132 その17 ~遠い地からの侵略 その5~

新大陸から直接?攻撃の魔法が飛んで来たので隠蔽で姿を消してから回避行動を取るザックたちの外洋船。看破能力を持つ監視魔法とザックたちの隠蔽魔法の勝負(をしてるという自覚も無い儘)はザックたちに軍配が上がったのだった…

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- 回避行動の果て… -


「あれ…は」


「砂浜ですねぇ…」


肉眼で見える距離の湾岸には…流石に人は居ないが砂浜らしい光景が見えて来たのだ。人工物は無いので天然の砂浜らしい。


「ん~………何も、無いな?」


人の手が入った砂浜かもと思ったが小屋も何も無いようだ。また、奥の林にもその奥に続く小道なども無いように見える。


「…」


探知魔法を使い、周辺を探ってみる。現在位置は砂浜から沖に僅か数kmといった所なので少し奥ならば何かがあった場合でも探知が可能な筈だ。


「びっくりする程、何も無いねぇ?」


「うわびっくりした!…シャーリー、いきなり耳の傍で喋らないでくれる?」


器用にホバリングしながら全長50cmの大きめのフィギュア人形サイズのシャーリーがザックの頭の横で語り掛けて…否、急に喋り出した。最近、また身長が伸びて来てる気がするのだが、恥ずかしがってサイズを測らせてくれない…。急に羞恥心でも芽生えたんだろうか?


「乙女は年頃になると何でも恥ずかしがるものなのよ?」


「いやあんた、まだ産まれて1年と少しだろがっ!?」


…と、夫婦漫才のようなやり取りをしていると、レイNo.001が…大隊長がこんな進言をしてきた。



「マスター!」


「ん?…あぁ、レイか。どした?」


「マスターたちはあの砂浜を見てどう思われましたか?」


指差す先は…人間が海水浴を楽しむにしては横にも縦にも長く広大な砂漠…ではなく、砂浜が広がっている。無論、隣接している林や左右の果てにある岸壁も結構大きいのだが…


ちなみに、左右に10km程。海から林までは500m程はあると思う。遠くからではよくわからないが、それ程傾斜はなくなだらかだと思うので…高低差は1mも無いのではないだろうか?


また、周辺数kmに敵影や敵意を持つ生物も居ないように見える。この新大陸の人間の町も見えないし…1度偵察を出してみて、安全確認をしてからなら上陸して一休みするのもいいんじゃないだろうか?


…と、纏めた考察を話す。すると、


「「「流石マスター!…私たちをねぎらってくれるんですねっ!!」」」


…と、大はしゃぎである。


「いや…一応安全確認をしてからな?」


「「「はい!」」」


「偵察部隊オイデマセ!」


「「「はっ!!!」」」


…と、シャーリー妹部隊が発進していった。取り敢えず砂浜の奥と左右の方向へと…


「出待ちでもしてたんか?」


「みたいですね…」


と、レムとナルと一緒に嘆息するザックであった(苦笑)



シャリ妹シスターズ部隊から入電!」


「…いや、電気で動く通信機ないでしょ…」


シャーリーの、ノリノリの台詞に思わず突っ込むザック。


「…で?」


「周辺20km程は人里も魔物も居ない…んにゃ、普通の動物は居るみたいだけど…安全地帯みたい?」


「実は危険な魔物が隠れ住んでいるとかは?」


「多分居ないんじゃないかな?…100%じゃないだろうけど」


「ふむ…」


シャリ妹…もとい、シャーリーの妹たちシスターズは偵察や索敵に特化した個体が多い。今回派遣された3体は、マウンテリバーに残して来た3体よりは劣るがそれでも次点くらいの性能を持っている筈。その証言なら…信じてもいいだろう。


「じゃあ…急ぎ帰還するように伝えてくれ」


「らじゃー!」


シャーリーがウキウキと念話で3姉妹に伝えてからおもむろに着替え始める。普段見慣れてはいるが、突如として着てる物をずぱっ!…と脱ぎ散らかして、水着のような下着のような…いや、水着なんだろうけど…


(やっぱし育ってるんじゃねーかっ!?…胸とか尻とか太ももとか!…じゃねえっ!!)


「おいシャーリー!」


「んぅ?…なぁにぃ?」


ぐふふ…という笑いが似合ってる厭らしい笑みを浮かべるシャーリー。台詞と共に太もも部分まで上げた水着をぐい!っと持ち上げて股間に食い込ませて見せつけてくる!


