145 その30 ~遠い地からの侵略 その18~

跨いで通り過ぎて「さぁ何処行くか?」と迷っていたら、跨いだ町がこの国に軍に襲われていることが判明

ミレイNo.301が「戻って救わないか?」と提案する。何かしら隠された打算がありそうだな…例えば、「救ったから暫く居座らせろ」とか?

※ミレイ「惜しい!…まぁ当たらずとも遠からじ、ですかね?」

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- 黒い饅頭シディ、Uターンをかます! -


暫く減速するべく、推進ノズルを停止させて浮遊高度も1m程に落とす。盛大に砂煙が巻き上がるが致しかない…そして十分に速度を落とした所でゆっくりと進みながら回頭させるべく、左後部と右前部のノズルを稼働させる。見た目には何処が先頭で後尾なのかわからないが、推進用ノズルが付いてる方が後尾なのでしょうがない(慣性制御システムで移動してればどっちでもいいのかも知れない…何しろ、艦橋には窓が付いてないし、外部はスクリーンで映して見てる訳だしw)


「回頭が終わったらゆっくりバザーだっけ?…に戻って」


「はい」


「砲撃隊には休んでる所悪いけど、補充が済んだら再出撃。ミッション内容は…」



【再出撃ミッション】

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◎M名:砂漠の町「バザー」の危機を救え!

◎内容:神聖ドラゴニア帝国の軍が理不尽にバザーを襲っている。そこに介入し、撃退せよ

◎報酬:バザーの民とそこの領主からの感謝の気持ちと…もしかするとゆっくり寝泊まり?

※居住環境が十分じゃなくて申し訳ない…

---------------



…と、念話ネットワークを介してミッション詳細が発布される。報酬に関しては砲撃隊だけではなく、全ゴーレム娘が対象だ…寝泊まりできる場所が確保されてれば、だが。



- バザーサイド -


どがぁぁぁんんっ!!


「…来たか」


娘のカーシャにわかる範囲の全てを聞いた今…こうなることは想像に難くない。


「門は?」


「全て閉鎖していますが…」


「障壁は?」


「出力全開にしてますが…」


「…わかった。警備隊の者には済まないが…」


「いえ、町を護ることが身上。それには及びません」


「わかった。民の避難は?」


「誘導をしていますが…全ての民が間に合うかどうかは未知数です」


「うむ…」


ドングルムの家系は武闘派が多いが…流石に軍に盾突く程強い者は少ない。攻撃魔法を扱う俺と…竜騎士…見習いとはいえ、カーシャと…


「私も出ます」


「ファーサ…」


「いやしかし…」


「あら、癒しの使い手ヒーラーは必要ではないと?」


「…すまん。だが」


「わかってます。身重のモムルは大人しく避難させていますからご安心を」


彼女は俺より凄腕の攻撃魔法の使い手だが…今は身重の身であるし、腹の子に魔力を吸われているせいか、全盛時の半分以下の威力しか出ないという…子を産めばある程度戻るらしいが…


「こんな時だが…魔法を扱えるのが僅かしかいないというのは…どうにも歯がゆいな」


「父上や母上は使えますけど、私なんて竜を扱う為の魔力しか持ってませんしね…」


「ドラゴン・テイマーだったか?…まぁ、魔法というよりはスキルだが」


他にビースト・テイマーという下級スキルがある。こちらは動物や知性ある魔物と仲良くなったり扱うことができるスキルだ。魔力を通わすことにより、意思を通じ…といったものらしい。ドラゴン・テイマーはその力がドラゴンまで通じるといったものだ。流石に神獣や神竜までの上位体までは無理だそうだが…


「力無き者はシェルターに避難を。民の中でも腕に覚えがある…と申し出ている者が居れば、一時的にでも徴兵に応じる。急げ…壁を崩される前に防御の準備を!」


「「「はっ!!」」」


カーシャからすれば、いつの間に…と思っただろう。部下が静かに佇んでおり、号令一下…ドアから立ち去って行く。開け放たれたドアからは閉まるまでの間に外の騒がしさが伝わっており…閉まると静けさが戻ってくる。


「…音を伝わなくする魔導具、ですか?」


「あぁ…職業柄、内緒話も多いからな」


再びシンとした執務室にカーシャはダウザーに訊く。そして…


「では、私は防衛に出ます」


「うむ…すまないが…頼む」


コクリと頷き、ドアから出る愛娘…まさか、国家防衛の為に貸与された騎竜を…その国の軍に向けるようなことになろうとは…


「バザー…というよりは、ドングルムの御家滅亡の日になるかも知れんな…」


俺は、溜息を吐きつつ…明日という陽を見ることができるだろうか?…と眉間を指で扱き、そして頭をガシガシと掻くのだった…



- 砲撃隊サイド -


『1番隊、出ます!』


ロゼNo.060が号令し、小隊全員がメンテナンスエリアからシディの外へと転送される。


「ひゃっほお~!」


ミクNo.039が奇声を上げて着砂して滑り出す。他の小隊員も奇声こそ発しないが次々と着砂しては滑り出して行く…一部、スッ転びそうになっているが見なかったことにしてあげるのが武士の情けというものだろう…(苦笑)


