「開ける」を選んだ人へ
「……開いてしまったか。死への扉を」
ブラックの静かな声に、私はあえて返事をしなかった。希望の扉の向こう側は、深い死への入り口。最上階のアジトなんてのは全て幻で、ドアから飛び出したすみれの体は、ボロボロのアパートの屋上から落下した。……レンジャーになるってことは、幻想になるってことだから。
「レンジャーになったって、いいことなんか、一つもないわよ」
私はぐしゃぐしゃになった地面を見下ろして、ブラックと一緒に階段を下りた。……本当は、すごく羨ましかった。幻想の中でしか生きられない私と違って、すみれは自由に生きられるから。だけど、彼は幻想を選んだ。
「……でも、まぁ、いいんじゃないかしら。これからは、ずっとレンジャーごっこができるんだから。ラベンダーパープルとして、ね」
「……そう言う割には、ひどく悔しそうじゃないか」
……ブラックに言われるまでもない。私は本当に悔しかった。――私はカトレアホワイトなのに、子どもの一人も救えなかったんだから。
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