絵里との恋?

@oriental

第1話

 私は橘(たちばな)という、31歳の会社員、同僚の女性との話を。


 私は、高校卒業後この会社に就職したが、本意ではなかった。

大学受験に失敗して途方に暮れいていたところ、社長の長男(常務)が高校に求人を出していて、高校の勧めもあって就職した。

 偏差値の高い高校だったけど、浪人してまで大学を受験する余力は、実家にはなかった。


 最初は、会社の製造部で半年ほど研修・実習を受け、その後総務課に配属されたが、業務の内容は、事務仕事兼雑用。


 そんな私でも、5年ほど頑張って働くと、高校の先輩である常務からも可愛がられ、営業のほか、秘書的な仕事も任せられ、出張や懇親会にも連れて行ってもらった。


 話し好きで、人付き合いも得意な方だった私は、取引先からも好印象を持たれたようで、業務成績も良好で、30歳になると、係長に昇進した。

 この頃から、会社の技術力が業界内でも話題になり、会社の売り上げも上昇し、今まで手薄だった事務系社員も採用するようになってきた。


 私が31歳の時、絵里という、国立大学卒の事務系女子が入社してきた。

 絵里は、前の会社から転職していて、27歳、身長が155cmほど、ちょっとふっくらした体型だったけど、胸と尻も標準より大きい、私的には、女性らしい体型と感じた。また、目鼻立ちは彫りが深く、ちょっとエキゾチックな印象を与える。


 絵里は、物覚えが良く与えられた仕事は、あっという間に処理完了、空いた時間は、自席のパソコンでネットを見ているようだった。入社して、まだ3か月で試用期間だというのに。


 そんな絵里の勤務態度を、同僚のお局様たちが陰口を言っている。

 時間があったら、

 「給湯室の掃除でもしたら。」

 とか、

 「大学卒業して、仕事ができるからって、偉ぶっている。」

 等々。


 そんなことがあって、それが常務の耳に入ったようで、

「橘君、部下の絵里君のことで、君も聞いているだろうけど、どうも同僚からの評判が良くない、アットホームな会社を目指している我社としては、従業員同士軋轢が生じないよう、対応してくれないかね。」

