6.

「今日の分はこれくらいだな」


 解き終わった問題の答え合わせをして、俺はそう告げた。同時に、テーブルを挟んで向かいに座るミズキが「ん~」と小さくのびをする。


「なーおっさん。今日も早く終わったし、オセロやろうよ」

「また俺が相手するのかよ」

「しょーがないだろ。ずーっと雨で外にも出れないんだからさ」

「それはわかるけど……俺そんなに強くないし、おもしろいか?」

「そりゃーもう。おっさんが打つ手なくて悩んでんの、めっちゃおもしろい」

「お前……」


 思わず文句を言いたくなったが、すでに意気揚々と準備をしていたので渋々相手をする。交互に黒と白を置いていくと、またたく間にボードの上が埋まっていった。


「……なんか、いいな」

「何がだ?」

「こんな風に勉強して、遊んでるのがさ。あ、かどもーらい」


 パチ、と白の石をボードの角に置く。


「勉強なんて学校でいるだけだからどーでもいいって思ってたけどさ。おっさんのおかげでそうじゃないって、わかったし」


 数枚の石を裏返す。それを俺は、黙って見つめる。


「だから、これからも教えてくれよな」

「……」

「ん? どうしたんだよ」


 今度は俺の番。石を置いて。そして、彼女の言葉に応える番だ。


「悪いが……それは無理だ」

「え」


 同時に、ボードに黒を置く。さっき裏返った以上の枚数が、黒へと変わる。


「な、なんでだよ」


 ミズキを前に、俺は口の中で舌を転がす。そしていつもより多めに息を吸ってから、


「次に来る船で、俺はこの島を出ていくからだ」

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