日記と缶ビールとラジコン
~人質日記~
第5次テロリスタン戦争中、兄貴が北部政権の軍隊に捕らえられていた時のこと。
彼の担当になった将校は記録も兼ねて日記をつけていた。以下、彼の日記より抜粋。
スールマン(兄貴の姓)を捕らえて、三か月経った。まだガリベンから返事がこない。
今日、スールマンが泣いていたから励ました。
信頼できる仲介人に伝えてもらってはいるが、あの時のあいつのあの顔……。
どうもスールマンのことを知らないようだ。不安だ……。
スールマンを捕らえて、半年経った。まだガリベンから返事がこない。
今日、スールマンが縄を作ろうとしていたので、阻止した。
それにしても半年も連絡がこないのはおかしい。あの仲介人は役に立たないようだ。
最近、この件について上からの嫌味もエスカレートしてきた。怖い……。
スールマンを捕らえて、九か月経った。まだガリベンから返事がこない!
流石に九か月も連絡がこないのはおかしすぎる!
あの仲介人や他の仲介人も頑張ってはいるが、どうもガリベン側が忘れているらしい。
最近、上下問わず、皆俺を無視するようになった。ヤバいぞ……。
そろそろガリベンにもいい加減して欲しい。
何か正しいこと言ってるようだけど、仲間を忘れてる時点で説得力がないぞ!
今すぐにでも思い出してくれないと、俺が戦わずしてこの世から消えるかもしれない。
スールマンを捕らえて、明日で丁度一年経つ。そしてこいつが食を断って二日目……。
ガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベン(中略)
ガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベンガリベン
ああもう、もう狂いかけた俺よりも先にこの日記が終わってしまった……。
以上、将校の日記の内容である。日記内の最終日の翌日にガリベンは兄貴を救出。
その将校も自身の部下達と共にガリベンに寝返った。
~戦犯国の人間と大宇宙の恵み~
第5次テロリスタン戦争末期のこと。ガリベンは北部政権の某海軍将校を捕らえた!
その将校に対して先生が尋問しようとした際、将校の第一声がこちら。
「戦犯国の人間と話すことはない!」
「貴様、今すぐにでも凌遅刑で処刑してやる!」
激怒する兄貴の傍ではアイ坊とドーストが刃物を研いで準備している。
そんな兄貴を先生は「待つのだ!」と制止する。
「この者は大宇宙の恵みぞ!」
この先生の言葉に「何と!?」と驚愕を禁じ得ない兄貴。
アイ坊も「恵み?」と疑問に思い、ドーストも「おおーっ!」と感心する。
そんな三人に向かって先生は「それを後日――明らかにしてみせよう!」と宣言!
一見、冷静な先生だが、その目から冷酷な怒りが滲み出ていた……。
後日、ガリベン側は先の海軍将校に特殊な手術を施した。
この時、将校自身が手術を受けたと悟らせないようにするのが肝心。
後はその海軍将校を牢獄に入れて、わざと隙を作って逃がす。
そうして脱出に成功した海軍将校が上官に報告するタイミングを見計らって――。
先の特殊な手術の際に海軍将校に仕込んだ爆弾のボタンをオンに!
結果――その海軍将校はもちろん即死!
同政権の海軍大臣であるニコラウス・ツー・シュテケノフ海軍元帥ら数名も即死!
以上の大戦果を受けた先生は兄貴達に「これが大宇宙の恵みぞ!」と宣言した!
~金の缶ビール~
第5次テロリスタン戦争中のこと。
北部政権のある森の中の検問所で、同政権の将兵が「止まれ!」と命令!
命令を受けた側は商人に扮したアイ坊とドースト。
二人の積み荷には缶ビールの箱が積んである。
「荷物を確認させてもらう!」と二人の積み荷の検査に入る将兵。
そこへ別の将兵の目に入ってきたものは、ドーストの首にかけられている金の缶ビール。
いつも飲んでいる缶ビールより一回り小さいが、高級感がたっぷり!
「何だそれは~っ!?」と見つけた将兵は下心ある目でアイ坊を問い詰める!
問い詰められたアイ坊は「ダメ!これはご主人様の物なの!」と返答!
しかしドーストは「申し訳ございません。これは譲りますので、どうかお許しを」と謝罪!
このドーストの反応を受けて将兵はアイ坊にこう返した!
「物分かりのいい連れに感謝するんだな!」
それから積み荷の検査が終わった二人は検問所を通過。森の中を進んでいった。
その間、先の金の缶ビールを見つけた将兵は、それを検問所近くの休憩所の冷蔵庫の中に投入して保存。キンキンに冷やして飲む予定。
そんなことがあった、その日の夜。
先の缶ビールを見つけた将兵が勤務中に飲もうとして、その缶のプルタブを引いた!
結果――爆発!検問所の将兵達は皆――あの世へ!金の缶の正体は爆弾だった!
そうして無力化された検問所の跡をガリベン側の特殊部隊が通過していった……。
この爆発を遠くで見ていたドーストは「やっとか」と一安心していた。
~ラジコン飛行機~
第5次テロリスタン戦争中のこと。
北部政権の某都市にて、アイ坊がラジコン飛行機で遊ぼうとしていた。
そこへ同政権の将兵が「何をしているか!?」と怒鳴りかけてきた。
アイ坊は隣にいたドーストの後ろに隠れて震えるばかり……。涙もこぼれている。
「申し訳ございません。こちらはお譲りいたしますので、どうかお許しを……」
ドーストはアイ坊に代わって、淡々とラジコン飛行機を将兵に渡した。
そうしてラジコン飛行機をゲットした将兵は「懐かしいな!」と遊び始めた。
「これはアメリカ製のB-25だな!」と遊んでいる内に童心に返る将兵。
既に遊んでから十分以上経過。まだまだ遊び足りない模様。
アイ坊とドーストもいつの間にか彼の傍らから消えていた。
「やべっ!会議室の方に突っ込んじゃった!」
将兵の操縦ミスによって、ラジコン飛行機は重要施設の中へ突入した結果……。
同政権の軍需大臣であるミハイル・ブロンシュテイン元帥。
同じく参謀総長のアレクサンドル・アロノフ元帥、他数名の将校の命を吹き飛ばした!
あのラジコン飛行機には爆弾が搭載されていたのだ!
この重大な事件は、生前の最高指導者であるウリヤノフに早急に伝えられたが……!
「緊急事態です!軍需大臣と参謀総長の両同志が爆死したとの報告が!原因は不明――」
「あっ……そう。丁度いいわ。消そうか迷ってたし。国葬は任せたぞ!」
以上のように高官が死んだといえども、他派閥の人間には冷たいウリヤノフであった。
ちなみにラジコン飛行機を操縦していた将兵は、紆余曲折を経てガリベンに寝返った。
戦国惑星テロリスタン! 希紫狼 @s13166
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