との話があった。


 また、

「君さえよければ、嫁にしてくれてもいいんだが、これは冗談として、どうか頼むよ。」

 と、常務から半分苦笑しながらお願いされた。


 さっそく、絵里と話をしたいが、会社内で話すのは、お局様達の目がありタブーだ。会社が設立され約20年、その頃から社長とともに頑張ってきたお局様達は、

いわば、家庭内の小姑で、常に目を光らせている。


 絵里に社内メールを送る。

 文面は、「会社終わってから、ちょっと相談したいことがあるから、つきあってもらえるかな?、OKなら、空いている日を教えてください。」


絵里から、その日の終業間際にメールが来た。

「相談内容は何ですか?、その内容が気になるので、教えてくれたら考えます。」


 絵里は、頭の回転が早いせいか、ストレートな物言いになりがちで、それが周囲に、プライドが高くて高飛車、みたいな印象を与えている。


 私のメールに対する回答も、条件付き回答だ。

 私は、返信メールでちょっと変化球を投げてみた。

「最近、いろいろとストレスがたまっていて、誰かと話をしてみたい気分なんだ。

係長としての、業務命令ではなく、プライベートなので断ってくれてもかまいませんです。」

 とメールした。

 絵里からは、

「そうですか、今週は全て空いてます。ただ、会社の同僚としてお話するので、そこは、お間違えのないようにしてくださいませ。」

 と冷たい印象メールが来た。


 私は、金曜日の夕方に時間をとってもらえるよう、かなり丁寧な内容のメールを送信した。

 近場では、一緒にいる場面を見られる危険性があるので、最寄り駅から2駅ほど離れた、個室のある居酒屋を予約した。


 7月のある日、梅雨の合間に電車を乗り継ぎ居酒屋に向かった。居酒屋の前で待ち合わせして個室に入ると、ビールで乾杯した後、絵里から口火が切られた。

「係長、相談って何ですか?」

「実は、常務から話があって、会社の同僚達が君の悪口を言っているらしい。職場の雰囲気も大切にしたいから、どうにかしてほしいと頼まれたんだ。」


「私も、色々と言われているのは知ってました。でも、慣れてますから。」

その後、絵里は、ビール、日本酒を飲みながら饒舌に話始めた。


「前の会社でもそんなこと言われて、震災を機にこの会社に転職して、頑張って仕事していたつもりなんですが。」


 絵里は、酔って顔が赤くなってくると、

「母がシングルマザーで、苦労して私を大学まで入れてくれて、でも就職すると、

男性が評価されるシステムが幅を効かせていて、ちょっと頑張ると嫉妬され、陰口言われて、それが嫌で転職したんですが、ここも同じですね。」


 私も酔ってきたので、ストレートに言ってみることにした。

「絵里の仕事は評価しているよ、でも、仕事は与えられた業務の達成だけではなく、

同僚とのコミュニケーションや、それこそ世間話をすることも必要な場合があるんだ。」


 絵里は、ムッとした顔をして、

「係長は、コミュ力ありますけど、私はゼロなんで、今のままのスタイルで通させてもらいます。」

 と言い切った。


 その後は、話題を変えてみようとするが、なかなか絵里も頑固だが、大学時代の愚痴まで出てきて、おひらきとなった。

 10時頃になり、二人で電車に乗り最寄り駅からは、タクシーで彼女のアパートに送った。


 週明け絵里からメールが来た。

「この前はありがとうございました。いろいろお話できて楽しかったです。でも話した内容は、秘密でお願いします。」

 相変わらず、冷静なメールだったけど、お互いぶっちゃけた話をした記憶があるので、少しは、彼女もスタイルを改めてくれるかなと思った。


 業務の合間に、絵里との会話を増やすようにしたり、お局様達に世間話して情報収集に努めたりと、私が持つコミュ力を最大限発揮するようにした。


 そんなある日、絵里からメールが来た。

「今度、道の駅で大きなイベントあるそうですが、その情報あったお願いします。」

とのこと。

深読みすると、

「今度、道の駅で大きなイベントあるらしい、一人で行くのは億劫なので、係長に連れてってもらえば楽だ。」

 的なことだと思い、また、若干の好意もあるかもと思ってしまった。


 正直いって、絵里の性格というか思考回路は、私には良く理解できるけど、多分普通の人は、理解不能だと思う。相手の言いたいことや要望を先読みし、理解してしまうので、会話も行動も、ぶっきらぼうに、なってしまうのだろう。


 メールの返信は、

「道の駅のイベントは、私も知ってるよ、かなりのイベントなんで、行こうと思っていた、絵里さんも一緒にどうでしょうか?」


 絵里からは、

「土地勘ないですから、係長に連れて行ってもらえるなら、お願いしたいです。」


 その道の駅は、ここから50km以上離れた海沿いで、夏祭りイベントでは地引網やご当地アイドルのショー、夜は花火大会などもあり、例年混雑していたけど、今年はさらに盛大にやるらしい。


 絵里にはメールで、

「了解、ちょっと行程表作っておくから待ってて。」

と返信した。


 車で道の駅まで行って、当日は花火大会もあるので遅くなるし、帰り道は渋滞するとのことで、道の駅から10kmほど離れたところにホテルを予約し泊ることになりそう。次の日は、海岸線をドライブして帰ってくることにし、行程表を作成しメールした。

