ピート

 

 男は歩いた。ただ森の奥を目指して、何かを求めるワケではない。何かから逃れるように、しがらみを振りほどくように……奥へ奥へと歩んだ。

 消し たかったのだ、自分という存在を……家族への不信、友の裏切り、悔やんでも悔やみきれぬ救えなかった命……生に対して嫌気がさしてしまっただけなのか もしれない。樹海の奥へ向かうだけだ。方向もわからない状況で、奥に歩んでいるかどうかは疑問でもあったが、気にもしなかった。

 生きるも、死ぬも……この森の意思に委ねよう。光の射さない方へと進んでいった、まるで、闇を求めるように……。

 何も語らぬ森の意思に、男は我が身を委ねたのだ。

 俺は生きるべきなのか?死すべきののか?

 男が歩んだその先に何があったのか?

 ……森は男を受け入れ、その雄姿を惜しみなくさらすだけだった。


 Fin

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