144 その29 ~遠い地からの侵略 その17~

進行方向には大き目の町。追う新大陸の軍勢はまだ遥か後方に(追いかけられてる内にやや斜めだが後ろに見えるようになった)そして現在黒いドラゴンから足止めだろう攻撃を受けている移動要塞「シディ」

ザック「ちょっと脅すつもりだったけど大袈裟になってきたねぇ…」

レム 「あの黒いGを叩き落す許可をっ!」

マロン「一緒に暴れt…」

モンブ「まぁ~ろぉ~んぅ~?」

レ&マ「ひぃっ!?」

※マロンに限らず、死に急ぐ連中の抑制装置として急成長しているモンブランだった(苦笑)…後、GじゃなくてDですよ?w

━━━━━━━━━━━━━━


- 砲撃隊奮闘す -


どどぉぉ~~んっ!


どどぉぉ~~んっ!


どどどどどど・・・


砲撃隊の砲には実弾は積んでいない。各自の艤装に魔力コアが…魔力が詰まっており、そこから供給される魔力で魔力法弾を生成して撃ち放っているからだ。要はエネルギー弾と同じ弾を撃っているのでありその魔力も無尽蔵ではないが、空気中の魔素を変換してマナに…魔力に置換して再び魔力コアに溜め込んでいるので短時間なら無尽蔵ともいえるだけの量を誇っている(それでも置換に掛かる時間と消費効率を考えないと、すぐにガス欠となる訳だが…)


がかっ…


「!…オーバーヒート!?」


「下がれ…冷却と同時に魔力を充填するんだ!」


「わ、わかりましたわ!」


小隊長(名前は聞いてないので知らない)に指示を受け、小隊員が下がり…要はシディの障壁の内部に入り込む。障壁はいちいち全体をオンオフしていてはあの竜騎士の攻撃が当たってしまう為、一部解除をして招き入れる。そうして懐に入って来た小隊員を内部に転送して休憩を入れて貰っている。


「まさか戦闘中に休憩できるなんて…」


「御託はいいからほれ、寄越せ!」


「何を…」


「艤装ボックスだよ。艤装解除すれば出るから…よし。おい!充魔力チャージだ!」


「「「うい~…」」」


艤装を解除した小隊員が艤装ボックスをアイテムボックスから取り出し、メンテナンス要員に手渡すと、魔力カプセルとコップを手渡される。艤装ボックスは他のメンテナンス要員に渡され、専用の充魔力チャージ機器に取り付けられ、すぐさま魔力の充填を始めていた。


「5分もありゃ回復すると思う。それまでそれでも飲んでまったりしていてくれや」


「あ…はい」


彼女は指差された横たわれる椅子…ビーチチェアに似た代物に横たわり、カプセルを口に含んでからコップの中身を飲む。


こくんこくん・・・


「あ、これ美味しい」


「だろう?…マスター特製のドリンクだってさ」


「成程…」


彼女はドリンクを飲み切ってから横たわる。すると、体の力を抜いた途端に体全体から疲労感が抜けていく感覚を覚え…


体力回復薬スタミナポーション?」


「…そんなこといってたかな?…まぁ、疲れたらそいつを飲めば楽になるってことさえわかりゃいいからな!」


メンテ要員は


ガハハ!


と笑いながら次から次へと現れる砲撃隊の誘導を続けるのだった…



- 開戦?からそろそろ3分経過 -


「そろそろ全員収容してくれ…加速するぞ!」


実はまだ未加速だった。急襲があったせいだが…


『『『了解ラジャー!』』』


砲撃隊が全機帰投し、障壁に一方的に攻撃魔法が突き刺さるようになり…その攻撃を激しさを増して来た…!


「全機帰投しました」


「よし…シディ、後部推進ノズル…全開!」


どひゅううううううう・・・・・!!!


後部に装着されている前進用推進口の風魔法が全開で風を後ろへと送り出し…速度が100ノット(=185.2km/h)へと達する。そして、町まで残り1kmを切った頃に…


「上昇用ノズル…全開!!」


基底部にある上昇用ノズルからも風魔法が全開で地面へと…砂漠の砂を撒き散らしながら叩き付けられる!…先に反魔力場発生装置を全開にして勢いをつけ、その後から風魔法を全開で放出してジャンプする…こうすることでより効率的にジャンプの高度を稼ぐ訳だ。


「…ちょっと揺れるわね」


「まぁ…安定飛行する飛行機械じゃないし」



- 名も知らない町サイド -


ざわ… ざわ… ざわ…


物見の塔からの報告で巨大な黒い饅頭が接近していると報告があった時には


「何の冗談だ?」


と思ったが、今になって思えば…俺はその時の俺をぶん殴ってやりたい気分になっている。



「軍からの鳥便だと?」


「は…如何致しましょう?」


「…今まで放置しておいて今更…まぁよい。読め」


「はっ」


部下に読ませたその内容は…何をトチ狂ったのか?…と思うような物だった。



◎カーシャ=ドングルムの親族を理由を問わず全て拘束しろ

◎砂漠の町「バザー」の民を1人も漏らさず逃がすな



ドングルムはこの俺も含めた町の領主の家系だ。つまり…俺を含めて拘束しろと?…バカバカしい。カーシャはこの俺「ダウザー=ドングルム」の娘だぞ?…軍の連中は何を考えているのか…


(カーシャは国境警備隊に見習いとして所属してた筈だが…まさか!?)