 絵里からは了解の返事がきて、ホテルを予約し、後は当日を待つばかり。


 8月の暑い日、私の車で絵里のアパートに行き、途中宿泊するホテルに寄った。チェックインできる時間ではないけど、予約の確認をし荷物を預け、道の駅に一直線。

 絵里は、半袖のブラウス、キュロットにサンダル、それに麦わら帽子をかぶっている。また、ホテルに宿泊なので、大きなスーツケースを抱えている。

 夏の日差しの中、道の駅に着くとかなりの車で、駐車場はもう少しで満車、

運良く止めることができた。

 地引網を見学した後、アイドルのコンサートを見て、屋台の貝や魚を堪能しつつ花火大会の開催を待つ。


 絵里は運転しなくてもよいので、お酒を勧めた。

 地酒の冷酒を飲みながら屋台で購入した魚などを二人で食べる。

 絵里は、職場では見ることができような笑顔を浮かべ、祭りを楽しんでいるようだった。

 一緒に来て正解だったなと、心の底から思った。


 夏祭りイベントが終わり、車に乗ってホテルに向かう。

 予約したホテルは、ビジネスホテルでシングルを2つ、朝食付きで予約している。

 チェックインした後、私がまだ飲んでいないということで、飲食店街に向かうが、夜10時を過ぎていて、これから本格的に飲む気はない。


 ラーメン屋さんに入り、餃子を注文し、ビールで乾杯する。

 絵里は、今日一日の出来事を、嬉しそうに振り返り、私はうんうんと、うなづきながらビールをあおる。


 絵里は、酔っ払っているけど、私はまだ全然酔ってない。

追いつくためにも、冷酒を注文しあおる。

 ほどよく酔ってきた頃、チャーシュー麺を注文し、冷酒もおかわりする。

絵里は、冷酒をちびり、ちびり。

「チャーシュー麺、ちょっと食べる?」

と聞いても、首をふるばかり。


 チャーシュー麺を食べ終わり、絵里と私も冷酒を飲み干したので、会計し店を出る。外にでると、もあっとした夏の夜の熱気に当てられ、一気に酔が回りそうだ。


絵里が、ふらふらして私にしなだれかかってきた。

「大丈夫かい。」

と言って、絵里と腕を組み、身体を引き寄せる。


 飲食店街を歩き、宿泊先のホテルに向かうが、途中ラブホテルが目についた。

「絵里、あそこ何かわかる?」

 絵里は、顔をあげじっと見つめながら、

「ラブホテル。」

 と無表情で言った。


「入ったことある?」

上司の私が聞くと、セクハラだけど、酔った勢いで。

「ない、全然ない。」

酔った口調で答える絵里。


「俺も、ないんだよ、どんなところかな?」

「わかんない。」


 私も、以前つきあっていた彼女とは、お互い実家住みで彼女の門限もあったので、

街のラブホテルは未経験、そもそもセックス経験は誇るほどではないけれどね。


「ちょっと入ってみたいな、どう絵里?」

 絵里とそんな関係になりたいというより、酔った故の純粋な興味が勝っていた。

 絵里は、

「係長にお任せします。」

 と、うつ向きながら話す。

「じゃあ」

 と言って、ラブホテルに歩くと、絵里はますます身体を預けてきた。


 部屋に入ると、ダブルベッドが一つとバス・トイレがあるな、ビジネスホテルと

さほど変わらないな、なんて思っていた。

 そんな感じで部屋を観察している、絵里がきつく抱きついてきて、顔を上げ目を閉じている。

 あ、これはキスを待っているんだなと思い、唇をあてキスをする。


 絵里のちょっと厚い唇をかき分け、舌を入れると、絵里の舌も私の舌を触れ迎え入れ、激しく絡め合い、絵里から、

「あっ、んん。」

 と声がもれる。


 こうなったら覚悟を決め、絵里をベッドまで連れ横たえた。

 絵里のブラウスのボタンをはずし、ブラジャーのホックもはずす。


 絵里のバストが大きい、そこに口を付け、舐めあげながら、もう片方を揉む。

「ああん」

 と身悶えしているので、かなり感じているようだ。

 その間に、キュロットスカートのボタンをはずし、ずり下げ、下着に丁寧に触れる。


 絵里の下着に触れる手は、ふとももに挟まれ動かしづらい。

 思い切って、下着の中に手を滑り込ませ、絵里の大事な部分に指を伸ばす。

 絵里の喘ぎは激しくなり、驚くほど濡れていた。

 絵里のブラジャーを取り去り、下着も脱がすと、私も裸になった。


 絵里の大事な部分を指で愛撫しつつ、

「絵里のあそこにキスしてもいいかな?」

と聞くと、


「えっ、だめ。」

と喘ぎながらの返答。


「じゃあ、もう入れてもいい?」

と聞くと、

「うん。」


 絵里の大事な部分に、自分のモノを触れさせ、なでつけた後、ゆっくり挿入する。

