Act.5 光の力と未来

強い光が、あたしたちを包む。

 青い光が───────…

「高志!?なんなの?これっ」

「わかるかっっ!!こんなの俺のコントロールじゃない!」

 強い光で、目が……開けない。


 …………


「蒼乃?…もう済んだよ。蒼乃?」

 少しずつ瞼の外の明るさに目が馴染んでくる。

 そっと目を開ける…

「なぁに?これ」

「俺にも、全然」


 あたしたちは、しばらくの間何もわからずに呆然としていた。


『高志は、まだ気づかないのか』

 と、どこからともなく声が聞こえた。

 高志は「へ?」と間抜けな声をあげて、周りをキョロキョロしている。

 でも、あたしの手首を掴んだ手だけは、動かないままだ。


『高志、風のコントロールをしてみなさい』

 そう言われた高志は目を閉じる。

「…………あれ、できない。光だって…」


「どういう事だよ、おやじ」

 声の主は、高志の父親らしい。


『この一ヶ月のことは、俺達はみんな上から様子を見ていた。その子と楽しげに話をする高志の様子を見て、私たちは後悔をした

 なぜ、生きてる人間を、ましてやまだ16の息子を、こんな立場にしなければならないのかと。我々先に旅だった者だけで、どうにかすることは出来ないのかと』


『そして、決めたんだ。高志、お前はもう一度人間として、しっかりとお前の人生を全うしていけばいい。

 ここは、我々ができうる限り守ってみせるからな』


 …高志の父親…の声が聞こえたのはここまでだった。


「うそ…だろ。一生ここを守っていくんだって決めて、全部諦めてたのに、今更人間として生きろとか、どういうことだよ…」

 高志は、立ち尽くしたまま動かなかった。

 でも、あたしの腕を話さないでいてくれた。

 …それが、何より嬉しかった。


「ねえ、高志。あたしは…あたしたちは一緒におとなになってもいいっていうことなの?」

 あたしは少し恥ずかしくて、背中を向けた体制でそう言った。


「どう…やら、そういうことみたいだな」

 高志は私のもう片方の手をぎゅっと握って、向かい合う。


 あたしは、その両手をそのままに、高志の胸に体当たりをした。  手を話した高志はそっと、あたしの肩にてをまわしてくる。


 あたしは、真っ赤になって、離れた両手を高志の背中にまわしてぎゅっとした。


 …ずっと、一緒にいられる。


 いつか、また高志は呼ばれる日が来るかもしれない。

 でも、その時は、私も一緒に行こうと思った。

 何があろうと着いて行く。


 優しい光に包まれながら、あたしたちは約束の言葉を交わした。


 ずっとずっと…永遠に。

 はなれない。

 …絶対に。


 この夏、あたしのあこがれは本物になった。

 光の中に輝く、一点の青。

 このブルーは、青空だった。


 あたしも輝きたいな、高志みたいに。


 太陽にきらめく、青空のように───…

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光の中のブルー @hinakoayuasa

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