「いきなり脱ぎ散らかして水着に着替えんなっ!…着替えるなら何処か別の部屋でや…」


大声で怒鳴ってたら、そこまでしかいえなかった。何故ならば…


「むごーっ!?」


「あはははは!w…おこちゃまだねぇ、マスターはっ!」


と、顔に胸を押し付けて笑うシャーリーに邪魔されたからだ…息が吸えねぇ…


その後、ムスっとしたレムとナルに救出されたが、後数秒で窒息死する未来しか見えなかったことだけ付け加えておこう…怒鳴って息を殆ど吐き出した時点で胸を押し付けるの禁止!…マジ死ぬかと…ハァ。


※それだけシャーリーの胸(というか体)が育ってたってことDEATHね?(ゴーレムの設定何処行ったぁっ!?w)



- 砂浜で遊ぼう? -


…という訳で、外洋船を沖に停泊させたまま一部の人数だけ上陸して余暇を楽しむ…なんて平等じゃないのは後で何かいわれそうなんで、全員転移魔方陣で一斉に上陸して貰い…外洋船だけ残すとヤラレそうなんでストレージに仕舞ってからザックも1人短距離転移テレポートして最後に上陸した。


「取り敢えず、適当に遊んでk…うわおうっ!?」


休憩用のテントを幾つか張って、パラソルも10幾つか刺して1人用の寝そべり用のビーチチェアを適当に創造して設置し、ドリンクを用意して(中身は冷たいピュアウォーター純水だけど)一息吐いて寝そべってたら…いきなり手を引っ張られて何人かの背丈が同じくらいのゴーレム娘たちに


「「「マスター!…そんな所で寝てないで遊びましょう!?」」」


…っと、強制連行された訳さ。いや、ちょっと疲れたんで寝ようとしたら…いやいいんだけど。


「「「きゃっ!きゃっ!きゃっ!」」」


黄色い声というか…似たような背丈の子も、少し小さい子も、勿論肉体的によく育ってる子も…目のやり場に困るよ…モウ!(牛かっ!?w)


ちなみに、ビーチボールっていう、軽くて水に浮く素材のよく跳ねるボールを創って地面に落とさないように手で打ち返す遊びをしてるんだけど…これがなかなか…目のやり場に困る(そっちかYO!)


いやぁ…周囲の子が目線が上でボールを見て落とさないように狙って打ち返してるんだけど…あっちでぷるん、こっちでぷるん、目の前でだぷるn…ぐえっ!?


「ぐはっ!?」


「あっ!?…マスター大丈夫っ!!」


いきなり双丘の…いや、双山が目前に突っ込んで来て、危険察知さんが働いてくれなくて正面衝突して…はい、僕が悪いんDEATH…orz


吹っ飛んだザックに慌てて駆け寄る柔らかい双丘たち…ではなく、ゴーレム娘たち。流石に飛び膝蹴りをかまされた訳ではないので鼻血は出てないが、別の意味で流血しそうになっているザック。


「いや…大丈夫。僕は戻って休んでるから、みんなは楽しんでて?」


と、念の為にと1人に肩を貸して貰って戻って行く…



そろそろ夕暮れとなり、ザックはビーチチェアに横たわってお休みモードだった。隣で何故かどこぞの王宮で使うような大きい団扇で扇がれて王様モードで涼んでいたザックは(扇いでいたのはレムとナルが交代でw)


ぱかっ


と目が開き…いきなり叫ぶ。


『『『警戒!』』』


ずずずずずずずず・・・・・・


海に目を向けると…沖から津波が迫っていた。そして、その奥からは大勢の影が…


「怪獣…いや、海獣かな?」


海の獣と書いてかいじゅうと読むが、その大きさからして怪獣でも大して変わらないかも知れない。


「あれは…」


「シードラゴン?」


水棲のドラゴンで、蛇のように長い体躯を持つドラゴン。有名処ではリヴァイアサンなどであろうか。だがあれは幻獣であり、召喚されて攻撃を放った後に幻獣界にすぐ戻るような存在だった筈だ…幻獣界というのは人間が住む世界と比べて理が違う為にその体を長時間維持するには無理があると聞く・・


「…レッサーぽい?」


シードラゴンの下位種。それならば地上…否、海中に住まっていても問題は無いだろう。但し、浅い海では生きていくのは厳しいと聞く…この辺は遠浅ではないが数kmくらいはあの巨体では泳ぐのも難しい筈だが(探知魔法で見た分には…)


「やべっ!…津波っ!!」


ざざざざ・・・・


第一波の津波が壁のようになって襲って来る!


