7.

「おい、ちょっと待てって!」


 俺の言葉を聞いたミズキは持っていたオセロの石を放り出し、部屋から、そして家からも走って出ていった。


「どうかしたさー?」


 玄関に残された俺。騒ぎを聞きつけたおばあさんが訊いてくる。すると、やさしく包み込むような声で、


「言ったんだねえ。あの子に」

「……はい」

「にいちゃんは間違ってないよー。いつかはお別れしなきゃいけない日が来るからねえ」


 まだ子どもだけど、ちゃあんと向き合わないといけないさー、と続ける。そして、


わんわたしからの最後のお願いさー」


 俺の方をじい、と見る。


「追いかけてあげて。きっとあの場所さー」

「でも、俺が行ったところで」

「そんなことないさー」


 ゆっくりと首を振る。


「今あの子に必要なんは、にいちゃんの言葉だからねえ。今あの子の気持ちを一番わかってあげられるんは、にいちゃんだから」


 他の誰でもなく、とおばあさんは言う・


「俺……行ってきます」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る