1話
突然だが、俺の通っている高校は全寮制だ。この高校に入ろうと決めたのは、それが理由だった。
寮がある=家から出られる
訳あって俺は家にはいたくなかった。けれど親の庇護下にはいたかったので、この選択をした。一人暮らしに憧れがあるけど、初っ端からまじのひとりはちょっときついって言うのもあるけど。
寮ではまあまあ楽しくやっている。
なんで家にいたくないかって?
それは俺が俺の弟2人と比べられるからだ。
誰にって、親に。多分、親は悪意があって比べてる訳じゃなく、コミュニケーションの一環、冗談のつもりで言っているのだと思う。だから何も言えずに笑って時が過ぎるのを待つ。
笑ってはいたが、俺にとってはちょっとした苦痛だった。俺ってメンタル弱いから「そんなのどうしようもないじゃん?」とか、「なんで俺に言うの?」っていう俺にはどうしようもないこととか、理由も分からないのに責められるのとか、からかわれるのとかが苦手だ。
その文章に対してなんてレスポンスすればいいか分からないからだ。レスポンスする言葉は浮かんでくるけど、長文すぎて言うのが面倒くさい、とも言う。本当に慎重に話さないと、日本語というのはすぐに誤解を産むから面倒くさい。そう思ってしまって言葉がつまり、なんて言えばいいか分からなくなる。俺がからかいが苦手な理由は、それもある。
例えば、この前長期休みで実家に帰った時に親に言われた「テスト、栄二の方が点数高いよな」え、これはなんて返せばいいの?
「そんなことないし」?
実際俺はそこまで高得点を取っているわけじゃない。多分栄二の方が当時の俺よりテストの点数もいいだろう。
俺は勉強は気が向いたらやる、って感じ。俺の将来の夢であるイラストレーターに高校の勉強って意味あるの?って思ってしまい、中々手をつけられない。勉強する時間があるなら絵を描いていたいって言うのが本音だ。
打って変わって栄二は、結構勉強している。今から親に高校進学について口酸っぱく言われているからだ。(俺はそこまで言われてなかった。多分俺が中3の時の高校選択でふわふわしていたから栄二が言われているんだと思う。)まぁ、本人も結構自分から勉強机に向かってることも多々あるし、それはそれでいいと思う。栄二はテニスやYouTubeを見る、というものの他にやることが無い。だから勉強する。
そういつの日か栄二本人から聞いた。テニスは疲れるからクラブでの練習以外は練習したくないし、YouTubeはスマホが親管理だから、よく没収される。
必然的に暇になり、勉強する、らしい。
俺はどうだ。絵を描くことは、紙と鉛筆さえあればできることだ。それはスマホを没収されようができることだ。それなら俺は勉強よりもそちらに時間を費やす。
だから、テストの点数という俺と栄二の間で不平等な要素があるものを比べる対象にしないで欲しい。
「そうだな」?
素直に認めてしまえばそれが一番楽かもしれない。けれど、それを言うと多分栄二は調子に乗る、親もさらにからかいをエスカレートさせていく。経験談だ。それにさっきの勉強量の話に戻るが、俺には勉強しなくちゃいけない理由が分かっても、勉強しようと思える理由が出来ない。当時からそうだ。だからそんなこと言われても困る。それに当時は栄二と比べられるなんて思ってもいなかったんだし、こんな数年たった今比べるならその時に言ってくれよ。「後で比べるからね」って。栄二には「お兄ちゃんより点数取れるかな?」とか煽ってるんだから。もしかしたら俺だって煽られたらやる気出してテストの点90点台とかとってたかもしれないじゃん。もしかしたら。
過ぎたことを言われても困る。
と、まあこんなふうにレスポンスが長い。日常的な冗談に返すにはマジレスすぎて場を白けさせてしまうという懸念を抱くような長さ、まじさだ。これで言うのを躊躇ってしまう。
さらに俺には「こう言ったらこう言われるだろう」「ああ言ったらこう言われるだろう」と、勝手に相手との会話シュミレーションを脳内でしてしまうという癖がある。シュミレーションしているうちにだんだん先が読めなくなって、結局何を言うのが最適解なのか分かんなくなって、何も言えない。
これに悩むこと数年。
俺は寮のあるこの高校に来た。
寮に入ってからは実家に帰るのは春休み、GW休み、夏休み、秋休み、冬休みの長期期間のみだ。まぁ、うちの高校は何故かこの休みが長いのだが。
とにかく、家にいる時間が減り、弟と比べられる日々から脱出した俺の物語をちょっと聞いて言って欲しい。
さんきょうだい ぽん @pon8587
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