「けっ!…結界!!」


慌てて物理結界を展開する。設定したのは全周結界ということだけ。その時に周囲にいたレムとナル、そして飲み物や食べ物を配膳してお世話をしていたゴーレム娘の4人だけが結界内に収まっていた…


ざぱぁ~ん!!!


ざぱぁ~ん!!!


ざぱぁ~ん!!!


3回の津波の襲撃後、砂浜は水没してしまっていた。そして…


〈KeEEEE~~~!!〉


シードラゴンの咆哮だろうか?…だが、水中に結界が没してしまった為に微妙にフィルターが掛かったように聞こえるだけで外の様子はここらじゃわからない…


「砂やら海底の泥土か?…色々ごちゃ混ぜになってよくわからないな…」


『ま…マスター…聞こえ…る?』


「シャーリーか?…途切れ途切れだけど何とか」


『良かっ…』


「シャーリー?…ちょっ!?…シャーリーっ!?」


「マスター?…一体何が…」


「ちょっと黙ってて!」


「え…あ…はい…」


…集中して探知魔法を行使すると、シャーリーが視えた。どうやら…


「転移!」


捕まえたとばかりに転移魔法を使う。いや、最初は取り寄せアポートを使ったのだがダメだったのだ。仕方なく、全力で転移魔法で転移させると…


「かはっ…げほげほ…」


「だ、大丈夫かっ!?」


「だいじょぶ…」


大丈夫ではない。人間だったら即死級の状態だ…シャーリーは下半身が食い千切られたような状況だったのだから…恐らくは…


「…って、検証してる場合じゃないな…耐久値再生デュラビリティ・リペアー!」


じわじわと欠損した部位が時間を巻き戻しているように…そして1分もせずにシャーリーは元に戻った。生きてる訳ではないので呼吸は必要ではないが…激しかった不安定な呼吸は、今は安定している。



「…う?」


「目覚めたか。…気分はどうだ?」


「マスター…あ」


シャーリーは結界内の中央に設えた即席ベッドに寝かされていた。水着は噛み千切られたままで下半身はそのままだったのだが、心配が過ぎて水着はスルーだった。


「…マスターのえっち♥」


「あ…ばっ…あのな…」


いわれて気付いたザックはシャーリーの噛み千切れて半分も無い布地を復活させる…


「…んふふ…ありがとマスター」


「…で、外はどうなってるんだ?」


探知魔法で調べても何故か真っ白で何も見えない状態の為、実際に外を見ているシャーリーに問うが…


「あー…」


何かをいいあぐねているシャーリー。


「えーと…」


レムとナルを見る。2人はゆっくりと頷いている…何か知ってるのだろうか?


「あたし以外、多分だけど…」


全滅?


声には出さずに口パクすると、シャーリーは頷いた。つまり…200人以上居たゴーレム娘たちは…成す術も無く…恐らくはシードラゴンに食われたか破壊されたことを示すことと…


「…む?…転移!!」


ぶわっ!…と出現する数名の人影が…結界にぶつかって…


「マロンさん?」


「モンブラン!?」


「サヨリ…とジェリコ皇女。生きててくれた…か…」


いきなり転移魔法を発動…しかも立て続けに大魔力を浪費したザックは…疲労が酷く、そのまま倒れ伏す。


「「「マスター!?」」」


「主!?」


「「ザックさんっ!…しっかりっ!!」」


ゴーレム娘たちとマロンとサヨリ、ジェリコ皇女に声を掛けられてる気がするが…ザックは限りなくMP0に視界状態になり、結界の維持が切れないことを祈りつつ…意識を落としたのだった…


━━━━━━━━━━━━━━━

人間大のサイズで、しかも水着でバカンスを楽しんでいた性能が普通のゴーレム娘たちに、海の王者だろうレッサー・シードラゴンに対して成す術が無いのは普通だと思う。寧ろ、装備無しでお荷物(サヨリ&ジェリコ皇女)が居て、対抗できていたマロンとモンブランが異常ともw


備考:ゴーレム娘部隊、ほぼ壊滅?(すぐ再生できるだろうけどw(ちょっ!)

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