『2番隊、3番隊、出ます』


残る4~6番隊はシディの防衛に残し、バザーという砂漠の町の様子を見に1~3番隊を派遣する。流石にいきなり全隊を派遣して本丸が丸裸というのは戦略的にも良くない訳だし…


「シスターズも2人付いてって。残るのはシディ周辺で警戒」


『『『りょ!』』』


(了解の省略形で返事が来るが…まぁいいか。わかりゃ…)


そんなザックの思考関係無しに事態は進む。シディは微速前進(凡そ5ノット(=9.26km/h))し、昼間の砂漠で目立つ黒い山は隠蔽魔法で隠す。直衛の砲撃隊は特に隠れてはいないが、バザーで大騒ぎしてる分にはこちらに気付かないだろうということで放置。


(さて…あちらさんはどうなってんだかなぁ…)


溜息を吐きつつ、面倒事しか起きない大陸だなぁと思うザックであった(苦笑)



- 到着した砲撃隊が見たモノは… -


『バザーに着』


『外壁に沿って左右に分かれます』


『1番隊と3番隊は右へ』


『2番隊は左へ』


ざあ…っと左右に別れる砲撃隊。


『町を攻撃してる敵軍を視認』


『どうします?』


「呼び掛けしても攻撃してくるだけだろ…問答無用でぶっ飛ばせ!…なるべく「人間」は殺さないようにな?」


群れているのは魔物が殆どだったというデータがある。まるで魔物のスタンピードだが…


「はぁ…何が目的か知らないけど…」


取り合えず目前で発生した力無き民を襲う暴力を停めた方が「気分が悪くならない」と判断し…偽善かも知れないが止めようとしてるに過ぎない…


(よくいうよね…やらない善よりやる偽善ってね…)



- 砂漠の町「バザー」防衛戦 -


『まずは壁から引っぺがすよ!』


『『『はい!!』』』


各員の主砲と高射砲の砲身が水平に構えられ…目前の数多の魔物たちに向けて無照準で発射される!


どどぉぉぉんっっ!!


どどぉぉぉんっっ!!


どどぉぉぉんっっ!!


ドドドドドドドドド・・・・・


北側からは回り込んだ第1・3小隊から無数の法撃と高圧縮弾が撃ち込まれ…


ぼしゅぼしゅぼしゅ・・・


ひゅるるるる・・・


どどどぉぉぉんんんっっっ!!!


南側から回り込んだ第2小隊から、山なりに発射した魔力榴弾が高空から降り注ぎ…絨毯爆撃で蹂躙されていた。


〈〈〈KuKeeeeeee!?〉〉〉


〈〈〈KiSyaaaaaaa!?〉〉〉


〈〈〈GuAooooooo!?〉〉〉



まずは壁より離れた場所より部分から蹴散らし始め、壁に取り付いている個体に対しては…


『斬り込むからフォロー宜しくね?』


第3小隊から飛び出す小隊員。彼女は斬艦刀ざんかんとうというに相応しい長い太刀たちを引き抜き…構える。そして…


「はっ!」


一瞬で壁に取りつく群れに突進し…振り抜く。


〈っ…!!〉


ぱたぱたぱた…


ついさっきまで壁を殴り、よじ登ろうとしていた魔物たちは…一瞬の間を開け、力尽きたように倒れていく。中にはそのまま2つ3つに分かたれてしまっている…


しゅっ…しゅっ…しゅっ…


まるで瞬間移動さながらの移動を繰り返し、太刀を振り抜いて行く…みるみる内に壁に取りついている魔物はその数を減らしていき…動く個体はほぼ居なくなった。


「はぁ…疲れた」


やり切った!…という表情をしていた彼女は、壁の上に立っていた女性に気付き、手を振ってから壁から離れて行く。そして、壁を背にして…正確には門のある位置を背に立ち、まだ迫りくる魔物の群れに立ち向かう…


「さぁっ!…まだまだ行くよぉっ!!」


どどぉぉぉん…!!


どどぉぉぉん…!!


ドドドドドド…!!


駄菓子菓子、接近戦を得意とする彼女の艤装は…重量を落としたが故に、余り射撃性能は宜しくないのだったっ!w


━━━━━━━━━━━━━━━

砂漠の町「バザー」防衛線が突発的に勃発!…最後に目を合わせたのは誰なのか…!?


備考:カーシャでしょ?(ド直球!w)

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