部下に命じて急ぎ、物見の塔から外を…外部を見張らせる。伝令の兵が10分の後、慌てた様子で戻ってくる。急がせたとはいえ…随分短い時間で…


「ダウザー様!…ご避難を!…饅頭が…黒い饅頭が迫っています!!!」


「あ?…何をアホなことを…「お急ぎ下さい!」…お、おう…いやまて、詳しい状況を「ですから!急がないと間に合いません!!!」」


こいつ、こんなに押しが強い奴だったか?…と思わなくもないが、背中を押されて部屋から出る。そこには領主婦人であるファーサと第2婦人であるモムルが仲良く…でもないが、兵に引き連れられて急ぎ足で移動中だった。


「ねぇ…アナタ!…これは一体何事!?」


「いや…それが俺もたった今避難しろといわれてな?」


「旦那様!…避難ってことはバザーから出るってことですよね?…何処かに当てはあるんですかっ!?」


なんてやりとりをしている間に外が見える廊下まで辿り着く。所謂渡り廊下で、ここは2階に当たるのでそこそこ景色はいい。このバザーでは高くても3階建てがせいぜいなので2階でも見晴らしだけはいいのだ。


「「「あれは…」」」


まだ、やや遠いと思われるが…その視線の先には…


「「「黒い…山?」」」


そう思われる巨大な黒い山のようなモノが迫っているのがわかる…何故迫っているとわかるのか?…それは…


「外壁よりも大きい…」


「いやあっ!?…もう、今更逃げても間に合いませんわぁっ!?」


ファーサが愕然として足を止めて、その黒々とした山を見詰め…。モムルが突然恐慌をきたして泣き喚き始める。


「奥様!…暴れないで…急いで避難しませんと助かるものも助かりません!」


部下の兵が2人がかりでモムルを抑えに駆け寄るが苦労しているようだ。その時…


ごおおおおおおお!!!


突然の轟音に動きを止める全員…そして、ゆっくりと…黒い山へと首を巡らす…


ごおおおおおおお!!!


見るからに接近速度を上げ、黒い山はみるみる内にその巨体を大きくして行くことがわかる…


(これは…もう、無理だな)


恐らくは…外壁まで後数分と掛かるまい。壁より巨大な山がそんな速度で壁に激突すれば…残るのは蹂躙された我が町…バザーの残骸だけだろう。流石にバザーは更に巨大だ。残る部分があるかも知れないが…


(天災と思ってあきらめる…しかないか?)


奇跡でも起きねば…あのようなもの…


そう考えていた時、神さまの悪戯だろうか…奇跡は起こった。そう…奇跡は起こったのだ!


ずごおおおおおお!!!!


更に違う轟音が巻き起こり…視界は砂塵で塞がれる。否…外壁に取り付けられた、砂嵐を防ぐ砂とある程度強い風を防ぐ防壁装置に依って砂塵は防がれているが…余りにも密度の濃い砂塵でバザーの外壁の外の様子が見えなくなったのだ!


「こ…これは?」


音源は前方から上、そして後方へと移り変わり…砂塵が再び後方に濃く巻き起こり…数分後には何もなかったかのように静かになったのだ…



「お父様!…ご無事ですかぁ~っ!?」


全員で力なく床に座り込んでいると、上空からこの所留守にしている…国境警備に勤しんでいる筈の、娘の声が聞こえた。


「…ファーサ?」


あれだけ暴れていたモムルが…いや、今は力が抜けて静かにしていたが…ファーサに声を掛ける。


「貴女の娘の声がするんだけど…いつ帰って来るっていってたっけ?」


「…いえ、まだ見習いの筈。戻るのは1人前になってからだから…少なくとも1年は帰って来ないって聞いてたけど?」


ちなみにモムルの子はまだ腹の中だ。おめでたと聞いてからは過剰な程に危険から離れたがっていたのでさっきの混乱とか安全確保に躍起になっていたのは認めるが…はぁ。


ばさっ!…ばさっ!…ばさっ!


ばささ…と着地と共に翼を畳んで佇むブラックドラゴン。確かシャッセといったか?


