おまけ〜タチネコ論争〜


※本編であまりイチャイチャさせられなかったので、初夜前の2人を描きました。

 

 完結後のお話。甘々です。


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 ベッドサイドにある、間接照明の明かり。

 今までは何とも思わなかったそれが、こんな場面では雰囲気を演出しているように思える。


 間接照明だけが付けられた室内は、どこかぼんやりと薄暗い。


 僅かに見えにくいけれど、そういった行為をする際はこれくらいが丁度良いのかもしれないと、なつめはパンク寸前の頭の中で考えていた。


 「……緊張してるの?」


 愛おしい恋人から声を掛けられて、思わず肩を跳ねさせる。

 側から見ても、なつめがガチガチに緊張していることは伝わっているのだろう。


 羞恥心をグッと堪えながら、強がって首を横に振っていた。


 「ぜ、全然?はやく横たわってよ」

 「こういうのはムード作りが大切なんだって」


 4年間、彼女と眠りについていたベッドの上で今日初めて体を重ねるのだ。

 風呂場で体を念入りに洗って、爪だってヤスリで綺麗に整えた。


 準備は万端なはずなのに、一番肝心の心が先程からバクバクと鳴ってしまっているのだ。


 「こっち向いて」


 恐る恐るリアの方へ顔を向ければ、触れるだけのキスを落とされる。


 柔らかい唇との軽い口付け。

 数回触れるだけのキスを落とされた後、唇の割れ目を温かい舌でなぞられる。


 深い口付けは婚約指輪を渡されてから何度もされているというのに、一向に慣れない。


 しかし勇気を振り絞って口を開けば、隙間から生温かい舌が口内に侵入してくる。


 「んッ……んっぅ」


 くぐもった声を上げながら、必死に彼女からの口付けに答える。


 舌の先端同士をくっつけあって、互いの感触を味わうようにいやらしく動かしていた。


 「……ッ、ンッ…」


 優しく体を倒されて、背中にマットレスの柔らかな感触が触れる。


 押し倒されながらキスをされるのは初めてで、更に羞恥心を込み上げさせていた。


 そのまま彼女とのキスに溺れそうになっていれば、服の裾から手を入れられて目を見開く。


 「んっ、ンッ…!」


 相変わらず口内を蹂躙されているため、声を上げることが出来ない。


 心地良さで朦朧とする意識の中、必死にリアの肩を叩いていた。


 「ンッ…り、ァッ…」

 「…ッ、どしたの?なつめちゃん」

 「……私がタチやる」

 「……は?」

 

 想定外の言葉だったのか、リアは驚いたように目を見開いていた。

 急いで上体を起こしてから、今度はなつめが彼女を押し倒そうとするが、強い力で抵抗されてしまう。


 「ちょっと……なんで倒れてくれないの」

 「いやおかしいでしょ!?なつめちゃんにタチ出来るわけないし。そんなガチガチに緊張して」

 「出来るよ…!確かにその…経験はないけど、私だってリアのこと気持ちよくさせられるから」

 

 お願いと懇願すれば、リアが困ったようにため息を吐いた。

 額を抑えてから数秒の沈黙が続いた後、観念したように彼女がとある提案をしてくる。


 「…じゃあ、とりあえず今晩は私がタチやるっていうのは?」

 「初めてのえっちだよ?私がリアのこと気持ちよくしたい」

 「えー…私だって同じだし……じゃあ、我慢できなくなった方が今晩はネコ役するのはどう?」

 「我慢……?」

 「お互い触り合いっこするの」


 意味を理解して、ジワジワと頬が赤らみ始める。

 