 絵里は、特に表情を変えることはなかったけれど、自分のモノはかき分けるように、押し広げるように、絵里に侵入した。


 自分のモノが三分の一ほど侵入したところで、突き破るような感覚があり、

そのまま押し込むと、終点に達した。


 ゆっくり、自分のモノを動かしながら、絵里のまぶた、鼻、頬、耳にキスすると、絵里は、何かをこらえるようにして、目を閉じている。


「絵里、今日は大丈夫な日、中に出してもいい日かな?」

「わからない、大学の同期で最初にセックスして妊娠した話もあったし、妊娠したら、たいへんだね。」

 と、私が今していることに、あんまりピントきていないようだ。


 ベッドの脇を見ると、避妊具が置いてあり、私はそれを開封すると装着し、

再び、絵里に向かった。


 私が絶頂を迎えると、

「絵里、ありがとう。」

 といって処理した。

 絵里がその後、言ったことに驚いた。

「初めてが、係長にしてもらって、痛くなくてよかった。」

「絵里、初めてだったの。大学ではなかったの?」

「大学でも、就職してからも彼氏はできなくて。」


 その証拠に、コンドームは赤く濡れ、シーツにも少しシミができていた。

 その後、絵里と私は風呂に入ったが、湯船につかっている絵里に、

「しみない?」

「大丈夫だけど、まだ入っている感じ。」


 絵里の最初をいただいてしまった。

 勤務環境と人間関係のしがらみからすると、近い将来結婚も視野に入れなければと、覚悟したのだった。


 その後、二人で宿泊先のホテルに戻り就寝。

 次の日は、海岸線をドライブし、手をつなぎながら散策した。夏の日差しと海猫の声が記憶に残るデートだった。


 絵里は、週明けでの職場で、特に私に対する対応や言葉づかいに変化はなかったけれど、メールでは、

「係長、先週はお世話になりました。とっても楽しかったです。また一緒に行くことを、楽しみにしてます。」

 と明らかなお誘い内容だった。


 絵里とは、その後休日にはデートを繰り返し、その度に愛し合った。

 私は実家に住んでいるので、もっぱら彼女のアパートで、愛を育んだ。


 それから、半年ほどたち、そろそろプロポーズして責任を明白にしないといけないなと、考えていた。

 いつもの通り、絵里と会うために彼女のアパートに行くと、

「係長、実は私、係長に言ってないことがあって、今言います。」

 私は、訳がわからないまま、ポカーンとしてしまった。


「実は、私海外留学の補助金を申請していて、この前合格したとの連絡がありました。係長には良くしてもらいましたが、海外留学したいので、会社を退職したいと思います。」


 晴天の霹靂だった。

 そして、絵里にとっては、私との交際よりも海外留学の比重が勝ったと、いうことを、理解した。


 絵里は神妙な面持ちで、

「係長とのおつきあいは、とても楽しかったですが、海外留学もずっとトライしつづけて、きたことなので、申し訳ないですが、どうかご理解ください。」

と頭を下げた。


私はうなづきながら、

「絵里が決断したんだった応援するよ。会社の退職については、引き継ぎ等あるけど、絵里の留学に間に合うよう、対応するよう頑張ろう。」

 それだけ言うのが、やっとでした。


 絵里は、やはり頭の良い娘なので、言い方は悪いですが、私と海外留学を天秤にかけ、ずっと申請続けていた海外留学をとったのだろう。


 その後、私は、これで最後になる訳ではないけれど、絵里の身体を味わうように愛し合った。

 次の日、絵里は会社に退職届を提出し、留学に向け、残務処理、引き継ぎをした後に退職となった。

 常務からは、

「絵里君は、君と相性が良さそうで、将来一緒になって会社を支えてくれると思ってたんだけどね。とても残念だよ、また採用活動がんばらないとな。」

 とため息のような、愚痴のような言葉をかけられた。

 周囲のお局様達は、私達が仲良くしていることを薄々感づいていたようで、夏祭りイベント以降、陰口は少なくとも私の耳には入らなくなっていた。


 地方空港まで、私が車で送ることになったけれど、これまでのことが思い出される。

「絵里を妊娠させると、留学もなくなるよな。」

などと考えたけれど、絵里の将来を考えると、とてもそんなことはできないと、

一瞬で考えを改める日々だった。


 寒風が吹きすさぶなか、絵里が飛行機に乗り、空の彼方に去っていくのを見て、彼女との運命は交わらなかったと思うのだった。

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