「カーシャ、戻るとは聞いてなかったが…ひとまずはお帰りといっておこう…」


「お父様、お母様方…ご無事で何よりです」


一応、竜騎士見習い…ということもあり、騎士の礼を取るカーシャ。そしてすぐさま立ち上がり、


「軍上層部から何か聞いてませんか?」


とすぐに質問をする。もしや、さっきの…


「あぁ…領主一族を拘束すると…「やはり…!」…もしかしてだが…」


取り敢えず、ここまでの間…黒い山は引き返す様子も無いと判断し、後続の軍の大群が迫っていると聞き…外壁の門を閉じるよう命令し、以後暫くの間は外部の人間の出入りを禁じた。


「詳しい話しを聞こう…」


俺は…娘の話しを聞くべく…自室へと招き入れるのだった…



- ザックサイド -


「ふぅ…無事、飛び越せたねぇ…」


「着地、何とかならなかったんですかぁ?」


一応…軟着陸の範疇ではあったが…反動で何度もバウンドして頭が上下にシェイクしまくり…うっかり気分が悪くなってリバースしたのだった…僕だけぇ~…ルールルルー(T^T)


一応、内装は殆どが固定されてるが、固定されてない物は着地の反動で室内を縦横無尽に跳ね返りまくってサヨリとジェリコ皇女たちは危うかったらしい…


(渡しておいた魔導具が役に立ったか…ヤレヤレ)


まさか、敵の攻撃じゃなくて自分らのミスで怪我させる羽目に遭うとは…いや、怪我しなかったけど。


「あ…2人はリバースは「「してません!!」」…お、おう…来てたのか」


艦橋に来る時は連絡して欲しいといっといたんだけどな…交戦中だと危険かも知れないし。


「それは何より…で、どうしようか?」


「どうしよう…とは?」


「いや…このまま真っ直ぐ行っても何処に着くかわからないし…」


この中の誰もがこの大陸は初めてなのだ。つまり…誰も何処に何があるかわからないっていう…(ちょっ!)


「…あの~」


やいのやいのとこれからの進路などを相談している所に艦橋スタッフを務めていたゴーレム娘が声を上げるが…


「…あの~?」


誰も聞いてなかった。仕方なく、


「…あの~~~っっっ!?」


「「「うわびっくりした!」」」


大声で…しかも通信用の手持ちマイクを持って最大音量(但し、艦橋内限定)で叫ぶゴーレム娘w


「…痛たた…何?…ミレイNo.301


レムがいきなりの大音響で痛む鼓膜…耳を抑えて訊く。


「…コホン。失礼しました」


そしてちょいちょいと手招きし、その場にいた全員が(艦橋スタッフは除く)集まる。コンソールを操作したミレイはメインスクリーンの下部にあるサブスクリーン(メインの1/3くらいの大きさ。左右と下に3つ存在する)にジャンプして通過した町を映していた。


「これは…」


「情報収集の結果、砂漠の町「バザー」と判明しています」


ふむ…と頷く一同。


「ジャンプして躱した後…一応、何かわかるかもと、数名の隠密が得意な者を潜入させています」


情報は大切だからな…と、可能ならやってくれとレムに伝えたことを思い出すザック。人が多く住んでいる町は情報の宝庫だ。詰まらないと思える情報でも何かの役に立つ可能性は否定できない。


「で、何かわかったのか?」


マロンが訊くと、ミレイは頷き…


「我々を攻撃した竜騎士がこの町に降り立ちました…そして」


そこで一旦区切り、


「その竜騎士を攻撃の尖兵に放ったであろう…後方大軍が…「バザー」に攻撃を仕掛けました…」


「「「…は?」」」


一瞬、訳がわからんと呆けた声を放ち…


「いや訳がわからんのだが…」


「何故自国の町を軍が襲う?」


「接収が目的?…でも、町が拒否したので攻撃を?」


と、各々が喚き出す。


「…で、例の竜騎士は?」


中に入り、着地した状態なら暴れ放題ではないか?…と考えたが。


「いえ…竜騎士の女性は…その軍と応戦してるようです」


ますます訳がわからないと…混乱を極めるのだが、


「情報収拾している者の…集めた情報から導かれる推測ですが…聞きますか?」


「…聞こう」


ミレイは紙を取り出し、速記で文字を書き出していく…


「これを…」


「…口頭で伝えるんじゃ?」


「いえ…それは要点を纏めただけですので。後でもう1度目を通して頂ければと…」


ミレイは纏めた情報から時系列で説明してくれたのだが、結局メモに纏めた物で十分とわかるのは…全て説明を聞き終えた後でメモを読み終えた時点だった…時間の無駄過ぎる。


━━━━━━━━━━━━━━━

ミレイのメモ:

◎砂漠の町「バザー」は竜騎士見習い「カーシャ=ドングルム」の生まれ故郷であり、父親は町の領主

◎父親は「ダウザー=ドングルム」という。一族は殆どが「バザー」生まれであり住んでいるとのこと

◎敵国は「神聖ドラゴニア帝国」といい、今回出張って来た軍が「バザー」を襲っている

◎つまり…神聖ドラゴニア帝国はバザーと敵対しており、このままではバザーは滅亡するということに

◎マスター…戻って救ってみませんか?


備考:最後の、メモというか提案じゃねーかっ!?

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