 「触り合いっこって……何してもいいの?」

 「もちろん。私もどこ触られても文句言わないよ」

 「……じゃあ、いっせーので始めよう」


 リアがコクリと頷いてから、掛け声と同時にこちらに手を伸ばしてくる。


 なつめも負けじとリアの胸元に手を這わせようとすれば、彼女の方が一枚上手だった。


 強い力で押し倒されて、両手を彼女に掴まれてしまったのだ。


 体を押さえ込まれて、文句を言う間もなく彼女がなつめの首筋に顔を埋める。


 いやらしく首筋を舐め上げた後、彼女はそのまま敏感な耳を蹂躙し始めたのだ。


 「……ちょっと!…ねえ、押し倒すのずるい!」

 「何してもいいって言ったのなつめちゃんでしょ?」

 「やっ……耳元で喋んないで…」


 ゾクゾクとした快感が背中に走って、逃れようと体を拗ねらせる。

 リップ音を鳴らしながら耳の淵にキスをした後、彼女の舌が耳の中に侵入してくる。


 柔らかで温かいそれが敏感な耳を舐め上げる度に、無意識に甘い声が漏れていた。


 「んっ……ンッ、んぅっ…」

 「本当、耳弱いね」

 「あッ、あぅ……ねえ、もうそこやだ…!」

 「じゃあ、なつめちゃんの負けでいいの?」

 「……ッ」


 首を横に振れば、リアが挑発するような笑みを返してくる。

 舐められていない方の左耳は、彼女の指でいやらしくなぞり上げられていた。


 既に押さえつけられていた手は自由になっているというのに、与えられる快感のせいで上手く体が動いてくれない。


 それでも必死に震える手を彼女の方へ伸ばしてから、服を脱がそうと裾を掴んだ。


 「なつめちゃんが脱がすなら、私も脱がすね」

 「え、待って……ッ」


 身につけていたパジャマのボタンを次々と外されて、とうとうお気に入りの淡い水色のブラが露わになってしまう。


 咄嗟に隠そうと胸元の前に手を持ってくるが、リアはそっとブラの肩紐を肩から落としてしまった。


 「あれ、私のこと脱がすんじゃなかったの?」

 「……ッいじわる」

 「なつめちゃんが意地張るからでしょ。ほら、手退けて」


 首を横に振れば、彼女の手は胸元から更に下の方へ下がっていく。


 まさかと思いながら目線を下げれば、リアの細くて長い指がなつめの太ももの裏側へと触れていた。


 「……や、いきなりそこ……」

 「なつめちゃんが胸触らせてくれないから」

 「…ま、待って…心の準備が……」

 「じゃあ、手退けて?」


 ギュッと目を瞑りながら、恐る恐る胸元を隠していた手を解く。

 ベッドと背中の隙間に手を差し込まれて、ホックを外されれば開放感と共に支えがなくなった。


 そっとブラを上にあげられて、羞恥心で全身を赤く染め上げている自信がある。


 脇腹を優しく擽られた後、彼女の手が膨らみへと近づいていく。


 「じゃあ、私の勝ちって事でいい?」

 「……ずるい」

 「だってなつめちゃん可愛すぎるんだもん」

 「い、意地悪沢山してきた……恥ずかしかったし、ペース早い……」


 こちらは初めてだというのに、全く手加減がなかった。

 言葉巧みにされるがままで、結局沢山恥ずかしいことをされてしまったのた。


 羞恥心に堪えられず、瞳から涙が一筋零れ落ちる。


 ギョッとしたように目を見開いた後、リアは優しくシーツを掛けてくれた。

 こちらを揶揄って意地悪してくることもあるけれど、根は酷く優しい女性なのだ。


 「……ッ恥ずかしかった……けど、もう20歳越えてるし……面倒くさいって思われるの嫌だから、恥ずかしいの我慢してたけど……もうちょっとゆっくりが良い」

 「……ごめんね。なつめちゃんのことずっと好きだったから……浮かれてた。がっついて、なつめちゃんの気持ち全然分かってあげてなかった」


 優しく体を抱き寄せられて、恐る恐る彼女の背中に腕を回す。

 温もりに触れながら、リアへの愛おしさを込み上げさせていた。


 「……私はずっとなつめちゃんを可愛がりたいって思ってたから……自分の気持ちばっかり優先しようとして、最低だよね」

 「………え?」

 「なつめちゃんがタチやりたいなら、いいよ。そもそもなつめちゃんと触れ合えるなら、どっちでも良いや」


 あまりにも予想外過ぎる言葉に、思考が停止する。

 必死に彼女の言葉を噛み砕きながら、恐る恐る尋ねた。


 「リ、リアは私みたいに……好きな人から可愛がられたいと思わないの…?」

 「まあ、正直言えばあんまり……なつめちゃんが可愛過ぎるから、喜ばせたいとか気持ちよくしてあげたいって想いの方が強いよ」


 サラサラと髪の毛を梳かれて、そのまま耳に軽いキスを落とされる。

 いやらしい意味合いはない、愛を伝えるための口だけだった。


 「……それで、私みたいにって何?なつめちゃんは私から可愛がられたいって思ってたの?」

 「そ、それは……」

 「もう意地悪しないから。正直に答えて」

 「私はリアに可愛がられたいってずっと思ってた……だからリアも同じかなって…私がして欲しい事全部するつもりだった。そしたらリアが嬉しいかなって……」

 「私のためにタチやろうとしてくれてたの?」


 コクリと頷けば、今度は唇にキスを落とされる。

 酷く幸せそうに微笑む彼女を見るだけで、なつめも同じように幸福感が込み上げてくるのだ。


 「……私はね、あんまりネコ役やりたくない。正直好きな人は可愛がりたいって気持ちの方が強いから」

 「でも……好きな人からは普通可愛がられたいものじゃないの?」

 「それはなつめちゃんの場合ね?私は可愛がりたいタイプなの」

 「き、気持ちいい事されたいって……好きな人に体触って貰いたいなって思ったりとか……」

 「だから、逆なの。私は触りたい。気持ちいいって喜ぶのが見たいの」


 掛けられていたシーツを奪われて、はだけた胸元が露わになる。


 恥ずかしがるなつめを見て、リアはまた幸せそうに優しい笑みを溢すのだ。


 「……なつめちゃんは本当に優しいね」

 「リア……」

 「本当は自分がして貰いたいのに…自分がされて嬉しい事、私にしてあげたかったんでしょ?」


 鎖骨にキスを落とした後、軽く吸いつかれる。

 間違いなく、明日には鬱血痕が出来てしまっているだろう。


 リアに可愛がってもらった証が、なつめの体に刻まれるのだ。


 「……じゃあ、私がしたくてなつめちゃんがされたい事シてもいい?」


 甘い声で囁かれて、体を震わせながらリアの唇にキスをする。

 こちらの意志は十分に伝わったようで、優しい手つきで彼女の指が敏感な箇所に触れた。


 「……恥ずかしくなったら言ってね。なつめちゃんのペースに合わせるから」


 もう十分恥ずかしいけれど、彼女であればその羞恥心も耐えたくなってしまう。

 愛おしくて堪らない恋人と、こうして体を重ね合わせる幸せ。


 その幸福感を噛み締めながら、なつめは与えられる愛情と快感に呑まれていた。


(タチネコ論争  了)

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キュン×キス!=君の歌 ひのはら @meru-0731

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