日本と徴兵と仮想敵国

 世界では、今なお徴兵制がある国が多い。

 先進国のフランスでさえ、徴兵制を止めたにもかかわらず、徴兵制が復活する事態に陥っている。

 徴兵制を強いる事は、単純な兵力の維持・増強だけではなく、国の在り方を肌で学ぶ良い機会なのかもしれない。

 ひいては、若者に対する愛国心の芽生えに繋がるのであろう。

 とはいえ、喉元過ぎれば熱さを忘れるでは無いが、平和になれば、平和を維持する役目よりも、平和を謳歌する方が魅力的なのも確かなのかもしれない。



 自由の国アメリカも、徴兵制度はある。

 現在は、志願制ではあるが、有事に際して大統領がGOを出せば、いつでも徴兵が可能なのだ。

 (市民権・グリーンカード共に兵役の登録義務がある)


 現在は総人口3億3000万人に対して、軍人が135万人である。

 ただ、アメリカは予備兵と州兵を合わせて80万人を別途抱えている。

 ここ10年で世界情勢は悪化の一途をたどっており、嫌厭気分が広がっている。

 実際、アメリカでは兵士の人数も減少傾向にある。

 10年前には、150万人居た兵だが、15万人も少なくなっているのだ。

 しかしこれはアメリカに限った事ではなく、どこの国でも多かれ少なかれみられる傾向である。

 徴兵制を取っていない国は顕著に表れ、徴兵制を取っている国は緩やかに現れている。


 ここで注目すべきなのが、中国である。

 中国も兵士が300万人から200万人に減っている。 

 この兵力の減少であるが、これは他の国とは趣が違う。

 予てより中国の兵は、練度が低いと言われていた。

 所謂、弱兵と見られていたのだ。

 しかし、今では一概にそうとも言い切れないのだ。

 兵力を100万人も減らしたのは、弱兵を排して、兵を精鋭化する目論見であった。

 見かけ上は、軍縮に見えるものの、そんな事は無いのである。

 

 さて、日本であるが、世界で11番目に多い総人口1億2600万人に対して、自衛隊は定員25万人、実働23万人弱である。

 常に1割程の定員割れを起こしている。

 現職の隊員も、他国の軍の多くが平均年齢が20代(徴兵制により、平均年齢が下がる)なのに対して、平均年齢30代半ばと世界一高齢な軍と言われている。

 予備兵の5万人強を集めれば、約30万人とされているが、果たしてそれだけの数がいるのであろうか?

 というのも、技官や医官も含まれているのだろうし、50代の予備兵がいるのも自衛隊ならではであろう。

 私には、見かけ上の30万人にしか思えず、有事の際には、もっと実働数は少ないにと見ている。

 この現状も致し方ない。

 正義感溢れる者が、自衛官を目指す事が多い。

 しかしながら、日本は警察権力の強い国である。

 同じ公務員である警察官に、人員を奪われてしまうのだ。

 まあ、一番の理由は、日本には魅力のある民間企業が多い事であろう。


 単純計算になるが、軍人の割合で言えば、アメリカは150人に1人、日本は400人に1人となる。

 この事から見ても、日本は軍とは一定の距離がある。

 つまり、非日常と言えるのだ。

 日常に異物があると排除したくなるのは、防衛本能なのかもしれないが、自国の防衛の事なのに、そういった声が上がる事こそ他人事の現われであった。


 ちなみに、徴兵制(国民皆兵)を強いている韓国は、総人口5000万人に対して、50万人(60万人から徐々に減らしている)の軍を編成している。

 割合は、100人に1人は軍人である。

 日米間で軍事協力しているものの、日韓の政治問題で、軍事協力の解消を交渉材料に使い、実行した国でもある。

 過去には、核兵器の開発研究をし、露見したのも韓国であった。

 歴史的に日本と仲が悪いのは仕方が無いにしても、米中との間で態度をはっきりさせない(日本にだけは切れ味が良い)ので、どうにも信頼に掛ける所があるのだ。

 反日の次に反米感情も強い事から、無いとは思うが、アメリカと距離を取る可能性も否定はできない。

 ともすれば、歴史的に中国との結びつきが強い国なのだ。

 とはいえ、同時に首元を抑えられてきた歴史もあり、今になってわざわざ抑えられたいとも考えないであろう。

 昨今は、反日と同じぐらいに、嫌中の感情も高まっている。

 米中どちらを取るか「二者択一」が出来ない国で、米中の仲立ちを狙っているものの、役者不足の感が否めない、存在感の薄い国である。


 この結果を見れば、中国という仮想敵国があるのに、日本のなんと暢気な事であろう。

 

