第6話 悪戯、再び

 とにかく大きく掘ってきたこの空間を、住みやすく改築するときが来た。

 まずは…ベッドが欲しいなぁ。とは思ったものの、作るための材料がない。

 宝石集めをしなければいけないのか…。

「大地さま~」

「ん?」

「このお部屋、ユキにください」

 瞳をうるうるさせて、お願いしてきた。僕が掘ったのに…。可愛いやつめ。

「…いいよ」

「ありがとうございます!お礼に、宝石のカケラを集めてきます~」

 一瞬にして、消えた。足速ぇよなぁ。


 ユキがいない間に、部屋の形でも調えておくか…。

 と、そのとき。

 ドサドサドサーッ。

 異様な音と共に、視界が土埃で埋め尽くされた。

「痛たたたた…。ゴホゴホッ」

 土埃が消えると、僕の目の前に美少女が座っていた。

 ぱちぱち。まばたきを二度ほど。

 やっぱり、美少女はそこにいた。

「あのぉ…ここ、どこですか?」

「僕も知らん」

「…」

「だが、多分ゲームの中だと思う」

「…は?」

「う、嘘だと思うなら、自分の家にでも帰ってみろよ」

「オジサン、頭、大丈夫?じゃ、私、帰るから。バイバーイ」

「二度と、戻って来んなよ」

 オジサンの四文字に、腹が立った。


        ***


「オジサーン…タスケテ…。帰れない」

 声のする方を見上げると、ショートヘアーのボーイッシュな美少女が、地上からこちらを覗いていた。

 あいつ、また戻って来やがった。二度と来るなって、言ったのになぁ。

「だから、言ってるだろ。ここは、ゲームなんだって。LANDすけーるなんだよ」

「私、ゲームとかしないし。そんなの、普通に考えてあり得ないし」

「そうか、そうか。僕は普通じゃないと…。はぁ、何でこんな奴にかまわなきゃなんないんだよ。説明してやるから、取りあえず降りて来い」

 彼女は、大きく首を横に振った。

「いやだよー。だって…さっき、痛かったんだからねー!!こんなでっかい落とし穴わ作っちゃってさ…」

「落とし穴じゃねぇよ。僕の、家だ!」


 落とし穴と言われて、思い出した。幼少期に失敗した、あの悪戯のことを。

 あのときは苦労して失敗したのに。こんなにも簡単に、引っかけることができてしまうとは。ドジなのかなぁ…あの子。

 僕は密かにガッツポーズした。

 今も、悪戯っ子は、健在だった。

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全知全能の神になりたい僕は、もぐらから始めることにした。 天音 いのり @inori-amane

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