだ!変態野郎!」


 不審者が包丁を持ってヨータに向かう


「ソラ、頼むぞ」


 いつの間にかナイフを持ったヨータが構える

「…はぁっ!」

 不審者の包丁をヨータが弾く

「やれ!」

 手加減した拳を後ろから叩き込む


「ぐふっ!」


 重たい音を上げ、不審者が倒れる


「はぁ、何とかなったか…」


 思ったよりすんなり終わり安堵するが、その安寧も一瞬のものに過ぎなかった


「…!!ソラ!離れろ!」


 ヨータが叫び、瞬間に不審者が痙攣し巨大化する


「グヴォォラァァ!!」


 怪物と化した不審者がヨータに襲いかかる

「まずい!」

 瞬時に怪物に飛びかかり<力>を全力で発動して怪物の後頭部に蹴りを入れることができ、幸いヨータは無傷だった


「助かった」


 ひとまずヨータは助かったが、怪物はまだ動く


「屋上まで逃げるぞ!」


 ヨータの言う通りに階段を駆け上がる

 屋上でヨータに能力を説明し、終わる頃に怪物が外から跳躍して屋上まで跳んできた。


「やるぞ!」


 ヨータはどこから取り出したのかピストルを怪物の顔面に撃ちまくるが、当たっても大したダメージが入っているようには見えない


「効いてないぞ!」


(後ろに飛べ!)「来るぞ!後ろに避けろ!」


 怪物が襲いかかってくるが、ヨータの掛け声のおかげで無傷で避けることが出来たが、怪物は止まらず滞空しているヨータに続けて攻撃する。

 ヨータの足は地面についていないため避けられない


「ぐぁぁぁ!」


 怪物のフルスイングがヨータを吹き飛ばし、壁に叩きつける


「はぁぁ!」


 怪物の顔面を全力で殴りつけるが、顔面がぐちゃぐちゃなのに変わらず動き続ける


「くそ!倒せない!」

「ソラっ!お前の<力>は筋力だけじゃない!」


 筋力だけじゃない?


(<力>を思考力として使えば突破口が見いだせるかもしれない。)

(アティはこいつをただの犯罪者と言ってたから元から怪物だった訳じゃないはずだ…バラバラにすれば倒せるか?いやでも、そんなのグロいし…)


「ソラ急げ!」


(あーもうどうしたら…)


「てゃあ!」


 知らない声が聞こえたと同時に怪物が霧になって消滅した


「大丈夫かい?2人とも」


 どうやら助かったようだ


「あ、ありがとうございます!」

「すまないね、横取りしてしまって」


 横取り?この業界にはそんなものもあるのか…


「とにかく助かりました!ヨータもボロボロだし…」

「ならよかったよ。」

「助っ人が来て良かったね、ソラ」


急に現れたアティが声をかけてくる


「助っ人?」

「近くで戦ってる人を援護に行けるのよ。端末使えばできるから、あんたも誰か助けてあげるのよ。」


 そんなことを言いながらアティがヨータの傷を直しきっていた


「助かりました冴島(さえじま)さん」


 ヨータはこの冴島っておじさんと知り合いなのか。


「前にヨータ君とは任務で組んだことがあってね。」


「じゃあ、任務完了かな。報酬は後で端末で確認しといてね。」


 正に神出鬼没だ、気づいたら消えている


「それにしても災難だね、2人なのに亡者に出くわすなんて。」

「亡者ってなんですか?」


 反射的に冴島さんに聞いてみる


「死んだ時に強い怒りと何かしらの感情が強く混ざり合うことで産まれる、強いゾンビみたいなものだよ。我々能力者の任務のメインターゲットだよ。」


 冴島さんは話終えると屋上から飛び降りてどこかへ行ってしまった。


「あのおじさん強ぇ…」


 その日の授業は怪我人も出た為休校になった

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