「開けない」を選んだ人へ
……ぼくがドアから手をはなすと、レッドもブルーもグリーンもホワイトもブラックも、だれもいなくなった。ぼくは屋上のギリギリに立っていて、あと少しで地面に落ちそうだった。
「レッド……、みんな……」
ぼくはずっと、ひとりぼっちで遊んでたのかな。チチェレンジャーなんて、全部うそだったのかな。
「う、ううっ……!!」
ぼくはとっても悲しくなって、ボロボロの階段を下りながら、何度もなんども涙をふいた。いつの間にか、空は灰色のくもにおおわれていて、アスファルトは雨でびしょびしょになっていた。
「冷たいよ……! だれか、助けてよ……!」
いつもなら、ぼくが助けを呼べば、だれかが必ず来てくれた。でも、ぼくが目を覚ましちゃったから……! もう、だれも、来てくれないんだ……!
「……入れよ」
――そのとき、すっとビニール傘がのびて来て、ぼくを中に入れてくれた。……ぼくが顔を上げると、そこにはバットを持ったみぃちゃんがいた。
「河川敷で素ぶりをしてたんだけどよ、いきなり雨がふり始めちゃってさ。大急ぎで家に帰るとちゅう、あそこのコンビニで傘を買ったってわけ」
みぃちゃんはぶるぶると頭をふりながら、「まいっちゃうぜ、まったく」と肩をすくめた。その動作が面白くて、ぼくは涙をふいてクスクスと笑った。
「なぁ、すみれ。あたしの家にさ、面白いゲームがあるんだよ。えっと、その……。よかったら、一緒に遊ばねぇ?」
みぃちゃんはちょっと恥ずかしがりながら、ぼくのことを誘ってくれた。……ぼくはずっと、みぃちゃんの誘いを断ってた。でも、やっと分かった。きっと、それじゃあダメなんだって。
「……うん。一緒に、遊ぼう」
ぼくはみぃちゃんの手をにぎって、二人で一緒に歩いた。みぃちゃんとぼくの家がある、団地の方へ。
レッツゴー! ぼくらのチチェレンジャー! 中田もな @Nakata-Mona
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます