➆終章

 「落ち着けって!美鞠、ホント、落ち着けって!」

 俺は、美鞠を抱きしめた。

 久しぶりに嗅いだ柔らかなシャンプーの香りが、俺の嗅覚を刺激する。

 途端、彼女は抵抗するのを止めた。

 (今だ!)、と俺は思った。

 「結婚しよう、美鞠・・・今すぐ、結婚しよう、俺達」

 「・・・え?」

 「だからぁ・・・こんな喧嘩だらけの毎日は、もう今日で終わりにしようって言ってんだよ」

 視線を下に向けると、あの日の海で見たのと同じ極上の笑顔が、そこにはあった。

 

 「杏二の・・・莫迦」

 そう言いながら俺の腕の中で瞳を閉じる美鞠に、俺は応えた。

 その瞬間。

 今まで離れ離れだったふたつの体温がひとつになった、気がした。

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36℃×36℃ 山下 巳花 @mikazuki_22

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