 日本とは真逆で、自国は自国民で守る姿勢を示しているのが、永世中立国であるスイスだ。

 総人口850万人と、小さな国であるが、徴兵制(国民皆兵)を強いていて、兵士は15万人である。

 この国の凄い所は、銃の保有率だ。

 一昔前までは、銃を持ってないと結婚できないとまで言われていた。

 今は、徴兵された時に使っていた(貸し出された)銃を、退役後に買い取って、家に持ち帰る人が多いらしい。

 使い慣れた銃を側に置くことで、何時でも有事に備えているのである。 


 随所に有事に備えが有り、住宅にはほぼ100%シェルターを完備している。  

 高速道路は中央分離帯が移動できる仕組みで、飛行機の離発着が可能なのだ。


 日本のシェルター普及率は1%もないらしい。

 有事の際に災害と同じく避難場所に逃げるのであろうか?

 地下鉄は安全だとは聞いた事が有るが、生憎と家から地下鉄までは距離があった。

 即座に身を隠す場所が、身近には無いのである。

 


 さて、話は変わるが、パソコンが登場したとき、大手電機メーカーは挙って、パソコンとワープロは両立できると予想した。

 なぜなら、既に文書作成に特化したワープロは使い勝手が良く、十分住み分けできると判断されたのだ。

 (例に出せば、90年代に製品化されたあるワープロには、タッチパネルが搭載されていた)

 しかし、大手メーカーの予想は外れ、パソコンだけが生き残る事になったのである。


 戦争も、領地を奪う侵略戦争から、情報戦争や経済戦争に移行すると考えられていた。

 国が成熟し、国際化社会として互いに牽制しあう中で、強引に事を起こせば、孤立する(やり玉に挙げられる)のは、割に合わないと思われていたからだ。

 確かに、裏で情報戦争が行われ、政治的駆け引きの経済戦争はみられる。

 しかし、何時まで経っても侵略戦争は無くなる気配を見せないのだ。

 ロシアや中国の圧は、否増すばかりである。

 皆が思い描く通りには、物事は進まないのであった。

 ……単純に、武器を持てば振り下ろしたくなるのが、人間の性なのかもしれない。

 

 これは私の予想なのだが、近い将来日本を取り巻く状況に変化が起こるだろう。

 仮想敵国であるロシアや中国の指導者は、若くはない。

 そこそこ高齢と言っても良いだろう。

 しかし、どちらも任期を伸ばしたので、まだまだ指導者として健在である。

 安倍元首相もそうであったが、自らの任期中に自身の目指したことをやり遂げたいと思うものだ。

 それが、多少強引でも。

 安倍元首相のそれは、憲法改正と北方領土の返還であった。

 生憎日本は、議席で過半数を取っていても独裁とはならない。

 安倍元首相の願いは、叶う事は無かったのだ。


 では、中国とロシアは?

 中国は台湾を掌中に収めて中華統一、世界の中心が中国としたいのだ。。

 アメリカに成り代わって、世界を主導したいのであろう。

 恐ろしいが、狙いがはっきりしている。


 逆に、ロシアの蠢動が不気味に映る。

 旧ソビエト連邦崩壊で、独立を許したのをロシアは失敗だったと思っている。

 やはり、旧領の併合が目的なのであろうか。

 ……北方領土に軍事基地を作ったのは、米軍への牽制であるとしているが、北海道を狙っていると噂も少しはあった。

 第2次世界大戦でのロシアの動きからわかる様に、どうにもロシアは信用ならざる国である。


 悲観する材料は多いが、日本には金がある。

 金は力だ。

 GDP3位である日本は、全面的に敵に回すよりは、利用価値のある国と見る方が自国の利益に繋がるであろう。

 更にアメリカの傘の元では、尚更だ。

 残念ながら、もう数年もすれば、GDPが4位に落ちるのも確かで、陰りが見え始めてもいるが、まだまだ世界的に見ればお金持ちの国である。

 (裕福な国の筈なのに、6人に1人は貧困層である。一見ファストファッションに格安スマホを持てば、貧困しているようには見えない。表面化し難く、気付かれ難いのも問題だ。しかし、裕福なのも間違いなく、飽食日本は、ユニセフの食糧支援と同じぐらいの量を食品ロスしている。)

 今の立ち位置を維持できているのは、正にお金の力だと言える。

 金の切れ目が縁の切れ目とならない様に、願うより他はないのである。

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日本人は平和ボケしているのか? @yatuura

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