第4転 マジで闇落ちしそうになった
「なぜあのような無茶を?」
女神が抑揚のない声で尋ねた。本当にただただ疑問に思ったと言った感じだ。
「我慢の限界でした」
「魔王の悪事を放っておくのが、と言うことですか」
女神の性格上、言葉を悪くとらえることができないのだろうが、いくらなんでも補正が掛かり過ぎていて勘違い甚だしかったので訂正することにする。
「いえ。単純に、さっさとやっつけたかっただけです。もうあんなブラック稼業はこりごりです」
「ブラック? 稼業? わかりませんねえ。まあ、良いでしょう。あなたは前々世では
女神はそう言って俺を次の世界に飛ばした。
その世界でもやはり自分の仕事に対価が支払われていないと感じ、途中で自棄を起こして魔王を倒しに行って返り討ちに遭い、次の世界では勇者であることを放棄しスローライフを送っていたら民衆の逆恨みで
転生を繰り返すたびに、苛立ちは募っていった。俺に見合った世界になぜ行けないのだろうか、とすべての世界を恨みながら死んでいった。
「いったいどれだけ挑戦すればあなたは世界を救えるのでしょうね」
女神が半ば呆れ気味にそう言った。
「女神さま、そろそろ諦めません?」
「諦めるわけにはいきません。あなたの魂のポテンシャルは、本当はもっと高いはずなのですから。
その名前は落雷だった。
そうだ。綾条が居る世界に行けば、ドロップアウトせずに世界をまっとうできるかもしれない。
「綾条が居る世界に転生することはできませんか? できれば同い年くらいに生まれたいんですが」
「それは無理です」
「どうしてですか!?」
「綾条あやのは、とっくの昔に
今度はイエスが
「本当は、綾条あやのは地球で死んだときに解脱する予定だったのですが、どうしてももう一度生き直したいと言うのでそれを認めました」
俺の知っている解脱なら、天上界、
「どうして、そんなことを?」
「好きな男の子に、告白するためだと言っていました」
好きな……? 男の子……?
心臓が大きく跳ねた。
「同じ世界に転生すると、相当な歳の差になってしまいますし、向こうは綾条あやのだと気付いてくれない可能性が高いと言うことで、時間進行の違う世界へ行きワープの魔法の習得をして地球へ赴くことをお奨めしました。目的が結婚や出産なら話は別ですが、告白に拘っていたのでそれが適切かと思いまして。彼女は予定通りワープの魔法を覚えて地球へ行き、帰ってきてから魔王を倒し世界を救い、天命をまっとうしました。そして解脱して今は天上界に居ます」
これは俺の自意識過剰というやつだろうか。
ワープの魔法は地球に対しては一度だけしか使えないと言っていた。そのたった一回のワープの間にやったことが俺との再会なのだとしたら、あながち大外れってわけでもないだろう。
だったら、綾条は目的を果たせてないんじゃないか。
なんだよ。世界を救って解脱できるくせに。自分が本当に叶えたかった願いは、叶えられてないじゃないかよ。
それに、俺をこんなブラック世界に引き込みやがって。文句の一つでも言わせろよな。
「どうしたら、解脱できますか」
「世界を救いなさい。そして、得た財産を人々に分け与えなさい」
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